VCや事業パートナーに支えられ、順調に事業拡大を続けるKryon、EvisortそしてEasySendの3社。日本市場への進出を予定するKryonと、日本市場への参入を果たしたEvisortとEasySendに、日本市場の魅力や日本企業とのギャップなど率直な感想を語ってもらった。(取材協力:Vertex Holdings)

編集部からのお知らせ:本コンテンツや日本企業のオープンイノベーション事例、企業担当者約300名に行った「グローバルオープンイノベーションの実態調査」の結果などで構成されるレポート「Global Open Innovation Insights」を無料提供しています。こちらからお問い合わせください。

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米国、ヨーロッパに続く重要なアジアパシフィック市場

――まず、お一人ずつ会社の紹介をお願いします。

Omer:私はEasySendのCo-founderの一人であり、COOとして、グローバルセールスを担当しています。EasySendは、金融機関および保険会社に対し、マニュアルプロセスやペーパーワークをデジタルプロセスに変えるプラットフォームをご提供しています。米国、ヨーロッパ、イスラエルおよびアジアの4地域で活動しています。

Omer Shirazi
EasySend
Co-Founder & COO
2015年にバル=イラン大学にて経済学および会計学の学位を取得。2016年に共同でEasySendを設立、COOに就任。2018年より同社COOを務める。
Matan:私はKryonのVice President of Salesとしてアジアパシフィック地域を担当しています。個人的には、前職から東アジアおよびオーストラリアでの事業拡大に携わり、日本市場での経験もあります。

 当社は2008年に設立し、ビジネスパフォーマンス向上を手助けすることを目的に生まれました。当社のハイブリッド・オートメーションは、バーチャル・ワークフォースとヒューマン・ワークフォースの連携を強化し、企業がビジネスプロセスをエンドツーエンドで完全に自動化できるようにします。

 今日、Kryonの革新的なAIを搭載したプラットフォームは、企業がデジタルトランスフォーメーションを受け入れることを可能にしています。私たちはテクノロジーを利用して、ビジネスインフラストラクチャのコア部分を再定義し、より効率的な事業運営と作業環境を実現しています。

 日本は非常に大きな市場です。OEM供給は既に実績がありますので、今年から自社ブランドとして事業展開を始めようとしていたところでした。今は、COVID-19により足止めされている状態です。
Matan Trogan
Kryon
Vice President of Sales, APAC
1996年イスラエル国防軍Intelligence Unit入隊、2004年にネゲヴ・ベン=グリオン大学にてシステム工学の学位を取得。2008 年にIDC HerzliyaよりMBA取得。多くのイスラエルテック企業にてアジアパシフィック市場におけるビジネスを手がける。2017年にKryon入社。2020年より同社Vice President of Salesとしてアジアパシフィック地域を担当。
Ben:EvisortでSales and Business Developmentを担当しているBenと、Executive Vice PresidentのMemmeです。当社は、契約書のライフサイクル管理サービスをご提供している、創業5年目の企業です。

 アジアでの活動を始めたばかりですが、既にシンガポールと日本に顧客がおり、日本企業では富士通での導入実績があります。  
Memme Onwudiwe
Evisort
Executive Vice President, Legal & Business Intelligence
国際学およびフランス語の学位を取得後、2019年にハーバード・ロー・スクールにて法務博士を取得。2017年にEvisortのExecutive Vice Presidentに就任。ハーバードイノベーションラボのEvisortを手掛けた、ハーバード・ロー・スクールとMITリサーチチームの一人。
Ben Cassel
Evisort
Sales and Business Development
大学在学中に同志社大学に留学。セールス分野で経験を積んだ後、2011年に販売管理を手掛けるCassel Groupを設立。2020年よりEvisortにてSales and Business Developmentを担当。

――各社の日本市場における活動と市場戦略についてお話ししてもらえますか? まずはEasySendのOmerさんからお願いします。

Omer:当社は、アジア市場への進出を始めたばかりです。日本市場では、既にSOMPOホールディングスが当社の顧客です。そして、さらに多くの顧客を獲得し、よりよいサービスを提供するために、日本現地のインテグレータとリセラーを探しています。

 当社は、アメリカやドイツ市場にすでに進出していますが、日本市場では他の地域におけるやり方と変えて、企業向けにドア・ツー・ドアで販売していきたいと考えています。また、時差や言葉の壁を乗り越えるためにも、現地のパートナーが必要だと考えています。まずは、当社と日本市場のコネクターとなってくれる日本企業のパートナーを見つけ、それから本格的に進出に挑む予定です。

Image: EasySend

――次に、Kryonでは、日本市場についてどう位置付けていますか。

Matan:先ほどお伝えしたように、日本市場はターゲット市場の1つですが、まだ直接的な活動を行えていません。しかし、シンガポールにあるTokio Marine Asiaは、3年来に渡り当社の顧客です。東京海上の日本本社では別のRPAが導入されていますが、Tokio Marine Asiaはその流れに反して当社を選んでくださいました。

 日本市場での戦略ですが、まず日本のRPA市場は非常に成熟していると思います。既に多くの企業がRPAを導入しています。例えば、日本のある大手保険会社のシンガポール支社は、本社が別のRPAを使っていたため、当社のソリューションの採用を見送りました。

 個人的には、日本市場に進出する時は、必ず「成功」できる方法で進まなければならないと考えています。当社のソリューションが適した事業ドメインを設定し、ソリューションが問題解決できる特定のニーズを持った顧客を対象にする必要があります。そのためにも、Omerさんが先ほど話していたように、優れた現地パートナーが必要です。個人的な経験から言うと、日本では日本人である必要がありますから、現地パートナーなしでは成り立たないと考えています。

 そうした考えから、当社は、システムインテグレータ、ITサービスプロバイダー、コンサルティングファームなど、パートナー企業向けに充実した導入プログラムを用意しています。

Image: Kryon

――Evisortでは、どのような日本展開の戦略を持ち、どんな活動をしていますか。

Memme:当社は、日本市場への参入は主にVertex社のネットワークを活用してきました。私たちは日本に支店がある国際企業につながりを持つためには、日本の大手グローバル企業との関係基盤を固めることが重要だと考えていました。

 当社のソリューションは、基本的には英語で書かれた契約書の分析や、企業向けのビジネス契約書に対応しています。そのため、最初の取っ掛かりとして、法務のような英語の契約書を取り扱うチームと一緒に仕事ができると、よいユースケースになると考えています。そして、日本語が含まれる契約書を対象にする場合は、翻訳の必要がありますので、現地のパートナーが必要になり、既に一緒に取り組める関係性を構築したベンダーがいます。このようなパートナーを持つことはとても重要だと思います。

 日本市場に進出する際の課題は、時差や翻訳などがあり、そうした点を踏まえた上でビジネスを続けることができるかということと、構造的な違いを理解することにあると思います。例えば、米国では主に法務チームと時には調達チームが契約書の管理プロセスに関わっています。日本では、法務チームは契約書のレビューに関与しますが、長期的な管理などは実際に契約するビジネスユニットにあります。こうした違いに当社のソリューションを合わせる必要がありました。

Image: Evisort

日本企業とのビジネスには想像していたようなギャップはなかった

――日本市場に進出する前に、どういった点で課題や困難があると想定していましたか。また、実際に日本企業と仕事をして、苦労した点や困難だったことは何でしたか。

Omer:当社は約1年半前から日本市場に取り組んでいます。時差や言葉の壁以外に、ビジネスの進め方にギャップがあると思っていましたし、周りからもそう言われていました。しかし、実際には、ギャップを感じたことはありません。

 たしかに、日本企業との打ち合わせは通訳が入るため、必然的に英語だけで進む打ち合わせより時間が長くかかります。しかし、それも1時間のところが1時間半になる程度ですし、打ち合わせで質問される内容は、セキュリティ面やROIの仕組みや計算方法など、他と同じです。意思決定プロセスも他と違うようには感じませんでしたし、判断が遅いと感じたこともありません。セキュリティ関連の文書なども、英語だけで済んだのですが、当社としては相手企業がレビューしやすいように、日本語で用意したほうがいいと考えていました。例えば、ドイツ企業に対しては全てドイツ語で書いています。これは当たり前のことですし、英語圏以外ではどの国でも同じことだと思います。

Memme:そうですね。当社も、もっと困ると思っていました。特に、翻訳面で大きな困難に直面するだろうと想定していました。私たちは、日本語での資料作成を行いましたが、時には翻訳が完璧でない状態で資料を提出することもありました。そうした時も、日本の取引先企業は、私たちが翻訳にかけた労力を評価してくれました。また私たちは日本語を話す社員も雇用しています。

 VCからのサポートも大いに役立ちました。日本企業のトップ層に直接ご紹介いただいたり、日本とアメリカでは同じ役職名でも持つ権限が違うことや、誰が意思決定者なのかなど教えてもらえました。そして、その時々の進捗状況を把握するためのサポートもあり、状況の理解に役立ちました。日本市場に慣れている企業であれば、知っているようなことだったかもしれませんが、当社は初めてだったのでVCが提供してくれたインサイトは非常に参考になりました。

 たしかに、取引のサイクルは少し遅かったかもしれませんが、翻訳にかかる時間や対話が必要だったからでしょう。当社にとっては大きな懸念にはなりませんでした。

 日本企業は細部に至るまで確認を行った上で意思決定を行います。そのため、日本企業向けに、より多くの資料を作りました。資料を全て和訳することはできませんでしたが、打ち合わせ前に展開するようにしました。そうすることで、打ち合わせの時間を有効に活用できました。

 また営業プロセスやスケジュールなどが違う可能性があったので、懸念事項が発生しそうな場合にはそれに合わせて対応しなければなりませんでした。

Ben:スタートアップの場合は、伝統的に動きが速い米国やヨーロッパのハイテク企業とふだん取引をしているため、細部まで確認を行う日本企業を遅いと感じることや、時間がかかっている理由を勘違いすることがあるかもしれません。そうした場合には、その企業の経営陣に対し、事前に日本企業のタイムスケジュールや、なぜ時間がかかるのかを説明しておくことが有効だと思います。

Matan:日本企業は隅々まで確認し検討を行うので、取引が始まるまで、たしかに時間がかかります。しかし、忍耐強く時間をかければ、最後には大きなトロフィーが待っているのもたしかです。

日本市場で成功したいなら、忍耐と現地パートナーが必要

――皆さんから見た日本企業の特徴や、他国との違いを教えてください。

Memme:日本のコングロマリットは、グループでいくつもの異なる事業体を持っています。当社のソリューションの特性もあると思いますが、その内の1社と取引を始めると、関連企業に紹介してもらえ、ビジネスの機会が拡がります。日本企業はコングロマリット間でテクノロジーを展開することに躊躇がないようですが、特に、企業間でデジタライゼーションが進み、様々なテクノロジーを試し、成功したベンダーを広く採用することができるようになっています。こうした横のつながりとより大きな戦略目標を達成するためのつながりが日本のユニークなビジネス環境を作っているのだと思います。

――それは、日本の大企業特有の人事制度が影響しているかもしれませんね。例えば、アメリカの支社長がヨーロッパの支社長になり日本本社に戻るなど、幹部が横に異動します。

Ben:これは、私たちにとってはチャンスにもなると思います。例えば、日本にオフィスを持っていなくても、イスラエルやドイツなど、日本企業の海外支社と関係を築ければ、日本の本社ともつながることができますから。

Matan:やはり日本企業は製品の評価にかなり時間をかけますね。専門チームがいて、技術面を徹底的に評価します。とても小規模なスタートアップだと、このやり方に対応できないかもしれませんが、ある程度基盤がある企業であれば、耐えられるプロセスだと思います。

Memme:たしかに、日本企業は技術的な面で非常に緻密ですね。そして、プラットフォームの評価におけるITチームの役割が米国とは異なります。ビジネスユーザーではなく、ITチームがリードしていました。

Matan:そうですね、日本企業ではITチームが門番のような役割を担っています。導入しようとしている製品が組織や企業に与えるリスクなどを判断できる、重要な存在です。そして、ITチームの厳しい評価プロセスを無事に通過すれば後はすんなり進みます。

Omer: 日本では最初の1社と関係が築ければ、2社目、3社目とどんどん楽になってくるように思います。

Ben:そうですね。それと、有名な大手企業が顧客になると、物事がよりスムーズに進むようになります。当社サイトでは、顧客として富士通のロゴを掲載しているので、お問い合わせをいただく日本企業の方は富士通のことを聞いてきます。

Omer:これは私個人の見解ですが、日本企業には明確なヒエラルキーがあり、日本人はそれに忠実に従い行動しているので、見ただけで組織内のヒエラルキーがすぐにわかります。他の国では、誰が決定権を持った役職にある人なのか、見ているだけではわかりません。

――コミュニケーション面で、日本的だと感じる点はありますか。

Ben:アメリカ人は10個言いたいことがあったら9個発言し、日本人は10個の内6〜7個しか口に出さないと聞いたことがあります。たしかにそうした違いがあると思います。

 また、アメリカの企業、特にソフトウェア企業は、ネガティブなコメントはすぐに戻ってきますが、日本企業からのフィードバックは、良いものも悪いものも少し時間をかけて同時に戻ってきますね。

Omer:日本企業は導入に前向きであればあるほど評価や検討に時間をかけますが、そういった理由があって連絡がこないことを理解していないと、だめだったのかと思ってしまいますね。

Memme:私も相手の意図を理解しきれなかったことがあります。例えば、ある日本企業と電話会議を行った際に、一切質問がなく、その後のフィードバックも来なかったので、興味を持ってもらえなかったのかと思っていました。しかし、少し掘り下げて状況を確認したところ、実は電話会議での内容から、当社に興味を持ってくださっており、ソリューションの導入も検討してもらえていた、ということがありました。

Matan:最後にもう一度言いますが、日本市場で成功したいなら、忍耐と現地に良いパートナーを見つけること、特に正しいパートナーを得ることが必須です。

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