Image: Romolo Tavani / Shutterstock
地球温暖化、気候変動への対応として、二酸化炭素(CO2)の排出削減や、電動化、蓄電、エネルギーの効率利用など、Climate Tech領域の世界的トレンドとスタートアップ投資はますます加速している。脱炭素社会の実現に向け、国内外の脱炭素テクノロジー(ZET:Zero Emission Technology)関連スタートアップとの協業などをテーマに、3月に開催した「ZET New Japan Summit 2023 Kyoto」には、国内・海外のスタートアップ40社が登壇した。各社の事業概要を紹介する。日本スタートアップ第4回は、DeepForest Technologies、バイオーム、アスエネ、OOYOOの4社。

【DeepForest Technologies】ドローンとAIで森林の情報を可視化する

Image: DeepForest Technologies HP

設立年:2022年
URL:https://deepforest-tech.co.jp/

 DeepForest Technologies(本社:京都府、英語表記:DeepForest Technologies Co., Ltd.)は、ドローンデータからの森林解析技術開発およびカーボンクレジット関連業務を展開しているスタートアップ。ドローンによる撮影データと人工知能(AI)を用いて、森林の樹木を識別する技術を開発している。林業などに取り入れることで、炭素吸収量の推定や生物多様性の保全、環境問題などの解決に活かしていくことを目指している。

 同社のソフトウェア「DF Scanner」は、誰もがドローンで簡単に、撮影データから森林情報を解析するもので、木1本単位で樹種やサイズを推定(測定)できる。マンパワーによるフィールド調査より圧倒的に時間を削減することが可能で、20haの調査も1日で終えることができるという。また、炭素蓄積・吸収量を把握する機能を搭載することによって、森林管理者がドローンの自動操縦から画像処理、樹種・サイズ測定と炭素蓄積・吸収量の把握ができるようにする。

 DF Scannerの活用事例として、「普段の森林管理への活用」と「森林カーボンクレジットマーケットでの活用」がある。

 森林管理への活用においては、伐採管理の効率化によって在庫に基づき必要な材を伐採適正価格での売買につなげられる。自治体からの間伐補助金手続き等においてドローンデータの提出で検査完了といった間伐検査の簡略化と、効率的かつ正確な評価が可能になる。

 森林カーボンクレジットマーケットでの活用においては、森林管理者が炭素排出権取引マーケットに参画できるようになり、森林管理と精度の高い排出権取引につなげていける。

【バイオーム】生物多様性の保全を社会の当然にするプラットフォーム構築

Image: バイオーム HP

設立年:2017年
URL:https://biome.co.jp/

 バイオーム(本社:京都府、英語表記:Biome Inc.)は、生物情報アプリの開発・運営や生物情報可視化システムの提供、環境コンサルティングを展開するスタートアップ。生物多様性の保全と経済的合理性を両立させるモデルを構築するため、「環境保全をビジネスにすること」にチャレンジしている。世界中の生物分布ビッグデータを収集・整理し、保全を加速させるためのプラットフォーム構築を目標に掲げている。

 CO2排出量と違って数値化が難しい生物多様性の課題を踏まえ、デジタル化(数値化)したNature-based Solutions(NbS:自然を基盤とした解決策)を加速させるプラットフォームを提案。いきものコレクションアプリ「Biome(バイオーム)」は、写真を撮った季節と場所から生物の名前を判定する最新の生物名前判定AIを備え、利用者はゲーム感覚で楽しみながら生物多様性を調査し、生物の状態を記録することができる。

 アプリを通じて生物分布情報を収集・把握につなげ、外来種や希少種の動向把握、気候変動の影響調査、生態系サービスの数値化、自然の観光資源化など様々な目的に活用している。企業や行政が自然環境の保全に取り組む際に必要不可欠なサービスを目指している。

 環境省の連携として「気候変動いきもの大調査」がある。地球温暖化の影響で分布が変化している可能性がある生物をアプリで記録し、温暖化の影響を明らかにし、啓発と脱炭素の取り組みにもつなげる。

「誰でも環境調査ができる」をコンセプトに、Biomeにも搭載されたAIをコアにさらに高度な情報を記録できるようになった環境調査のための新アプリ「BiomeSurvey」も展開している。

【アスエネ】CO2排出量見える化・削減・報告クラウドサービスを展開

Image: アスエネ HP

設立年:2019年
URL:https://earthene.com/corporate

 アスエネ(本社:東京都、英語表記:Asuene Inc.)「次世代によりよい世界を」をミッションに、CO2排出量見える化・削減・報告クラウドサービス「アスゼロ」や持続的なサプライチェーン調達のESG評価サービス「ESGクラウドレーティング -ECR-」などClimate Tech領域のサービスを展開している。

「アスゼロ」は、複雑だったCO2排出量算出業務を簡単にサポートするプラットフォーム。温室効果ガス・CO2排出量の算出・可視化や、削減・カーボンオフセット、Scope1-3のサプライチェーン排出量の報告・情報開示を支援し、企業の脱炭素の取り組みを後押しする。

 また、シンガポールに現地法人「Asuzero Singapore Pte. Ltd.」を2022年11月設立し、カントリーマネジャーを配置。航空・宇宙系の製造業の上場企業/STエンジニアリング社をはじめとする海外企業の「Asuzero」導入を加速させている。

「ESGクラウドレーティング -ECR-」は、GRI(Global Reporting Initiative)や国連グローバル・コンパクト(UNGC)など、国際的なESGフレームワークに準拠した、信頼性が高いレーティングとスコアリングを通じて、企業のESG評価を可視化するサービス。2023年4月から、有価証券報告書でもサステナビリティ情報の開示が義務化され、企業のESGの取り組みの可視化が必要になっている。2023年3月には英語版をリリースし、グローバルでのシステム利用が可能になった。

 再エネ調達コンサルティングサービス「アスエネ」を含め、企業の脱炭素・ESG経営を支援し、サステナブルな社会の創造への貢献を目指している。

【OOYOO】クリーンエア技術で持続可能な未来を 低コスト、高効率CO2回収

Image: OOYOO HP

設立年:2020年
URL:https://www.ooyoo.co.jp/

 OOYOO(ウーユー、本社:京都府、英語表記:OOYOO Ltd.)は、クリーンエア技術で持続可能な未来を実現するため、空気やその他のガスを分離・精製するガス分離の技術の開発と実用に取り組むスタートアップ。京都大学と英ケンブリッジ大学で育まれた、二酸化炭素(CO2)の分離・回収技術を活かし、中小企業の工場などでの導入を視野に事業を進めている。

 同社の技術は、高性能な分離膜の製造技術と、小型化により移動可能または携行可能なガス分離精製技術が特徴で、一般的な同様の技術よりコストを抑えることができるという。CO2排出量1トンあたり2,000円のレベルで炭素回収を実現していき、大規模排出事業者だけでなく、解決策を持たない小規模な排出事業者にも対応できるような展開を視野に入れている。

 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)グリーンイノベーション基金事業の「低圧・低濃度CO2分離回収の低コスト化技術開発・実証」の分野で採択された「分離膜を用いた工場排ガス等からのCO2分離回収システムの開発」に住友化学と共同で取り組んでいる。実証プロジェクトを広げていく予定で、酒蔵など小規模事業者の実証実験パートナーを募集している。

 このほか、空気中の有害物質を取り除き、大気中の埃、花粉、バクテリアなど多種類の物質の除去に使用できるクリーンエアフィルターを開発。また、空気を吸気し、高濃度の酸素(最大90%の酸素を含む)を排出する、主に肺疾患のある人向けの医療機器であるポータブル酸素濃縮器(POC)の開発なども行う。

 クリーンエネルギーやきれいな空気をつくる未来のデバイスの核となることで、消費者や環境への貢献を目指している。



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