Image: Folio Photonics
Folio Photonicsは、ケース・ウェスタン・リザーブ大学のCenter for Layered Polymeric Systemsからスピンオフし設立された。同大学教授Kenneth D. Singer博士が開発した多層フィルムを使い、16層で10TBまで容量を拡大できる次世代ストレージDataFilm Disc™を開発した同社は、その商業化に向けパートナーを求めている。今回はCEOのSteven Santamaria氏に話を聞いた。

Steven Santamaria
Folio Photonics
CEO
Intelにて13年間務める。その後、複数の企業を経て、2017年にFolio Photonicsに参画。2018年に同社、CEOに就任。

コールドデータのストレージ問題を解決

―最初に、Folioのフィルムを使った「DataFilm Disc™」について教えてください。

 従来の主要ストレージ媒体には、フラッシュメモリ、回転式HHD、磁気テープの3つがあります。例えば、データを保存した最初の30日間はアクセス頻度も高く、高速アクセスが求められるため、フラッシュメモリベースのストレージが使われます。時間が経つにつれ、データは使われなくなりアーカイブに移動されます。ストレージコスト削減のため、アーカイブデータは高コストなフラッシュメモリではなく、階層を下げたHHDまたは磁気テープに移動されます。当社の「DataFilm Disc™」は、こうしたコールドデータのストレージに適しています。

 SNSなどの個人的なデータからMRIなど医療系のデータなど、様々なデータが生成され長期保存や永久保存が求められている世の中で、コールドデータのストレージは急成長している分野でもあります。2009年の世界中のデータは1ZB(ゼタバイト)未満でした。現在は25ZBあると言われ、2025年までに175ZBになると予測されています。ZBは1兆GBです。この膨大なデータの管理コストの削減や、必要な時に早く取り出せる管理方法など、ストレージ分野は、多くの課題に直面しています。

―どういった面で既存媒体と違うのでしょうか。

 コールドデータのストレージ用なので、フラッシュメモリとは競合しません。フラッシュメモリ以外のストレージ媒体と比べて、大容量で拡張性も高く、データをランダムに取り出すことも可能です。加えて、湿気や温度など保管環境に影響されず、長寿命なため、媒体コスト、電力コストやデータ移行コストが低く抑えられます。

 当社のフィルムはクッション材と蛍光体材料が埋め込まれ、ディスクごとにラミネーションを一回行うだけで、レーザー光を使える16の層を作ります。Folioの多層光ディスクの最大容量は10TBで、これを1GB程度の既存媒体価格以下の価格で提供が可能ですので、大きなビジネスチャンスがあると考えています。商業化できれば、既存のストレージ媒体業界に価格破壊をもたらすことになるでしょう。

商業化に向けパートナー求む

―自社で商業化を進めるのですか。

 研究開発が終わり、実証実験も済んでいますが、自社での製品化や商業化は考えていません。Folioの技術でストレージ業界に革命を起こせるパートナー企業を探し、ストレージ企業やハードウェアメーカーと業務提携の可能性を探しているところです。業務提携の形態としてはOEMを考えています。

 例えば、既存のブルーレイ製造工程の9割を再利用しながらFolioの技術を加え、16層の光学ディスクを作ることが可能です。

―パートナーは日本企業も対象にしていますか。

 もちろん日本企業とのパートナーシップを視野にいれています。アジア、特に日本が光学技術の最先端ですし、大手企業が集まっています。実際、私はパートナーを探すため定期的に日本や台湾を訪れています。



RELATED ARTICLES
人型ロボット、AI技術の進歩が開発に追い風 │ TECHBLITZが選ぶスタートアップ5選
人型ロボット、AI技術の進歩が開発に追い風 │ TECHBLITZが選ぶスタートアップ5選
人型ロボット、AI技術の進歩が開発に追い風 │ TECHBLITZが選ぶスタートアップ5選の詳細を見る
EV時代に重要なことはデータをいかに「運ぶ」か Ethernovia共同創業者らに聞く
EV時代に重要なことはデータをいかに「運ぶ」か Ethernovia共同創業者らに聞く
EV時代に重要なことはデータをいかに「運ぶ」か Ethernovia共同創業者らに聞くの詳細を見る
移動のビッグデータを収集・解析 スマートドライブが見据える未来の形
移動のビッグデータを収集・解析 スマートドライブが見据える未来の形
移動のビッグデータを収集・解析 スマートドライブが見据える未来の形の詳細を見る
家庭で使える3Dレーザープリンターを開発するGlowforge 「ものづくりの喜び」を取り戻す
家庭で使える3Dレーザープリンターを開発するGlowforge 「ものづくりの喜び」を取り戻す
家庭で使える3Dレーザープリンターを開発するGlowforge 「ものづくりの喜び」を取り戻すの詳細を見る
作業現場を変革するウェアラブルソリューション ハンズフリーで遠隔コラボも RealWear
作業現場を変革するウェアラブルソリューション ハンズフリーで遠隔コラボも RealWear
作業現場を変革するウェアラブルソリューション ハンズフリーで遠隔コラボも RealWearの詳細を見る
現場での映像解析AIプラットフォームを新たな社会インフラに― EDGEMATRIXの狙い
現場での映像解析AIプラットフォームを新たな社会インフラに― EDGEMATRIXの狙い
現場での映像解析AIプラットフォームを新たな社会インフラに― EDGEMATRIXの狙いの詳細を見る

NEWS LETTER

世界のイノベーション、イベント、
お役立ち情報をお届け
「グローバルオープンイノベーションインサイト」
もプレゼント



Copyright © 2024 Ishin Co., Ltd. All Rights Reserved.