世界のエネルギーインフラは再構築が始まっている
―まずKoBold Metalsについて教えてください。
私たちは世界のエネルギーインフラを、今世紀中に再構築する必要があると考えています。再構築されたエネルギーインフラに必要な資源は、古くは産業革命から使われている鉄鋼などに類似するものもあれば、従来の資源とは完全に異なる新しいものもあります。
新しい資源とは、リチウム、ニッケル、コバルト、マンガンやバナジウムなどのことで、中には既に電気自動車などの電池材料に活用されているものもあり、再生可能エネルギーによる革命は始まっています。そして、産業革命における石炭と同じように、再生可能エネルギー革命においてこれら新しい資源は貴重な必需品であり、膨大な量が求められています。しかし、主にニッケルとコバルトは今後の需要を満たす量を確保できていません。
コロラド鉱山大学の経済地質学教授のMurray Hitzman氏や、Ivanhoe社(南アフリカで鉱物資源の探査などを行うカナダの鉱山会社)のDavid Broughton氏など、鉱物探査ビジネスで劇的な発見をした実績と、数十年の経験がある探鉱のプロフェッショナルたち。そして、GoogleやSlackなどシリコンバレーの大手テクノロジー系企業にいたエンジニアたちで、そのほとんどが自然科学分野の博士号を持ち、物理学、天体物理学、凝縮系物理学、大気物理学や量子コンピューティングの専門家たちからなるデータエンジニアチームが協働していることが、当社の特徴でもあります。
―素晴らしいメンバーが揃っているのですね。御社の事業についてもう少し詳しくお話ししてもらえますか。
既存の資源探査では誤検知率がかなり高く、100回掘削すると1回だけ成果をあげる程度で、99%は誤検知に終わっています。探査とは、つまりは検索問題であり情報問題です。
当社は、専有の科学技術計算を使ったソフトウェアプラットフォーム「Machine Prospector(機械探鉱家)」により、誤検知率を下げています。誤検知をなくすということではなく減らし、10回に1回は成果をあげるようにするということです。
現在は、「Machine Prospector」を利用した有用な天然資源が含まれる推積物の探査が主な事業ですが、資源の発掘に成功すれば、資源の識別および取得、そして開発までを行います。電気自動車革命のために、資源を必要量調達することを長期目標としています。
日本企業との戦略的提携もあり得る
―日本企業からの投資や事業提携などは検討されていますか。
社名は言えませんが、財閥系日本企業数社からは既に接触があります。世界的に金属・素材事業を展開している日本企業との提携は考えられると思います。
当社は、Breakthrough Energy CoalitionとAndreessen Horowitzから長期資金を調達しており、資金は十分にあるため投資は求めていません。しかし、将来の戦略的提携や投資に関しては興味がありますし、可能性があれば前向きに検討します。