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Forterは、ECにおける不正行為を検知・防止プラットフォームを提供するスタートアップだ。2013年にイスラエルで創業し、2020年には2000億ドル以上のオンライン取引を保護した実績を持つ。現在まで2億2500万ドルを資金調達し、2021年4月には日本オフィスの開設も控えている。今回はCEO & Co-FounderのMichael Reitblat氏に話を聞いた。

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世界6都市にオフィスを構える、イスラエルスタートアップ

――まずはForter設立の経緯を教えてもらえますか?

 私は、2001年にイスラエルのサイバー軍でオフィサーに就任して以来、20年以上不正検知・セキュリティー分野に携わってきました。退役後は、不正検出サービスを提供するFraud Sciencesで要職に就き、同社がPayPalに買収されてからはサイバー分野の責任者としてPayPalに勤めました。他に、決済サービスを提供する企業にもいたこともあります。Forterは、高校の同級生で、軍隊もFraud Sciencesでも一緒だった友人と一緒に立ち上げました。

 私たちは、2013年にイスラエルで創業し、2015年にサンフランシスコに進出、2017年から米国での拠点をニューヨークに移しプレゼンスを高めてきました。現在は、ロンドン、シンガポール、シドニー、上海にもオフィスがあり、日本オフィスも近々オープンします。

Michael Reitblat
Forter
Co-Founder & CEO
Tel Aviv Universityで経済学と歴史を専攻。イスラエル軍のサイバーインテリジェンス部門でMilitary Intelligence Officer(軍事諜報部オフィサー)を務めた。退役後は商業向け不正予防自動システムを扱うFraud Sciencesに勤務(同社は2008年、PayPalに統合)。2009年から2013年まで、Pangoでプロダクト&インターナショナル事業担当副社長を歴任。2013年に共同でForterを設立し、CEOに就任。

不正利用を恐れ、大きな販売機会損失になっている

――御社のサービスはどういう問題を解決しているのでしょうか?

 例えば、消費者のクレジットカードが実店舗で不正利用された場合、被害にあった消費者と店舗は銀行が補償します。しかし、オンラインで不正利用が発生した場合、小売業者の責任となり小売業者が被害を被ります。優良顧客と不正利用の顧客の比率は20対1程度と言われていますが、小売業者は不正利用の顧客を警戒するあまり、優良顧客との取引も避けてしまい、販売機会の損失になっています。

 例えば、中国を旅行中に米国のサイトで商品を購入し、帰宅途中に立ち寄るサンフランシスコのホテルで商品を受け取りたいと思っても、不正利用を疑われ購入できません。小売業者における不正利用の被害額が年間200億ドルだとすると、機会損失はその20倍ですので4000億ドルに上ります。

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 一般的な不正防止ソリューションは、サイバーセキュリティーと同様のコンセプトで機能していました。通常の行動から逸脱しているシグナルを見つけ、警告するレッドフラグを立てます。そして、それが攻撃なのか、拒否するべきかどうかを判断します。

 サイバーセキュリティーでは、1回でも攻撃を見逃すと悲惨なことになりかねませんが、不正利用は違います。リスク管理により近いです。不正利用に200億ドル払っても4000億ドルの機会損失を防げるならよいのかもしれませんが、不正利用を特定できません。そして、多くの企業が消費者の行動の一部分のみを見て「逸脱」だと判断しています。心配しすぎている傾向があったので、私たちは「逸脱」だとみなす従来の判断基準を改めました。

 当社の統合型プラットフォームは、IDベースで消費者のモバイルトランザクションを包括的に扱い、クレジットカード詐欺、アカウントの乗っ取りやなりすまし、返品における不正行為などを特定し阻止します。そして、従来のソリューションから誤検知を約75%削減し不正による損失やコストを約60%削減しています。

 私たちは、最初は小売業者を対象にサービスの提供を始めましたが、現在はギャンブルやアダルトコンテンツ以外の、オンラインで商取引を行っている全ての事業者を対象にサービスを提供しています。そして、大規模な「信頼のネットワーク(Network of Trust)」を構築しています。

――消費者のデータに基づいて、不正を判断しているということですね?

 そうですね。消費者と小売業者の取引を監視し、リアルタイムで承認の判断を行いますが、当社が得たデータは顧客と共有しませんし、第三者への販売も行いませんので、安全性も高いです。例えば、顧客企業に対して、「その消費者は確かにシンガポールにいる」と言った情報は伝えず、「良い取引です」とだけ伝えています。

エコシステム全体で信頼のネットワークを構築

――「信頼のネットワーク(Network of Trust)」について詳しくお話ししてもらえますか?

 例えば、不正利用犯は、ウォルマートを攻撃してブロックされても、ウォルマートの競合のターゲットや、ベストバイなど他の小売業者に対しても同じ攻撃を行うでしょう。

 ウォルマートは、ターゲットなど競合関係にある小売業者にいかなる情報も共有しません。当然、攻撃の情報も他社と共有することはありません。しかし、当社は小売業者と競合関係にないため、攻撃を検知した場合、その情報を全ての顧客企業に対して活用し、不正利用を防ぐことができます。当社の顧客企業をネットワークと考え、そのネットワークが大きくなればなるほど、ネットワーク内の顧客が保護されるわけです。

――日本オフィスを開設する予定とのことでしたが、日本企業のパートナーは探していますか?

 はい。日本オフィスは2021年4月に開設予定です。それぞれの市場に独自のやり方がありますので、サービスをローカライズし、現地に人材を配置する必要があり、市場を理解している現地企業のパートナーが必要です。現在、日本で人材採用も進めていますし、当社のパートナーになってくださる、オンライン決済やeコマース全般を事業にしている日本企業を探しています。

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