(2022年にSK E&Sが買収。2023年6月追記)
スペースは30台分、電力量は1台分
―まず、EverCharge創業の経緯を教えてください。
起業は、アイデアからWidget(架空の製品)を作るのではなく、必要性があり、自分自身が最初の利用者になるサービスでするべきだと私は考えています。
EverChargeは、2013年に私が電気自動車を購入したことから始まります。当時、私は分譲マンションに住んでいましたが、充電方法について深く考えずに電気自動車を買いました。購入後に、マンションの駐車場で充電しようと思い、電気室でアンペア数を確認したところ、使える電力量は電気自動車1台分しかありませんでした。マンションには、約30台分の駐車スペースがありましたが、私の車を充電したら、残りの電気自動車は充電できなくなります。
これがきっかけになり、集合住宅で住人全員が電気自動車を充電できるようにする技術と方法を考えるようになりました。そして、当社の充電ステーションの基盤である「SmartPower」を開発し、電気自動車の普及に貢献することをミッションにEverChargeを創業したのです。
―EverChargeのサービスについて聞かせてください。
当社はCharging-as-a-service(サブスクリプションモデル)ではなく、充電サービスを提供しています。
依頼を受けるとまず、現場に出向き調査を行い、充電ステーションを設置します。ドライバー毎に専用の充電ステーションを提供し、対象車両の必要電力量などの情報を取得します。各充電ステーションが取得した情報は「SmartPower」に集約されます。「SmartPower」が充電に使える電力を一括管理し、集約した情報に基づいて負荷を分散させます。
「SmartPower」は、効率的に電力を割り当てることで、複数車両の充電を実現するシステムで、レポート・請求・リモート診断も行うプラットフォームです。「SmartPower」の技術は、当社が特許を取得しています。
―どんなビジネスモデルをとっていますか。
充電ステーションの販売と設置をワンセットで提供し、加えて運用も担います。運用におけるビジネスモデルは、住人専用の充電ステーションとして導入する場合や、利用者は使った分だけ支払う充電サービスとして提供する場合などがあり、ケースバイケースで変わります。
―競合他社との違いはどこにありますか。
広義にみれば同類といえる事業やサービスはありますが、競合は少ないです。当社は、マンションやビルなど、特定の人が利用する専用駐車場で私設する充電ステーションです。これが他社との大きな違いになっていると思います。
「鶏が先か、卵が先か」充電スタンドと電気自動車の普及
―海外、特に日本市場への参入予定はありますか。
米国以外では、カナダ全域で事業を展開しています。カナダは法律など様々な面で米国と大きな違いがなく、通貨が違う程度なので、スムーズに進みました。
日本市場も参入を検討するために調査を行いました。有望な市場ですが、電気自動車の普及率が当社にとって十分ではなく、もう少し上昇すれば参入の実現性が高まると考えています
日本における電気自動車の普及と、当社の日本市場参入は、ある意味、「鶏が先か、卵が先か」という状態です。もし、充電スタンドを含めたビジネスモデルを検討している日本の自動車メーカがいらっしゃれば、EverChargeは一助になれると思います。
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