Photo: TECHBLITZ
Fyusionは、「Web3.0」を標榜するサンフランシスコ発のスタートアップだ。同社はスマートフォンで3D画像が撮れる、空間撮影アプリを開発。シリコンバレーのNEAや日本のUTEC(東京大学エッジキャピタル)などのVCから$16millionの資金調達をしている。今回は同社のCEO・Rusu氏に、アプリ開発の経緯やこれらのテクノロジーがもたらす未来について聞いた。

Radu B. Rusu
Fyusion
CEO & Co-Founder
2009年、ドイツ・ミュンヘン工科大学にてロボット工学の博士号取得。スタンフォード大学で客員講師を務めた後、2013年3月にFyusion設立。

ロボット研究から生まれたビジネス

―御社の事業内容を教えてください。

 私たちは、誰でもスマートフォンで3D画像が撮れる空間撮影アプリを企画開発しています。私たちが開発したアプリ「Fyuse(フューズ)」では、スマートフォンを傾けたり、画面をスワイプするだけで、撮った瞬間の画像を異なるアングルから3Dで見ることができます。「Fyuse」は、「時間」ではなく、その「空間」を記録するのです。これは今までにない、新しい空間撮影アプリです。

 現在は、ファッション関係のブロガーや学生などの個人のユーザー、Eコマースを展開する楽天やZappos、中古車販売を行うガリバーなどの法人にも利用されています。

Photo: Fyuse

―面白い技術ですね。もともと3D画像の研究を?

 いいえ。私は、もともとドイツのミュンヘン工科大学でロボットの研究をしていました。その後、スタンフォード大学で客員講師をし、シリコンバレーの中にある研究開発機関でパーソナルロボット(日常生活をサポートする個人向けロボット)の開発に携わっていました。

 その時に、パーソナルロボットがコンシューマー向けに実用化されるまでにはまだまだ多くの時間を要するとの結論にいたり、それまで研究していた技術を用いて、いま人々に役立てることはないかと考えたのが、ロボットが空間を把握する時に用いる3D技術の実用化だったのです。それが「Fyuse」の始まりです。

Photo: Fyuse

―もともとロボットには関心があったのですか。

 はい、幼い時からスタートレック(アメリカのSFテレビドラマ)の大ファンでしたから。(笑)最近、VRやウェアラブルといった技術が盛んですが、これからはパーソナルロボットの時代が来ると思います。きっとこれからの20年でさまざまなサービスが生まれるでしょうね。

技術とプロモーションのチャレンジ

―起業してからこれまでで、大きなチャレンジは何でしたか?

 2つありました。1つ目は、技術面です。今でこそiPhone 6など素晴らしい性能をもったモバイルデバイスがあります。しかし、創業当時の2013年はまだ携帯のカメラの性能が優れておらず、私たちの3D技術をユーザーの持っているデバイスに適合させることが非常に難しかったんです。

 そして2つ目は、プロモーションです。私たちのアプリは、写真でもビデオでもない3Dでの空間撮影という新しいものです。アプリストア上の「ビデオ」でも「カメラ」のどちらのカテゴリーにも当てはまらず、ユーザーがアプリを見つけにくかったのです。

 しかしプロモーションの問題については、ユーザーのみなさんが解決をしてくれました。あるユーザーコミュニティーが私たちのアプリを良い技術だと認めてくれて、それを他のコミュニティーにクチコミで広めてくれたことがきっかけで、次第にユーザー数が伸びていったのです。

日本のVCから出資を受けた理由

―資金調達についてお伺いします。日本のVCであるUTEC(東京大学エッジキャピタル)からも調達をされていますね。

 そうですね。私たちはこれまでUTECやNew Enterprise Associates(以下、NEA)などから出資を受けています。資金面だけではなく、私たちのビジョンをしっかりと理解してくれて、なおかつ技術面でもなサポートしてくれるパートナーから出資を受けています。

 UTECについては、私が前職で日本の産業用ロボットメーカーを技術サポートしていたことがきっかけです。UTECがそのメーカーに出資していたため、私はUTECのキャピタリストと知り合いになったのです。そういった縁で、今回出資を受けることができました。一方、NEAは、KPCBやセコイアキャピタルとも並ぶシリコンバレーの大手VCの一つです。3D分野への投資実績が豊富で、技術面にもとても詳しかったため、出資を受けることを決めました。

目先の利益にとらわれない

―マネタイズについてはどう考えていますか?

 いまはマネタイズについては考えていません。私は、スタートアップには2つの種類があると思っています。1つ目は、すぐに収益化が見込める手堅いビジネスを構築するというものです。そういったスタートアップは、マネタイズはうまくいくかもしれませんが、多くの場合はスケールするのが難しく、小さくまとまってしまいがちです。

 2つ目は、マネタイズは置いておいて、まずは価値あるサービス創りにフォーカスするというものです。価値あるサービスであれば、ユーザーに受け入れられ、やがてユーザーの生活の一部にさえなります。FacebookやInstagramが良い例ですね。私たちは後者、つまりユーザーにとって価値あるサービスを創ることにフォーカスしたいと考えています。マネタイズはもちろん大切ですが、目先の利益にとらわれすぎると、広く社会に影響を与えるようなサービスにスケールしにくいと思います。

―アジア展開についてお聞かせください。

 日本のVCとパートナーを組んでいますので、今後日本への展開はもちろんのこと、中国や韓国、ベトナムにも展開していきたいと考えていますです。国によって言語や商習慣の問題がありますからローカライゼーションをするにあたって現地の良きパートナーがいると助かりますね。Eコマースやファッション、自動車関連やヘルスケア業界などで、パートナーを組んでいきたいですね。

「Web 3.0」の世界

―ずばり、テクノロジーの進化で未来はどのようになっていくと思いますか?

 まずは、インターネットの進歩をひとつずつ段階に分けて考えてみましょう。はじめにインターネットの出現した時代を「Web 1.0」とするのであれば、その後スマートフォンが発明され、人々がSNS上で様々な写真や動画をシェアするようになった時代は「Web 2.0」といえます。

 そしてこれからは、ドローンやウェアラブルデバイス、VRや3Dプリンタといった新しい技術が実用化される時代「Web 3.0」のはじまりです。私たちの3D画像技術はここに入ります。VRや3Dプリンタなどの新しい技術と私たちの技術を組み合わせて、より良い世界をつくっていきたいですね。たとえば将来的に、私たちの技術で撮影した3D画像を、3Dプリンタでそのまま具現化できるようになると思っています。SF映­画で見たような未来の世界が、テクノロジーの進化により現実のものになりつつあるのです。みなさんが想像していた未来は、もうそこまで来ていますよ。



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