イスラエルでハイテク産業向け投資を手がけるViola Group。中でもスタートアップ企業が初期の資金調達で支援を受けるViola VenturesパートナーのOmry Ben David氏に、イスラエル企業の動向、日本とのコラボレーションの可能性について話を聞いた。

Omry Ben David
Viola Ventures
Partner
Tel Aviv Universityでコンピュータサイエンスと経営学で学位取得、コロンビアビジネススクールでMBA取得。イスラエル軍、ソフトウェア会社(Jungo Software)などを経た後、15年間Goldman Sachsにて勤務。2017年にViola Ventures参画。

アーリーステージに投資するハイテク産業向けVC

―Viola Venturesの特徴は何ですか?

 Viola VenturesはViola Groupの一部です。Viola Groupはイスラエルで最大のハイテク産業向け投資会社です。全体で30億ドルの資金があり、Viola Venturesのほか、成長企業向けのViola Growthファンド、ベンチャー向け貸付などを手がけるViola Creditファンド、フィンテック向けのViola Fintechファンドと4つのファンドを抱えています。

 グループは2000年に立ち上がり、Viola Venturesはアーリーステージの投資、Aラウンドと初期Bラウンドに焦点を当てています。企業が一番初めに資金調達をするときに来るのが我々のところです。

―投資先はどのような企業が多いのでしょうか。

 投資サイズは150万ドルから1000万ドルの規模で、BtoB、フィンテック、消費財、自動運転、IoT、アグリテック、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)に投資しています。医療機器やバイオテックは対象外ですが、それ以外はほとんどの領域にオープンです。2018年1月に2億2000万ドル規模の5号ファンドをローンチしました。合計5つのファンドで10億ドルを管理していて、40のポートフォリオ企業があります。

 フィンテックは引き続き好業績が望めますし、アグリテックもイスラエルで大きく伸びていくでしょう。他のファンドとは見解が異なるかもしれませんが我々はコンシューマー向けサービスも伸びると信じています。20年前にイスラエルが強かったセミコンダクター産業の復活もあると思っています。ロボティック・プロセス・オートメーションやロボットを動かすソフトウェアにも注目をしています。

フィンテック・保険関係に注目

―特にイスラエルのスタートアップで成功している事例を教えてください。

 フィンテックのPayoneerは200か国で送金を手がけていて、AirbnbやAmazonなどでもサービスを提供しています。

 保険関係も勢いがありますね。我々の投資先ではありませんが、Lemonadeというニューヨーク拠点のイスラエル企業が借主向けの保険を提供しています。Hippoは家主向けの保険で、Next Insuranceは中小ビジネス向けの保険で成功しています。

 中小企業向けの融資ビジネスでは、Behalf、BlueVine、Fundboxなどがあげられます。Behalfは私たちの投資先です。

 フィンテック・保険関連は私たちの注目領域でもあり、PersoneticsというAI主導のパーソナルバンキングに投資しています。銀行向けのサービスでアプリやウェブサイトを完全にカスタマイズできるというものです。顧客の信用力やライフイベントに応じてAIが関係のあるものを提示してくれます。その他、保険会社のPlanck Reや詐欺を見つけるEvercompliantも私たちの投資先です。

日本は重要な市場

―日本とはどのような形で協業が見込めますか。

 日本は大きく重要な市場です。イスラエル企業の中には、モバイルアプリサービスや広告サービスを手掛けるIronSource(アイアンソース)やパーソナライズド動画を世界で展開しているSundaySky(サンデースカイ)など、既に日本のマーケットに参入している企業もあります。

 日本は新しい技術を受け入れる素地がある文化だと思うので、イスラエル企業とのコラボレーションに向いていると思います。イスラエルのスタートアップが日本企業の直面している問題と優先順位を理解することができれば、ソリューションを提供し、ともに取り組むことができる可能性があります。

 私たちViola Venturesは日本企業からの出資も受けています。三菱UFJキャピタルが、相互に先端的な企業を紹介・育成し、ニーズのある大企業につないだり、日本のスタートアップ企業の海外展開を支援したりする目的で2017年に500万ドル(約5億7千万円)を出資してくれています。

Win-Winの関係を

―日本企業とイスラエル企業が協業していくうえで難しい点はありますか。

 文化、言語、時差が違うという課題はあるでしょう。ただ、現代ではチャットやオンライン通話などのコミュニケーションツールも使えますので、こうした問題は乗り越えられるのではないでしょうか。

 私たちもイスラエルのスタートアップも、イノベーションに対してきわめてオープンです。日本企業とイスラエルのスタートアップはシナジーを生み出し、Win-Winの関係を築けるはずです。

 ※本記事は冊子「Israel Startup Ecosystem 50」の記事を再掲載したものです。冊子ではより詳しいスタートアップの情報や、イスラエルスタートアップと日本企業の協業事例、現地ベンチャーキャピタルのインタビュー記事を掲載しています。



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