Mint Houseは、スマートフォン向けアプリを使うことで「人」を介することなく、宿泊者一人ひとりに快適にカスタマイズされたサービスを提供する民泊スタイルのホテルだ。ホテル予約サイトでも常に高い評価を得ている同社は、既に米国内9都市(7月時点)に客室があり、急ピッチで事業を拡大している。今回はFounder and CEOのWilliam Lucas氏に話を聞いた。

William Lucas
Mint House
Founder and CEO
2006年、デューク大学にて学士(経済学)を取得。総合金融サービスを提供するFirst Help Financial LLC.を共同で設立。2012年にThe Wharton SchoolにてMBA(ファイナンス専修)取得。同年より、デジタルビジネスに投資するPrompt GrowthのPrincipalを務める。2017年にMint Houseを設立、CEOに就任。

ホテルと民泊のいいとこ取り

―まずMint Houseについて教えてください。

 簡単に言うと、Mint Houseはビジネス向けAirbnbです。

 私は、レジャー旅行に行く時は、狭いホテルの部屋に滞在するよりも広い部屋に泊まれるAirbnbを好んで使いますが、仕事で出張に出る時は必ずホテルに滞在していました。民泊では部屋が整っているかわかりませんし、変動的な出来事がつきものです。仕事の場合、スケジュールが狂う可能性などはリスクとなるため、出張時の宿泊先としてAirbnbは適していません。

 Mint Houseは、こうした自分の経験から始まっています。「Multi-family building」(マンション)の一室を客室にし、Airbnbで味わうことができるような広い空間に、アメニティや設備、そして信頼でき一貫性があるサービスを提供しています。

―マンションの部屋を使っているのですね。

 そうです。マンション一棟ではなく、部屋をリースしています。例えば100部屋などまとまった単位でリースしています。

テクノロジーが提供する最高のサービス

―普通のホテルとの違いを教えてください。

 そうですね。Mint Houseでは、デジタルフロントデスクがユーザーに対応します。デジタルフロントデスクはアプリなので、チェックインは移動中に行うことも可能です。そして、宿泊する部屋がある都市に到着してからは、ジオフェンス機能を使い、滞在する客室がある建物と客室のドアの前まで画像を使った道案内をします。部屋の前に着いたら、スマホをワンクリックすれば鍵が解除される、という仕組みです。

Image: Mint House

 予約の変更や、レイトチェックアウトまたはアーリーチェックインのリクエスト、お勧めの近隣レストランを聞く等のコンシェルジュサービスも、アプリ内で行うことができます。滞在者をもてなす基本的なサービスは全て揃っています。

 そして、一度ご利用いただくと、ユーザーの趣向が記録・共有されます。ホテルの場合、同系列であっても場所が違えば全く別のホテルのようなものです。例えば毎回レイトチェックアウトしていても、滞在するたびにリクエストしなければなりません。Mint Houseではその必要はありません。滞在する際に冷蔵庫に用意しておいて欲しい食べ物や飲み物、室内の温度や部屋タイプなどまで、一度カスタマイズしたら同じサービスを毎回受けることができます。

既存のホテルは旅行者のニーズに全く対応していない

―先の質問と重なる部分もありますが、競合他社にないMint Houseの強みを教えてください。

 例えば、マリオットホテルは客室を1,200万室所有していますが、彼らの客室タイプは全て現在の旅行者のニーズから外れています。今はマンションスタイルの部屋、つまり民泊スタイルが求められています。当社はそのニーズに応えている。これが当社の強みの一つです。

 二つ目の強みは、シームレスでカスタマイズされた方法で、顧客体験を提供している点です。例えば、フードデリバリー業界のGrubhub、または、タクシー業界のUberのように、Mint Houseはホテル業界でフリクションレスなサービスを提供しています。

 最後に、ホテル業界や金融業界のシニアエクゼクティブ達が私の構想に興味を持ってくれ、様々な面で力を貸してくれていることです。例えば、シェラトンやウェスティンブランドなど10ブランド以上のホテルを展開していたスターウッドの元CEO。彼はスターウッドをマリオットに13.6億ドルで売った人で、当社は出資も受けていますし、取締役として関わってくれています。他にも、ウィキペディアの元CMOや大手金融関係者など、私が過去に一緒に仕事をした方々も関わってくださっています。これも、当社の強みです。

―最後に将来の展望についてはどうお考えですか。

 当社は今、成長期にあります。Mint HouseはNashvilleでローンチしました。Nashville内の6つのマンションにMint Houseの客室は106室あり、その利用者総数は25,000人を超えました。これまで全てオーガニックグロースで、利用者を増やしてきています。

 現時点(5月時点)で米国内の5都市に客室ありますが、夏までに更に4都市でオープンし年内には10都市で新規オープンする予定です。

 まずは米国内の都市で部屋数を増やし、その後に世界展開を視野に入れていますので、Mint Houseブランドは最初から国際的にブランディングするつもりです。当然、アジアも視野に入れていますし、そんなに遠くない将来に海外展開に着手できると想定しています。しかし、当面は、米国内での展開に集中するつもりです。



RELATED ARTICLES
農村部の「買い物格差」、ソーシャル時代の解決法 Super
農村部の「買い物格差」、ソーシャル時代の解決法 Super
農村部の「買い物格差」、ソーシャル時代の解決法 Superの詳細を見る
「記憶の定着」に焦点を当てた、AI時代の学習アプローチ モノグサ
「記憶の定着」に焦点を当てた、AI時代の学習アプローチ モノグサ
「記憶の定着」に焦点を当てた、AI時代の学習アプローチ モノグサの詳細を見る
日本の貯蓄文化をビジネスチャンスに 「おつり投資」が投資初心者に刺さった理由
日本の貯蓄文化をビジネスチャンスに 「おつり投資」が投資初心者に刺さった理由
日本の貯蓄文化をビジネスチャンスに 「おつり投資」が投資初心者に刺さった理由の詳細を見る
「配車」だけじゃない、ライドシェアの派生ビジネス │ TECHBLITZが選ぶ海外スタートアップ5選
「配車」だけじゃない、ライドシェアの派生ビジネス │ TECHBLITZが選ぶ海外スタートアップ5選
「配車」だけじゃない、ライドシェアの派生ビジネス │ TECHBLITZが選ぶ海外スタートアップ5選の詳細を見る
地銀×若者、日本のデジタルバンクの今│ TECHBLITZが選ぶスタートアップ5選
地銀×若者、日本のデジタルバンクの今│ TECHBLITZが選ぶスタートアップ5選
地銀×若者、日本のデジタルバンクの今│ TECHBLITZが選ぶスタートアップ5選の詳細を見る
空飛ぶクルマ、商用運航の開始はいつ?│ TECHBLITZが選ぶスタートアップ5選
空飛ぶクルマ、商用運航の開始はいつ?│ TECHBLITZが選ぶスタートアップ5選
空飛ぶクルマ、商用運航の開始はいつ?│ TECHBLITZが選ぶスタートアップ5選の詳細を見る

NEWS LETTER

世界のイノベーション、イベント、
お役立ち情報をお届け
「グローバルオープンイノベーションインサイト」
もプレゼント



Copyright © 2024 Ishin Co., Ltd. All Rights Reserved.