【エコサミットCEO】欧州が牽引するグリーンテック、日本企業の連携可能性は?

【エコサミットCEO】欧州が牽引するグリーンテック、日本企業の連携可能性は?

CleanTech / Ecosummit
2020/10/28
2015年に国連本部で開催された国連サミットで「持続可能な開発目標 (Sustainable Development Goals: SDGs)」を含む「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されてから5年が経過した。日本でも、既に多くの企業がSDGsを支持し、具体的な取り組みが始まっている。TECHBLITZでは今回、SDGs分野で先行すると言われる欧州におけるスタートアップと大企業の連携の現状を探るべく、ドイツ・ベルリンを中心に、持続可能な社会の実現をテーマにスタートアップカンファレンス「Ecosummit」を開催するヘスCEOに取材を行った。

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欧州発グリーンテック・スタートアップカンファレンス

――まず「Ecosummit」の概要について教えてください。

 Ecosummitは、国連の持続可能な開発目標(SDGs)のひとつである「2030年までにカーボンニュートラルな社会の実現」に向けて活動するスタートアップカンファレンスです。具体的には、エネルギー、モビリティ、スマートシティ(持続可能な都市)の3分野のスタートアップと、スタートアップへの投資や連携を模索するVC、事業会社に対し、ピッチの機会とコミュニケーションの場を提供しています。  

Jan Michael Hess
Ecosummit
Founder & CEO
ドイツ・マンハイム大学で経営学の学位を取得。デジタルマーケティングを展開するDigitas Pixelparkで、大手音楽レーベルをはじめ様々なクライアントのオンライン戦略の策定やプロジェクト管理を担当。2000年にMobile Economyを創業。モバイル広告スタートアップや大手通信キャリア、仮想移動体通信事業者に対しアドバイスや新規事業開発支援を実施、日本企業との連携をサポートした経験も持つ。2010年より、スマートグリーンスタートアップ、投資家、事業会社が一堂に会するカンファレンス「Ecosummit」を主催。これまで5カ国で20回のサミットを開催し、持続可能な社会の実現に寄与するエネルギー、モビリティ、スマートシティ分野のスタートアップのビジネスを支援してきた。
 2010年の初回から数えて、ベルリンを中心にこれまでロンドン、パリ、アムステルダム、ストックホルムなど欧州の主要都市で合計20回を超えるカンファレンスを開催してきました。2019年には約400名の参加者を集めるまでに成長しました。

――COVID-19の感染拡大を受け、今年はオンラインカンファレンスを開催していますね。オンライン開催の反響はどうでしょうか?

 パンデミックによって、オフラインを中心としたビジネスモデルをオンラインへと大きく転換しました。

 3月にオフラインイベントの中止を決定して以降、Zoomを利用し、これまで毎月のようにオンラインでカンファレンスを実施してきました。これまでのところ、オンラインカンファレンスの参加者からはポジティブなフィードバックをいただけています。スタートアップと投資家、スポンサーの間でも、チャットを通した活発なやりとりが交わされています。

欧州がSDGsランキング上位を占めている理由

――2020年6月に、国連の持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN) が2020年度の「Sustainable Development Report」を発表しました。同レポートの「SDGs Index」ランキングでは上位15カ国を欧州諸国が占めています(日本は17位)。欧州がこの分野で特に先行している背景にはどのような要因がありますか?

 欧州諸国の間にもばらつきがありますが、総じて欧州はスタートを切るのが早かったというのがひとつ理由として挙げられます。一部の欧州の国々は、気候変動の緩和、持続可能な社会の実現へ向けて先んじて舵を切りました。

 ただし、SDGsでは幅広く、多くの目標が設定されていることに注意が必要です。たとえばエレクトロモビリティだけを切り取ったならば、トップを走るのは米国のテスラであって、ドイツの自動車メーカーはむしろ後塵を拝しています。

 その一方で、一部の国は早い段階で電気自動車(EV)の購入に対し税制優遇措置を設けました。その結果、たとえばノルウェーがその代表例ですが、新車購入台数に占めるEVの割合が他国に比べて非常に高くなっています。

 再生可能エネルギーについて言及すれば、ドイツが2000年に太陽光発電による余剰エネルギーの買取制度を強化したことは先見の明があったと思います。電気代よりも買取価格が高くなったことで、再生可能エネルギーの普及が一気に促されました。それが現在の最終エネルギー消費に占める再生可能エネルギー比率の高さにつながっています。国連の持続可能な開発目標には、他にも多くの領域がありますが、再生可能エネルギーの分野に関しては、ドイツはアーリームーバーであったといえます。

――Ecosummitのスタートも、2010年と早かったですね。名だたる企業がスポンサーとなっていますが、当初からこれらの企業の関心は高かったのでしょうか?

 2020年のカンファレンスには、過去最高となる39社のスポンサーから支援を得ることができました。2010年にEcosummitをスタートさせた当時は、ユーティリティ企業、電力会社などエネルギー業界から数社、スポンサーとして参画いただきました。その後、Ecosummitの知名度が上るにつれ、またサステナビリティの重要性に対する認識が高まるにつれ、徐々にスポンサー数が増えてきたのです。

――過去に参加したスタートアップや投資家、事業会社との間で、具体的な連携に至った事例があれば教えてもらえますか?

 これまで、多くのスタートアップが、Ecosummitを通して出資者を見つけてきました。出資者のみならず、新たな顧客獲得に至った例も少なくありません。顧客になるとともに、出資をするケースもあります。

 ひとつだけ例を挙げれば、Sonnen(ゾンネン)という家庭用のエネルギー貯蔵バッテリーを開発、生産しているドイツのスタートアップがあります。2010年に創業し、2012年の末にシリーズAの資金調達を実施しました。その後シリーズEまで5回の資金調達を行い、累計調達額は150Mユーロを超えましたが、出資者の多くをEcosummit経由で見つけています。最終的には2019年に、Royal Dutch Shellが同社を買収しました。買収額は公表されていませんが、非常に大規模なM&Aとなりました。

日本企業と欧州スマート&グリーンスタートアップの協業事例

――スタートアップと日本企業との協業例はありますか?

 Ecosummitに登壇したスタートアップの数はこの10年で500社近くに上ると思いますが、私が把握できている限りでも、そのうちの何社かが既に日本企業とビジネスを行ったり、出資を受けたりしています。

 たとえばドイツのNext Kraftwerke(ネクスト・クラフトヴェルケ)というバーチャル・パワープラント(VPP)会社です。同社のソフトウェアにより、あらゆる規模の再生可能エネルギー設備で、容易にエネルギーを管理、制御、販売することができるようになります。すでに同社は日本の企業と連携しています。[編集注:東北電力や大阪ガスとの実証実験、東芝エネルギーシステムとの技術・販売提携に関する報道がある]

 イギリスのMoixa(モイクサ)社は、2014年にロンドンで開催したEcosummitに登壇したスタートアップです。もともとはバッテリーを開発していましたが、現在はバッテリーマネジメントソフトウェアの提供に特化しています。日中そして夜間の電力ピークや需給バランスを判断し、電力網から電力を取り込み、あるいは送り込むことができるようになります。Moixaは日本の顧客を獲得するとともに、伊藤忠、そしてホンダなど日本の企業からの出資も受けています。

 ホンダは、ベルリンのubitricity (ユビトリシティ)にも出資していますね。街中の既存の街頭に簡単に充電装置を設置できるという、革新的なEV充電ソリューションを展開している企業です。同社は、2011年に初登壇して以来、ほぼ毎年のようにEcosummitに参加しています。

 直近のオンラインカンファレンスでは、WePower (ウィーパワー) という、ブロックチェーン技術を活用した再生可能エネルギーのオークションプラットフォームを展開しているリトアニアのスタートアップがピッチを行いました。同社は丸紅から融資を受けるとともに、事業面でも連携しています。

 また、数は少ないですが、過去に日本の商社のクリーンテック投資担当者がEcosummitでプレゼンテーションを行ったことも、日本のスタートアップがピッチを行ったこともありますよ。日本のVCにも時々参加いただいています。

 一部の日本の大企業は、新たなテクノロジーや製品を日本に持ち帰ろうと、あるいはスタートアップとの連携機会を探ろうと、欧州でも早くから積極的に活動していますね。

スタートアップとの連携活動は長期戦

――これから欧州のスタートアップとの連携機会を模索しようという日本企業にアドバイスはありますか?

 駐在員を送る、エージェントを利用するなどアプローチの仕方は様々ですが、まずは、時間をかけてネットワークを築き、情報を収集することですね。それから、どのような企業と提携したいのか、どのようなプロダクトが必要なのか、条件を明確にすることが大事だと思います。

 もうひとつの方法は、VCファンドにLPとして出資を行うこと。欧州のVCとの関係を築ければ、欧州のスタートアップに関する情報の入手も容易になると思います。

 自力でのリサーチ、エージェント、あるいはVCからの情報をもとに、スタートアップを特定できたならば、お互いを知るというプロセスに入るわけですが、従来であれば飛行機に乗ってわざわざヨーロッパまで来なければならなかったところ、昨今では多くのプロセスをビデオ会議で代替することができます。

 いずれにしても、大事なことは長期戦を覚悟し、長期的な視野を持って活動することです。そのためにも、まずは顧客として製品やサービスを利用してみて、よい関係を築けたところで、その後に出資を検討するというのも悪くないパターンだと思います。いろいろな可能性がありますが、いずれの場合においても、当該スタートアップにとって自社がよいパートナーであるということを納得してもらう必要があります。それまで日本企業との接点がまったくなかった企業の場合は特に時間をかける必要があるかもしれません。

 過去、日本企業そして日本のビジネスパーソンと一緒に仕事をした私自身の経験からも、ヨーロッパのスタートアップには、日本企業との連携を勧めたいですね。もしエネルギー、エレクトロモビリティ、スマートシティ分野のスタートアップのスカウティングに関心を持っている日本企業があれば、Ecosummitに参加していただければと思います。多くの際立ったスタートアップと知り合うチャンスになるはずです。

――これまでベルリンを中心に欧州の主要都市でカンファレンスを開催されていますが、「Ecosummit Japan」の予定はありませんか?オンラインミーティングの普及が一気に進んだ今だからこそ、国境を超えたカンファレンス実現へのハードルが一段下がったのではないかと思います。

 まだ検討段階ですが、実は前々から温めてきた構想です。日本の事業会社や投資家を招き、既に日本で事業を展開する、または関心を持つヨーロッパのスタートアップと引き合わせることができないだろうかと考えています。

 欧州のスタートアップ10社程度、オープンイノベーションに積極的な、あるいは投資意欲を持つ日本企業10社程度に、それぞれピッチを行ってもらい、チャットを通じて連絡先などを交換してもらえればと思います。場合によっては、日本企業からのLP出資を望むヨーロッパの投資ファンドがプレゼンテーションを行うというケースも考えられます。もし双方から良いフィードバックを受けることができれば、定期開催も検討したいと思います。

 もちろん、欧州市場への進出を計画している日本の有望なスタートアップがあれば、逆のパターンでの開催も考えられます。

――最後に、今後の展望についてお聞かせください。

 Ecosummitを少なくとも10年は継続していきます。

 この後の10年は、「人類全体」「地球全体」にとって、非常に重要な時代になると考えています。社会経済の構造、私たちの働き方、生産のあり方、生活様式をポジティブに変化させていかなくてはなりません。カーボンニュートラルな世界の実現に向けて、一層の努力をしていかなくてはなりません。その際、エネルギー、エレクトロモビリティ、スマートシティという3分野は、特に重要になります。

 地球に優しい、革新的な技術や製品を持つ、若く、小さなスタートアップは、今後、大きく成長し、私たちの経済、環境、生活にポジティブな影響をもたらす可能性を秘めています。これらの企業の成長を支援することで、地球に前向きなインパクトを与えることができます。そのためにも、これらのスタートアップが、新たに人材を雇用し、資金を調達し、多くの顧客を獲得し、製品の開発と改善を継続していくことができるよう、Ecosummitなりのやり方で、バックアップしていきたいと考えています。

 その際、「協業」が大事なキーワードになります。人・モノ・カネの資源に限りのあるスタートアップがビジネスを推進していくためには協業が不可欠です。適切な技術を持った企業が、適切な人または企業と、適切なタイミングで協業するためには、どこで、誰が、何をやっているのかという情報が発信され、しかるべき相手の元に届かねばなりません。

 Ecosummitは今後も、スタートアップのイノベーションが「発見」され、商業化され、収益化されるというプロセスを後押しすることに専心していきます。

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