Fi.Money(以降、Fi)は、インド・バンガロールを拠点とするフィンテック企業。インドのミレニアル世代以降の社会人向けにデジタルバンキングや普通預金、投資信託などのサービスを提供する。ネオバンクと呼ばれるカテゴリに属する企業で、自らは銀行業を営むわけでなく、金融機関の提供するAPIをスマートフォンアプリで連携することでマネー管理のサービスを提供している。銀行やGoogleなどを経て同社を共同創業したSujith Narayanan氏に業況や将来展望を聞いた。

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Googleのインド市場向け決済サービスの創業者がつくった金融サービス

――これまでの経歴と、Fiを共同創業した理由をお教えください。

 私は銀行に勤めた後、10年ほど前にGoogleに入社し、Googleの金融サービス業務をリードしてきました。当時はインターネットが初期段階にあり、ほとんどの金融機関はオフラインのビジネス形態に集中していました。2010年から2012年にかけて、多くの金融サービス会社にデジタル分野に注力するようアドバイスをした後、Googleのモバイル決済サービス「Tez」の共同創業者になりました。

 これはインドでの決済をデジタル化するための完全なデジタルソリューションで、1年半で1億人以上がこのソリューションを利用するようになりました。Googleでも世界で最も成功した決済プロダクトと言えます。私は5年間、決済業務に携わり、金融サービスにおけるチャンスは決済を超えることだと気づきました。しかし、Googleのような大企業では、あらゆる種類の金融サービスを行うための承認を得ることは非常に難しいため、2019年に完全に独立した金融サービス企業としてFiを立ち上げました。

Sujith Narayanan
Fi.Money
Co-Founder
大学卒業後、2001年〜2008年の間、Standard Chartered Bankでセールス職などに従事。2008年〜2011年、Religare Macquarie Private Wealthにてマーケティングやチャネル開発のVice Presidentを務める。2011年〜2018年にはGoogleに在籍し、インド向けGoogleのモバイル決済サービス「Tez」の開発に携わる。2019年に、同じくGoogle出身のSumit Gwalani氏と共に、Fi.Moneyを創業する。

――Fiの事業内容についてお教えください。

 私たちがこのFiで構想したのは、消費者の観点から金融サービスを単純化することでした。そこで、人々が金融サービスに求めるものを次の4つの基本的なものに定義しました。

 1つは「お金を貯めたい」、これは銀行口座のことです。2つ目は「自分のお金を使って支払いたい」、これは決済です。3つ目は「お金を増やしたい」、これは金融投資です。そして4つ目は「非常に単純なことのためにお金を借りたい」で、融資です。

 他の国と同様にインドでは、この4つのサービスが競争のためにすべてが断片化されており、世界でも同じように、人々は複数のプラットフォームを利用します。もしも水平展開やスーパーアプリを作りたければ、これらのサービスを提供できるようにする必要があります。

 私たちは、まず銀行口座サービスを始め、次にQRコードや家賃の支払いなどの決済に対応しました。銀行口座を開設してデビットカードを発行し、オンラインだけでなくオフライン、そしてP2Pまであらゆる種類の決済を提供しました。今では複数の投資信託にも対応しています。今後90日以内(取材は2022年10月)にクレジットカードやローンなどの商品をローンチする予定です。ビジネスモデルは、これらのサービスに対する手数料です。

Image : Fi.Money

政府や規制当局も金融のデジタル化に着目する中、いち早く市場に参入

――ネオバンクは銀行そのものではなく、銀行などの金融機関が提供するAPIを使ったサービスを提供する業態です。インドの金融機関はAPIを公開していて、Fiもそれらを利用しているのでしょうか。

 私たちは、パートナーの銀行と緊密に連携しています。Fiのプロダクトを提供できるようになるまで、APIなどの開発には2年近くかかりました。インドでは多くの銀行がオープンバンキングのAPIを提供しておらず、プロセスは非常に古いもので、インターネット世代向けではありません。そのため、当社のプロダクトマネージャーとエンジニアがチームを組み、銀行と協力してオープンバンキングのAPIを作成したのです。本番稼働したのは1年半ほど前です。

 インドでは、すべての国民にデジタルIDが与えられました。そこでインド政府や規制当局自体は、決済のオープン化など、フィンテックのエコシステムに大きな関心を寄せています。銀行口座も相互接続されるようになります。

 あなたが私に携帯電話の番号を教えるか、QRコードを見せることによって、私の銀行口座から瞬時にあなたに送金できます。誰もが銀行口座を共通のシステムにリンクできるようになったので、銀行での個人認証の手続きを共有・簡素化できるようになりました。A銀行で預金していて、B銀行に新たな口座を開設したい場合、同じ手順を踏む必要はありません。

 仕組みが大きく変わった結果、消費者の観点では、銀行口座の開設、支払い、投資、ローンのすべてがシームレスに実現できるようになったのです。

――国の制度が大きく変わると、Fiと同じようなサービスを提供したいと考える競合も登場すると思いますが、いかがでしょうか。

 現在のところ、競合はほとんど登場していません。制度はできたのですが、多くの銀行がAPIを公開していないのです。これからかなり多くの開発が必要になると思いますが、ネオバンクはもっと増えていくとは考えています。

――ネオバンクの先駆者として、ターゲットとしている利用者はどのような人ですか。

 ミレニアル世代以降の、20代のビジネスパーソンに注目しています。人が最初に就職するときに作った銀行口座はそのまま使われることが多いでしょう。インドでは20代の人口ボリュームが多く、毎年約6700万人が労働力として加わっています。これは巨大です。この世代をターゲットにすれば、今後数十年にわたって利用してくれるでしょう。

 Fiはこの12カ月に200万人の顧客を獲得し、4半期ごとに50%近い成長をしています。銀行口座を持つインド人は7億人いますが、その多くが既存の銀行に満足していません。多くの人がエンド・トゥー・エンドのデジタル体験を望んでおり、Fiは市場に最初に登場している点で利点があります。

Image : Fi.Money

成長するフィンテック分野で、日本企業とのパートナーシップも模索していきたい

――2022年8月にシリーズCラウンドでTemasek Holdingsなどから1700万ドルを調達しています。今後1年間で達成したい目標についてお教えください。

 カードローンなどのサービスを始める予定です。これはお客様から求められていたものです。それから、法人との連携も考えています。企業向けの銀行サービスを提供するプログラムです。多くの企業と連携し、従業員のための金融サービスを提供することで、継続的な成長を続けられると考えています。現在この分野に参入する企業は少ないため、市場をリードできると考えています。

 現在、社員は250人ほどで、うちバンガロールにいるのは50人で、あとは各地にいます。70%はエンジニアリングの担当で、残りはマーケティングとセールスです。

――日本企業とのパートナーシップは考えられますか。

 もちろんです。国際的な市場展開も私たちは探求しています。私たちが構築した技術スタックは、インドだけでなく異なる国でも運用できるため、大きなチャンスがあると思います。インドで日本企業は大きなプレゼンス、存在感を示していますから、それを機会として捉えています。私たちは彼らと協力し合って、この分野を発展させたいです。

 日本企業との協業は3つの側面が考えられるでしょう。1つは技術です。私たちは技術面で協力できます。2つ目はビジネスの側面です。例えば、インドや日本以外の国で事業を展開している主要企業とのコラボレーションやビジネスパートナーシップです。3つ目は投資です。私たちはこれまで日本の投資家とも議論をしてきました。

Image : Fi.Money

――インドだけでなく、グローバルな展開もお考えとのことですが、御社の長期的なビジョンを教えてください。

 我々の目標は、今後5年間で1,000万人以上のインド人にサービスを提供することです。その間、より多くの商品を提供し、3年後にはグローバル市場に参入します。

 コロナ禍以前にインドで金融サービスをしようと規制当局に問い合わせしたら「実店舗を持たなければならない」と言われたでしょう。しかし、新型コロナウイルスの影響で誰も銀行の店舗に行かなくなりました。未来は100%デジタル化していきます。若い世代の消費者は、なんでもモバイルで済ませたいと考えています。その結果、金融機関はテクノロジー企業になり始めます。そうしなければ、金融機関には10年後、15年後の未来はありません。

――日本の読者にメッセージをお願いします。

 私たちは、日本企業とのパートナーシップを望んでいます。日本の市場や環境、そしてビジネスから学べることがたくさんあると思っていますので、ぜひ協力したいです。日本の企業との深く有意義な関係を模索していきたいです。

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