サンフランシスコに本社を置くHiveは、エンタープライズ向けのAIソリューションを提供する企業。ユーザー投稿コンテンツの自動表示・非表示や、コンテクスト広告、ビデオやオンラインコンテンツでのブランド認知の測定、ドキュメントの解析など、さまざまなユースケースに対応したAIをAPI形式で提供する。当初はコンシュマー向けサービスで起業し、その後エンタープライズ向けにピボットし注目を集めている。共同創業者でCEOのKevin Guo氏に、創業の経緯や事業の特徴について聞いた。

スタンフォード時代の研究をもとにAIベースのサービスで起業

「最近では、アプリストアなどのガイドラインを遵守することがいかに難しいかが話題になっています。そこに私たちの出番があります」とGuo氏は語る。ソーシャルメディアのプラットフォームなど、ユーザーが好き勝手に投稿するオンラインサービスでは、誹謗中傷やわいせつ、暴力、憎悪、薬物、スパムなどのコンテンツを排除し、健全な運営を保つことが重要だ。Hiveが得意とする技術のひとつが、AIによるコンテンツ・モデレーション。自動的に不適切なコンテンツを抽出し、プラットフォームの管理を軽減することができる。

「Facebookのような大規模なプラットフォームでは、何万人もの人を雇って監視することができますが、小さな規模では無理な話ですね。そこで、私たちはとても使いやすいモデレーションのAPIを提供しています。このAPIだけでも75社以上が利用しており、毎月何十億件のAPIコールを処理しています」(Guo氏)

Kevin Guo
Hive
Co-Founder & CEO
スタンフォード大学でコンピューターサイエンスを学び、Dmitriy Karpman氏(Hive共同創業者兼CTO)と出会う。2人は2014年にQ&Aベースのコンシューマー向けソーシャルプラットフォームKiwiを創業。自社のAI技術に磨きをかけながらも、エンタープライズの強いニーズをとらえ、2017年にHiveを創業する。

 現在は、エンタープライズ向けのAIをAPI形式で提供しているHive。Redditのようなユーザー投稿サービスが利用するコンテンツのモデレーションだけでなく、ブランド調査のためのビデオやオンラインコンテンツでのロゴ検出、OCR、会議のテキスト書き起こしなども提供している。ビジネスモデルは、APIのリクエスト数に応じた課金だ。しかしながら、創業当初からGuo氏はエンタープライズ市場を意識していたわけではなかった。

 スタンフォード大学でコンピューターサイエンスを学んでいたGuo氏は、共同創業者でCTOのDmitriy Karpman氏と出会い、その共同研究からAIベースのコンシュマー向けのサービスKiwiにて2014年に起業する。

「Kiwiは、AIを活用したQ&Aベースのソーシャル・プラットフォームで、最終的に1億人以上のユーザーと数十億件の投稿を得ました。私たちは、人と人とが会話をして、その会話に基づいて話題が人にマッチするような仕組みを作ろうとしていました。しかし、その過程で、別の問題に遭遇しました。不適切なコンテンツの投稿です。そこでAIによる自動モデレーションの仕組みを作ったところ、それを売って欲しいという人たちが現れたのです」(Guo氏)

不適切なコンテンツをAIが自動抽出 Photo: Hive

 こうして、自分たちのAIに対してエンタープライズでの強いニーズがあることを自覚し、Kiwiの提供をやめて2017年にHiveを創業することになる。

250万人のクラウドソーサーが学習データに磨きをかける

 Guo氏は、AI製品には、ほかのエンタープライズ製品と比べて異なる点があるとし、「たとえば、SalesforceのようなCRM製品は技術的に作るのは難しくないです。でも、すでに浸透しているのでマーケティングやセールスのほうが難しいですね。一方で、AIに十分な機能を持たせるのは難しいです。コードを書いただけではできません。私たちは、誰も到達できていない、人間と同等レベルの精度を持つモデルを構築しています」と述べた。

 AIを役に立つものにするには、学習データを処理し、評価、検証を繰り返して学習モデルの精度を高めていく必要がある。Hiveでは、学習データ作成に関する処理をクラウドソースによって実現している。UberやLyftでは、登録ユーザーが車をパートタイムで運転して報酬を得られるプラットフォームも提供しているが、Hiveでも同様に自社でクラウドソーシングのプラットフォームを提供しているのだ。データ処理に携わるクラウドソーサーは、コロナ禍で急速に増え、今や250万人を超えており、同社の競争力を支える一翼を担っている。

「AIといえば、Hive」という存在を目指す

 Hiveはその業績自体も急成長している。Guo氏は「コロナの影響は、顧客の予算削減というネガティブな面もありましたが、それでも当社は2020年に前年比300%の成長をしました。コンテンツの管理などに人を雇っていた企業が、スタッフをオフィスに出社させられなくなりました。しかし、私たちのようなAIを使うことで、人間を必要とせず処理できることに気がついたのです。私たちはお客様のコスト負担と業務の複雑さを大幅に削減します。一度使うと手放せない、よりよいものだと感じていただけますので、たとえパンデミックが収束したとしてもAIのニーズは続くでしょう」と語った。

 好業績を背景に、2021年4月21日には5000万ドル(シリーズD)の調達をした。今回の資金は、エンジニアの採用や、製品の改善、新製品の開発に使用する。また、市場調査チームを増やし、世界での存在感を高める活動も促進する。今後6ヶ月から12ヶ月の間にフルタイムの従業員を現在の2倍にする計画を立てている。なお、日本市場への進出時に求めているのは、市場ニーズの理解を手助けしてくれるビジネスパートナーだという。長期的なビジョンについてGuo氏は次のように語った。

「世界中のどの企業も、AIが浸透していくことを考えていると思います。人々の生活にAIが関わっていくでしょう。企業が自らAIモデルを構築しようと考える前に、Hiveを選んでもらいたいです。現在、Webサイトを構築しようと思ったら、AWSやGCPが選択肢として思い浮かびますね。私たちは、AIにおいてそのような存在になりたいのです。私たちのモデルは、企業が自分たちで構築するよりも、より良く、より安く、より速くできるからです」

(取材・執筆/森 英信)




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