※TECHBLITZのコンテンツパートナーであるジャンシン(匠新)の協力で、中国を代表する巨大テック企業4社(Baidu、Alibaba、Tencent、Huawei)をはじめとする中国テック企業の最新動向を紹介する。
アリババ 得意の物流で自動車業界の発展を幅広く後押し
ツァイニャオの「物流デジタル化ソリューション」を導入している自動車部品メーカーである寧波更大集団(NGTB GREAT GROUP)の製造現場の様子
image: Alibaba
中国の発展著しい自動車産業の発展を物流の面から支えている企業の1つが、菜鳥(ツァイニャオ)だ。ツァイニャオは、従来からの主要業務である、アリババ集団のECビジネスを末端で支える物流企業として蓄積してきた物流のノウハウを、自動車産業向けにカスタマイズして提供している。自社発表のデータによれば、同社は2023年6月時点で、10社近くの自動車関連企業と、物流テクノロジーを実際の現場に応用するための連携を開始している。
ツァイニャオが自動車業界向けに提供する物流デジタル化ソリューションは、テクノロジーの観点から見たとき、IoT、自動化、デジタルサプライチェーンという3つの注目すべき能力を備えている。
ツァイニャオが自動車業界向けに提供する物流デジタル化ソリューションにおいて注目したい3つの能力「IoT」「自動化」「デジタルサプライチェーン」を示したイメージ図
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1つ目のIoTでは、ツァイニャオは、自社開発するIoT製品とその機能を総合的に応用し、自動車業界の顧客に対して、より便利で効率的かつ低コストなサプライチェーンの可視化能力を提供できる。
ツァイニャオの自動車業界向け物流デジタル化ソリューションの中で、IoT能力を応用した現場の様子
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例えば、倉庫においては、IoTタグなどのツールを使うことで、自動車業界の顧客が倉庫内の在庫と入出庫を可視化して管理できる。輸送においては、注文、貨物、物流車両の輸送途中における追跡と可視化管理を実現できる。同時に、業務データをIoT製品と連結することで、産業チェーンにおける川上と川下の合理的な連携を可能にしている。
2つ目の自動化については、ツァイニャオは、立体倉庫やAGV(無人搬送車)、ロボットアームなどのハードウエア製品を提供するのに加え、自社の自動化WCS(倉庫制御システム)を導入して物流の統一管理を実現できる。物流自動化がもたらす効率と品質を高める上で、積極的な役割を果たしている。同社はこうして、自動車業界の川上および川下の企業が、消費者ニーズにより正確に対応することを目的とした、柔軟な自動車の自動化生産の実現をサポートしている。
ツァイニャオの自動車業界向け物流デジタル化ソリューションの中で、自動化能力を応用した現場の様子
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ツァイニャオの自動化WCSは、主要な設備メーカーの主流とされている設備を、工程管理システム上に一括して接続できる機能を備えている。そのため、多機種を同期させたより多くのシナリオへの応用に対応している。工程管理の規模においては、同社の自動化WCSは、20以上の機器、200以上のフォークリフト、10万キロメートルの輸送ラインなどを制御することが可能となっている。
3つ目のデジタルサプライチェーンについては、ツァイニャオのデータ製品の導入を通じて、自動車業界の顧客は、サプライチェーン情報システムを含むサプライチェーンのデジタル化ツール一式を得ることができる。
例えば、ツァイニャオが提供するサプライチェーンデジタル化ツールの1つである「供応鏈控制塔(サプライチェーンコントロールタワー)」は、企業の計画や部品調達、生産、倉庫管理、物流といった11のシーンをカバー。さらに、サプライチェーンの各プロセスに分散して存在するシステムの一括可視化や異常の通知、スマート診断、意思決定補助、そして業務調整などの機能も備えている。
ツァイニャオの自動車業界向け物流デジタル化ソリューションの中で、デジタルサプライチェーン能力を応用したサプライチェーンデジタル化ツールの1つである「供応鏈控制塔」のイメージ
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最後に、ツァイニャオの物流デジタル化ソリューションを導入した2つの事例を紹介する。
1つは、格安電気自動車(EV)で知られる上汽通用五菱(ウーリン)との事例だ。ウーリンは22年、ツァイニャオと連携し、コストとリードタイムに基づいた完成車物流のスマート工程管理システムを設計・構築した。このシステムは、複数シーンに対応したアルゴリズムの統合モデルを構築することで、コストまたはリードタイムが最適な配送経路と運送会社を自動的にレコメンドおよび決定してくれる。同時に、アルゴリズムモデルを活用したデータ駆動型のアプローチによって、物流の目的地からの物流サービス、リードタイム、コスト管理における要求を、より正確かつ効率的に満たすことができるようになっている。
ツァイニャオのスマート工程管理システムを応用したウーリンの完成車物流の現場の様子
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もう1つは、工業自動化制御やハイエンド設備製造の大手である匯川技術(INOVANCE)傘下にある「匯川聯合動力系統(INOVANCE Automotive、以下匯川)」との事例だ。
匯川は、ツァイニャオと連携し、倉庫内原材料の自動調達、生産ライン配送、原材料箱から原材料の選別といった60以上の複雑な業務シーンに、物流デジタル化ソリューションを応用した。30以上の異なる類型の自動化設備が統合されており、6種類のAGV、十数種類の川上および川下における個別のサプライチェーンシステムとの接続も実現している。匯川はこのソリューションを「全工場無人物流ソリューション」としている。
ツァイニャオとの連携のもと、全工場無人物流ソリューションを導入する匯川の現場の様子
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センスタイム スマートコックピット専用AI製品を欧州で披露
IAA MOBILITY 2023に出展したスマート自動車プラットフォーム「商湯絶影(センスオート)」の展示ブース
image: SenseTime
中国の画像認識大手である商湯集団(センスタイム)傘下のスマート自動車プラットフォーム「商湯絶影(センスオート)」は2023年9月5日、世界の自動車産業にとって重要な都市であるドイツのミュンヘンで開催された「国際自動車&スマートモビリティー展(IAA MOBILITY 2023)」において、スマートコックピット専用のAI(人工知能)大規模モデル製品群を披露した。今回の披露では、その大規模AIモデルの中核となるコックピットブレーンのアーキテクチャーを大幅に改良している。
センスオートのスマートコックピット向け大規模AIモデル製品のシリーズは、大規模AIモデルシステム「日日新(SenseNova)」を基盤に、複数のセンサーを通じて得られる情報を組み合わせることで、乗車人員の意図を理解する仕組み。その上で、スマート意思決定システム「コックピットブレーン」を通じて、車内における運転の安全性確保、娯楽の提供、児童教育への対応、操作効率性の向上という4つの点から、「旅行ガイド」や「児童モード」「AIマニュアル」「疲労緩和」「健康診断」、そして「空中描画」といった、ユーザーが感じ取り、かつ体験もできる6つの機能を提供している。
スマートコックピット専用AI大規模モデル製品が備えるいくつかの機能のイメージ
image: SenseTime
センスオートは、2016年からホンダとの協業を開始して以来、7年間で中国国内外の自動車メーカー30社以上と強固な連携関係を構築。各社との連携を通じた、センスオートの製品搭載累計台数は3,600万台を超えているという。加えて、現時点で同社の製品が関わっている車種のうち、約20車種は中国国外向けとなっている。例えば、中国新興自動車メーカーである蔚来汽車(NIO)や高合汽車(HiPhi)などの国外進出を後押ししている。
NIOの車種「5シリーズ」欧州版(左)とHiPhiの車種「X」(右)のイメージ
image: SenseTime
最後に、センスオートの技術面での功績にも注目したい。同社が提唱する自動運転汎用アルゴリズム「UniAD(Unified Autonomous Driving)」の研究成果は、23年に開催された世界トップレベルの画像認識の学会「CVPR」で最優秀論文賞を受賞している。
UniADは、画像を由来とする物体の検出から追跡、マッピング、予測、そして計画までを、大規模AIモデルを支えるAI技術である「Transformer(トランスフォーマー)」に統合したフレームワークとなっている。このフレームワークは、従来と比較して、車両をはじめとする複数対象の追跡精度を20%向上、車両の経路予測精度を30%向上させているほか、経路予測の誤差を38%低減、経路計画の誤差を28%低減することに成功している。
23年に開催された世界トップレベルの画像認識の学会「CVPR」でセンスオートのチームが最優秀論文賞の表彰を受ける様子
image: SenseTime
UniADの量産は23年第4四半期からの開始を予定しており、同社の自動運転製品市場における競争力は今後さらに向上する見込みだ。同社の部品量産業務からの販売収入は直近の23年上半期、前年同期比で約6倍の増加、量産納入台数は39万台、そして累計搭載車種数は160以上となっている。これらの実績は、センスオートの自動車分野における経験と大規模AIモデル活用の強みが実を結んだ証左といえる。
作業効率20倍向上!? ファーウェイが鉄道AI検車システムを開発
華為開発者大会2023(HDC.Cloud 2023)にて、ファーウェイ常務取締役兼ファーウェイクラウドCEO(最高経営責任者)である張平安(ジャン・ピンアン)氏が鉄道業界向けのパングーを紹介する様子
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中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)のクラウド部門「華為雲(ファーウェイクラウド)」は2023年10月10日、鉄道業界を対象とした自社の大規模AI(人工知能)モデル「盤古大模型(以下、パングー)」の展開について発表した。中国には、100万両を超える貨車が存在し、その年間輸送量は50億トンにもなる。ファーウェイクラウドはパングーを活用し、貨車1両当たり1万個以上の部品をわずか十数分で検査完了できるAI検車システムを実現している。
鉄道レールの下に埋設されたTFDS(車両安全監視システム)の様子
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従来のレールの下に埋設されたTFDS(車両安全監視システム)では、検査員が各画像を詳細に分析する必要があり、もし検査室の検査員が故障の兆候を発見した場合、現場にいる検査員に故障部分の画像に関するフィードバックを行い、確認を求めるため、かなりの手間ががかかってしまう。例えば、1日当たり1000両が通過するターミナル駅を想定した場合、TFDSは400万枚の画像を生成することになる。これらの画像を1枚ずつ全て検査するとなると、260人の熟練検査員が必要となり、全体の検査に要する作業量は膨大となる。
そこで、ファーウェイクラウドは早くから、中国の国有鉄道大手「中国国家鉄路集団(CHINA RAILWAY、以下中国鉄路)」やスマート鉄路専門ソリューションプロバイダー「慧鉄科技(HUITIE TECHNOLOGY)」と連携。中国河南省に位置する鄭州北駅車両基地(中国鉄路鄭州局集団の直轄機関)の検査現場の1つを舞台とし、TFDSの故障画像スマート識別プロジェクトを推進してきた。
中国鉄路の運用する鉄道網の様子
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中国鉄路は22年12月、鄭州北駅車両基地にて、ファーウェイクラウドのAI検車システムの試験運用を開始。複数路線上に位置する6つのTFDS検知ポイントをアップグレードすることで、AIによる検車システムを初期的に導入した。同時に、AIが検知し警告を出した故障については、検査員の目で確認するダブルチェック体制も整えた。こうして、AIによる学習を経たTFDSは、収集した画像をリアルタイムでAI技術を駆使して分析し、貨車の様々なタイプの故障を自動的に識別できるようになっている。
TFDSを通じて撮影・収集された画像とそのAIによる分析状況が、検査員のコンピューターのスクリーンに表示される様子
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ファーウェイクラウドは、TFDS上に導入したAIによる学習に、パングーの視角事前トレーニングモデルを採用。加えて、このパングーを基盤とするAI検車システムは、大量のサンプルデータから自動的に部品の特徴を抽出することで、故障のパターンを認識することもできる。実際に、現場での運用を通じて精度を継続的に改善し、全体から部分、そして故障の詳細な特徴までを、段階的かつ高精度で識別できるようになっているという。
中国鉄路では、TFDS上にパングーを導入後、AIが全ての画像を漏れなくチェックし、潜在的な故障の可能性が確認できる画像のみを検査員に送信する仕組みを構築。これにより、検査員が画面上で確認する必要のある画像数は、400万枚から20万枚へと大幅に減少。検査員の作業負荷が大きく軽減され、作業効率が飛躍的に向上しているという。その作業効率に関しては、従来の20倍にまで改善されている。
検査員がAI検車システムを通じて、画像を検査する様子
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さらに、故障の見落とし率はゼロを維持し、無故障画像の除去率は95%以上となったほか、故障検出精度は98.26%から99.89%に向上しているという。10か月間の試験運用の結果、貨車の重大故障を中心に、400種類余りの故障をAIが自動検知できるようになっている。現在、このAI検車システムは中国鉄路の全国複数の局とその基地で段階的に試験導入が既に始まっている。
バイドゥの合弁ロボットカーブランド「極越」 ついに販売開始へ
ジーユェが発表した「極越01」
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中国インターネット検索最大手の百度(バイドゥ)と中国民営自動車大手の浙江吉利控股集団(ジーリー)の合弁自動車ブランド「極越汽車(ジーユェ)」は2023年10月27日、その車種「極越01」の販売を開始した。今回は、「極越01Max」と「極越01 Max Performance」の2つのグレードを発表し、価格は24.99万元(約512万円)から33.99万元(約697万円)と設定している。ジーユェは、21年3月にブランドを設立してから約2年半という短期間で、量産開始にこぎつけた。
ジーユェによれば、極越01は業界トップクラスのスマート化を実現しているという。同車種の全シリーズには、米半導体大手クアルコムの「Snapdragon 8295」と米半導体大手エヌビディアの「DRIVE Orin」を搭載し、スマート音声対話のクオリティーで業界最先端を誇っている。例えば、車外音声、完全オフライン音声、連続対話、4つの音声区域同時発話(システムが1台の車両の中の複数の乗車人員の音声を、それぞれ明確に識別してインタラクションを行う技術)といった様々な能力を実現している。
「極越01」のフロント座席部分の様子
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また、中国国内初の「純視覚(レーザーレーダーを使わず、高解像カメラのみを使用していること)」技術のアップグレードを通じて、ユーザーは、極越01の高度運転支援システムの中核となるポイントツーポイント誘導支援自動運転(PPA)機能(都市内もしくは都市間のある地点間の行き来を全過程で運転補助する機能)を車両入手後すぐに利用可能となっている。そしてジーリーの車両構造アーキテクチャー「浩瀚(SEA)」の優れた構造設計と安全体系に基づき、スマート自動車市場の新たなベンチマークとなることが期待されている。
「極越01」で採用されているジーリーの車両構造アーキテクチャー「浩瀚(SEA)」のイメージ
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バイドゥの自動車事業には、ジーリー、バイドゥ、ジードゥ、ジーユェという4社が主に関与している。それら4社の関係については、まずジーリーは自社で独自開発した車両構造アーキテクチャー「浩瀚(SEA)」を基盤として、研究開発、製造、サプライチェーンでの強みを発揮し、完成車の製造を担当。バイドゥは、スマートキャビンやスマート運転、そしてAI(人工知能)生成式対話プロダクト「文心一言(ERNIE Bot)」などのAI技術をジードゥに提供。ジードゥは、SEAという基盤を元として、バイドゥのAI技術について車両に適した形の製品化と工程プロジェクト化(生産規模化)を行い、ジーユェに提供。そして、ジーユェはブランドの運営と市場展開を担当するという分担になっているとされる。
上海市嘉定区にオープンしたジーユェのブランド納車センター
image: Invest Jiading
現時点で、ジーユェは中国全土の20都市以上で40店舗以上の実店舗ブランド体験センターを開設済みだ。同時に、アフターサービスネットワークの整備も加速させており、全国で直営アフターサービス店舗を30カ所以上、認定アフターサービス店舗を40カ所以上運営し、30都市以上の中国重点都市をカバー。23年末までには、同社のアフターサービスネットワークは120都市以上に拡大し、顧客の利用に対して全国の主要都市をほぼ網羅する形でサービスを提供していく。24年までには、販売店舗とサービスセンターを合わせて、400店舗以上に拡大する計画だ。