米シリコンバレーを拠点とするGraphiantは、企業のWANやハイブリッドクラウド、ネットワークエッジなどに“as-a-Service”のエッジネットワーク接続ソリューションを提供する。同社の技術は、MPLS(Multi-Protocol Label Switching )のようなパフォーマンス性能とSD-WANレベルのアジリティを兼ね備える。SD-WANのパイオニアとして知られる、同社の創業者及びCEOのKhalid Raza氏に、創業経緯、製品の優位性、今後の展望について話を聞いた。

クラウド、エッジコンピューター、IoTの成長に対応するために、ネットワークインフラを根本的に修正する

―Graphiantの創業経緯を教えてください。

 私は、インターネットが商用化された2年後の1993年からCiscoで働き始め、インターネットのバックボーンに関わる仕事をするようになりました。つまり、1993年からインターネットに携わり、その成長を目の当たりにしてきたことになります。

 2000年頃に、Ciscoのチームの一員として、MPLSネットワークを設計・構築しました。MPLSネットワークは幅広い企業が使用していましたが、データ量が増えるにつれ、MPLSのコストは非常に高額なものになりました。

 私は、企業がインターネットクラスの俊敏性を備えた、より低コストのオフィス向け接続を必要としているという考えから、MPLSに代わるネットワーク製品の開発をするため2012年にViptelaを創業し、SD-WANの旅が始まったのです。

 2017年にViptelaはCiscoに買収されましたが、当時、ワークロードの分散化とネットワークの複雑化が進み、接続性の課題を引き起こしていました。しかし、誰も根本的なインフラ、解決方法には目を向けていませんでした。

 そのため、クラウド、エッジコンピューター、IoTを繋ぐネットワークインフラを修正する必要性を感じ、2020年にGraphiantを創業しました。Graphiantは、信頼性が高く、安全なビジネスクラスのインターネットを作ることを目的としています。

Khalid Raza
Graphiant
Founder & CEO
大規模ネットワークアーキテクチャの先見者として広く知られる。グローバルTier-1キャリア、『フォーチュン100』に名を連ねる企業、ヘルスケア、テレコム業界向けの革新的なネットワーク構築において重要な役割を担ってきた。Ciscoに17年間勤務した後、2012年にViptelaを共同創業し、CTOを務め、SD-WAN市場の創造に貢献。2017年にCiscoがViptelaを買収した際にCiscoに戻り、同社のイノベーションと市場開発を推進するディスティングイッシュト・エンジニアの役割を担う。2020年にGraphiantを創業、CEOを務める。

コンサンプションモデルのネットワークを提供

―御社が提供する主要サービスであるGraphiant Network Edgeについて教えて下さい。

 当社が提供するGraphiant Network Edgeは、MPLSに求められるようなパフォーマンス性能と、SD-WANレベルの価格感およびアジリティを兼ね備えた”as-a-Service”のネットワークサービスです。企業のWANやハイブリッドクラウド、ネットワークエッジ、社外の顧客・パートナーにコネクティビティを提供します。

 また、当社は製品そのものやライセンスを販売していません。ネットワークサービスの消費データ量に基づく純粋な従量課金モデルとしています。これは従来のネットワーク・ベンダーとはまったく異なる販売方法であり、消費データ量に応じて料金を支払うという仕組みは企業にとって非常に説得力がありました。

―主要なユースケースを教えて下さい。

 3つの主要なユースケース(ソリューション)があります。1つは、エンタープライズ・エッジと呼ばれるもので、企業が連携を必要とするすべてのサイト、各種サービス、データセンターを接続するものです。これはMPLS、SD-WAN、その他のWANタイプの接続方法の代替となりえるものとなっています。従量課金モデルとすることで顧客企業にとって投資収益率を高めやすくなるため、多くの需要を喚起しています。

 2つ目は、クラウド接続です。エッジ間でデータ暗号化を行う当社独自の「ステートレス・コア」によって、顧客企業はクラウドワークロードに対してシームレスにプライベート接続することができます。また、当社のプライベート・ゲートウェイ機能も使用することができます。顧客にとっては自前でこのようなネットワークシステムを構築する必要がなくなるため、タイム・トゥ・マーケット(市場投入までの時間)を短縮することができるのです。また、運用を簡素化できる側面もあります。

 3つ目は、BtoBのコネクティビティです。今はどの業界でもそうですが、企業はモノとしての製品を売るよりも、サービスを提供したいと考えています。そのためには、企業間の接続が必要です。Graphiantは、サービスパートナーやビジネスパートナーがGraphiantのステートレス・スコアを使用することで、複雑なDMZやファイアウォールを必要とせず企業や顧客のビジネス間接続を迅速に構築することができます。

―御社のメインターゲットを教えて下さい。

 私たちは主に製造、ヘルスケア、金融、小売といった分野の企業顧客をターゲットにしていますが、インターネットサービスプロバイダー(ISP)や通信事業者からのニーズも非常に高まっています。特にグローバルな通信インフラを提供し、大手の通信事業者に対抗したいという考える小規模なサービスプロバイダーからのニーズです。現在、グローバルなサービス提供を希望する日系サービスプロバイダー数社と話し合いを続けています。

ヘルスケア、製造業、自動車産業での提携を期待

―御社は、2023年3月にシリーズBラウンドで6,200万ドルを調達し、累計調達額9,600万ドルに達しました。資金の使途について教えて下さい。

 現在の従業員数は約90名です。エンジニアがそのほとんどを占めていますが、新たに市場開拓チームも作っているところです。同資金については今後セールスチームや市場開拓チームの立ち上げ・強化に使用する予定です。

 市場開拓という点で、私たちは日本市場に引き寄せられたと感じています。サービスプロバイダーやリセラーの方々から「日本マーケットにぜひきてくれ」と言われるようになりましたし、多くの日系企業の方が当社のサービスに興味を示してくれています。

 今後半年以内には日本のサービスプロバイダーとの提携を実現できると踏んでいます。私たちは、アジア太平洋及び日本市場への参入を2024年度後半と予定していましたが、1年近く早まることになりました。

―日本市場への参入に関して、御社の考えをお聞かせください。

 日本市場では特に金融業界と製造業界がカギになると考えていますが、長期目線でいうと、自動車業界も非常に興味深い市場として見ています。近年の自動車は小型のデータセンターのような存在になっていますし、その傾向は今後高まるでしょう。また、自動運転の分野では通常のネットワークよりもはるかに低いレイテンシーが要求されます。大企業の中には独自のプライベート・インフラを運用しているところもありますが、これは経済的にみると持続可能とは言えません。

 今後5年~7年で自動運転車やスマートカーが普及した際は、よりリアルタイムかつプライベートで、高い接続性を持つ通信が求められると考えています。そういった長期目線でいうとトヨタやホンダといった自動車メーカーとの提携も希望してます。

 ヘルスケア業界も含め、総じてこれらの業界の人たちとの提携は非常に興味深い機会であり、日本市場に対してもとても興味深い環境だと思っています。

image: Graphiant

―最後に、御社の今後1年間のマイルストーンと、将来的なビジョンを教えて下さい。

 スタートアップのマイルストーンは間違いなく収益を上げ続けることであり、これが私たちにとって一番の優先事項です。資金を調達できたら、収益を上げ、さらに資金を増やしていかなければならないのです。それが、今後12ヶ月間のマイルストーンです。

 ただ長期的なビジョンとしては、消費者向けインターネットに接続しながらも、よりプライバシーやセキュリティに優れたビジネス向けインターネットの構築を目指しています。もしも車載オペレーティングシステムへハッキングできてしまえば、それは脅威ですし、遠隔地からのリモート手術が執り行われるようになれば、インターネット起因の失敗は許されないでしょう。つまり、エッジコンピューティングとIoTの成長に対応するために、私たちとしては、より信頼性の高い、プライベートで安全な、保証されたインターネットを提供する必要があるのです。



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