ハードウェア系アクセラレータ「HAX」についてのロングインタビュー第3回目。創業者であるCyril Ebersweiler氏に、深圳(深セン)の活用法、日本企業とのコラボレーション、HAXの未来について語ってもらった。前編中編はこちら。

Cyril Ebersweiler
HAX
Founder & Managing Director
2001年、フランスのポワティエ大学卒業。2002年、フランスのIEA(企業経営学院)にて修士号を取得。2002年より仏大手リテール企業Carrefourの中国北京オフィスにてプロジェクトマネージャーを務める。2006年より東京にて博報堂のグループ企業などでの勤務を経て、2011年にHAXを設立。

深圳の特異なエコシステム

―いまハードウェアスタートアップでは深圳が注目されています。

 私たちのアクセラレータでも、メインの活動エリアは深圳です。深圳のオフィスはサンフランシスコよりも4倍の大きさです。かつて多くの人がシリコンバレー、東京など違うエリアでハードウェアのアクセラレータをやろうと試みましたが、うまくいきませんでした。なぜなら製造のサプライチェーンの内側でないと実現できないためです。だからこそ、私たちは深圳にオフィスを構えているのです。深圳は、その内側のネットワークに入らないと全貌が見えてきません。深圳ではAppleのような大企業、また多くのスタートアップが活動をしていますが、これらの活動はほとんど公にされていません。

―Cyrilさんはなぜ深圳でHAXを立ち上げたのですか?何が魅力だったのですか。

 ひとつは私が「ロングテールマニュファクチャリング」と呼んでいるものです。それは大きな工場が多くの小さなショップを作り、その小さなショップ同士がお互いに外注し合うという構造です。

 また私は「中国へコピー」するという意味の山寨(シャンジャイ)というトレンドも学びました。ご存知の通り、中国は他国のプロダクトをよくコピーしています。たとえば最先端の携帯電話などがそうです。日本人はコピーなどしませんからバカバカしいと思うかもしれませんが、同じような機能の携帯電話がなぜ50ドルや100ドルのような低価格で販売できるのかが気になったのです。それを追求していった結果、「ロングテールマニュファクチャリング」や「山寨」といった考え方に行き着き、深圳のエコシステムを活用することにしたのです。

Image: HAX

日本企業に期待することはただ一つ

―これまでに日本企業とのコラボレーション機会もあったそうですが。

 実は、私は日本に住み、働いた経験があります。ですから日本についての一定の知識、理解があると思っています。

 以前、ある日本企業が私のもとを訪れ、HAXと同じようなプログラムを自分たちで実現しようとしたことがありました。結局、それは成功しなかったのですが、原因はとても保守的なプログラムで、プロダクトが日本にフォーカスしすぎていたからでした。

 ただ、ここ数年で私たちは日本から新しいトレンドを感じています。たとえば、日本の投資家が私たちのファンドに興味を持っています。また製造、商社などの大手企業も私たちのところへグローバルなコラボレーションのディスカッションのために訪ねてきました。たとえば最近、SoftBankともパートナーとして仕事をしたことがあります。中国の教育ロボットメーカーMakeblockとSoftBankの協業を日本でサポートしたのです。この事例のように、私はより多くの日本とのコネクション、コラボレーションを求めています。両者の間にはシナジーがあると思っているからです。

―日本企業には何を期待しているのでしょうか。

 私たちが日本の大企業に求めていることはただひとつ、「スタートアップを成長させる」ということです。それはデザインでも製造でもディストリビューションでも良いと思います。リスクを取って、彼らの素晴らしいところを引き出し、ともに経営の舵を取る、その信念を持っていただきたいと思います。日本にはこういったことを実現できる企業がたくさんあると思います。

Image: HAX

『わからない』ことを減らす

―最後に、HAXの将来のビジョンを教えてください。

 私たちはVCですので、最終的にはスタートアップをエグジットさせることを目標としています。エグジットするということは、ビジネスが上手くいっているという証拠です。しかし、私たちはこれだけでは満足していません。私たちはこれからもスタートアップを成功させるために力を尽くしていきます。

 私たちは消費者向けプロダクトを強みとしています。私たちのプログラムはスタートアップが2年以内に小売店での販売、そして200〜300万ドルの売上を得ることを目的としています。私たちはこのようなプログラムを他の領域へも広げていければと考えています。難しいことだとは思いますが、私たちにはできると確信しています。それによって、最終的には起業家システム、どうすれば成功するスタートアップを築けるのかを示すことができると考えています。

 最終的に、私たちはプログラムへ参加するスタートアップに対して、「成功への道筋」を示したいと考えています。それを示すことで、成功へ必要な起業家の「自信」へ繋がると信じています。



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