米国では、商品販売後一定の期間内に、他店でより安い価格が提示されると、小売店やクレジットカード会社が差額を返金する「最低価格保証」制度が設けられているが、十分な周知と普及には至っていない。この最低価格保証制度の差額返金プロセスを自動化するサービスを立ち上げたのがスタートアップEarny。今回は共同設立者兼CEOのOded Vakrat氏に話を聞いた。

Oded Vakrat
Earny
CEO
2009年、ハイファ大学卒業(経営、政治・経済専攻)。2008年より2013年までイスラエル海軍勤務。2015年8月にEarnyを創業し、CEOに就任。

最低価格との差額返金による消費者保護サービス

―Earnyの事業内容を教えてください。

 Earnyはユーザーが何も行動しなくても最低価格との差額を回収できる、自動的な価格保護システムです。Earnyのユーザーが商品を買って領収書を得るたびに、Earnyはそれをチェックします。そして、他店でより安い価格を探し、見つけたときには、利用者が購入した小売業者あるいはクレジットカード会社に請求して、利用者に差額を返金するのです。

 ですからEarnyの利用者がすることは、何でも自分が欲しいものを購入することだけです。オンライン・オフライン問わず、我々がより安い価格を見つけた場合は差額を返金します。このシステムを利用し、我々は2年間で急成長を遂げました。今、何百万ものユーザーが数千万ドルを取り戻すのを手助けしています。

―安い価格をどうやって見つけていますか?

 我々は独自の価格追跡システムを構築しています。さまざまな種類の価格設定方法を使用して価格を予測しモニタリングします。我々は、ある場合には公のデータを使用しますし、ある場合には商品に関するユニークな値付けにダイレクトにアクセスしたりします。

―キャッシュバックとは異なるのですか?

 我々は、Earnyをキャッシュバックアプリには分類していません。キャッシュバックとは異なり、我々は消費者に、買物をする自信や意欲を与えるからです。彼らがある商品に支払いすぎたなら、我々は彼らが事後的に差額を得ることを保証するのです。

 ですから我々が手がけているのは、消費者保護サービスです。小売価格の保証、クレジットカードの価格の保証、そしてそれ以外にも今後まもなく実用化するいくつかのサービスを提供します。

カード会社や小売業者とのWin-Win

―Earnyは小売業者にとって脅威になりませんか?

 彼らは返金せねばならず、また他社と価格をいつも競っていなければなりません。我々は小売業者やクレジットカード会社と緊密に連携しています。本当の消費者志向であろうとする会社なら、我々のようなサービスを利用する意義が分かっているからです。つまり、我々はきちんと消費者に差額を返しますが、同時に、顧客維持を図り、顧客満足度の向上に努めています。

 データを見ると、Earnyや小売業者から差額を受け取った場合、消費者の購買意欲は強まり、また次の行動に移ります。彼らはより頻繁に買物をするようになり、消費額を増やします。つまり、Earnyの利用者は購入という行為に満足しており、他に安い品が見つかったからといって自分が買った商品を返品するわけではありません。購入後に価格が下がるならばEarnyが差額を返してくれると知っているから、欲しい物を次々に買うわけです。それは小売業者にとっても価値あることなのです。

―どのようなビジネスモデルですか?またクレジットカード会社や小売業者との提携はどのように行っていますか?

 我々はユーザーが手に入れる差額の25%をいただいています。

 そして我々は小売業者やクレジットカード会社と協力しています。すなわち、我々は特定のクレジットカードに申し込むことを勧めます。現在のところ、ウォルマートとシティバンクと密接に連携しています。我々は消費者にウォルマートで買物をすることを勧めており、彼らは90日間の価格保証を提供しています。またシティバンクは、消費者に価格保護を利用することを勧めており、その利益は大きいものです。さらに、我々は現在トップ33の小売業者からの契約に関与しています。ウォルマート、ベストバイ、ターゲット、メイシーズ、アマゾンなどです。

連携先を増やしつつ、旅行や保険分野にも進出予定

―Earnyの起業に至る経緯を教えてください。

 私はイスラエルで生まれ育ちました。7年間の海軍時代を経て、起業することを決断し、3人の起業仲間で4年以上一緒に働いてきました。

 価格保証の重要性を実感したのは、我々がアメリカに移り、ある華やかなイベントに招待されたことがきっかけでした。ブレザーを買ったところ、購入から数週間後に価格が65ドル下がったのです。そこでクレジットカード会社の価格保証を試したところ、非常に複雑で非効率的なプロセスを経ることになりました。

 具体的には、約3週間にわたる電子メールやファックスや電話でのやりとり、写真やスクリーンショットなどです。我々はその問題性を痛感するとともに、非常に大きなマーケットになりうると気づきました。消費者は価格保護について無知ですが、大きな利益を生み出す市場にもなると考えました。私たちは、こうして価格保証を自動化する技術を構築することを決断し、約3年前にEarnyを立ち上げたのです。

―海外戦略や日本企業との連携について考えを聞かせてください。

 我々が現在、焦点を当てているのは米国市場だけですが、データを収集し、世界規模で拡大する準備もしています。実際、グローバルに拡大したいと考えるいくつかの小売業者やクレジットカード会社と協力しています。

 日本などでは価格保証そのものが存在していませんが、そのような中立市場に進出することで、消費者にとって非常に大きな利益を生み出せると信じています。小売業者、銀行、およびクレジットカード会社と連携し、適切な時期に、アジア市場、特に中国や日本などに進出したいと考えています。

―将来のビジョンは?

 まもなく、旅行や保険契約、毎月の支払いのような新しい分野に拡大していきます。また我々は、世界でナンバーワンの消費者擁護サービスになりたいと思っています。Earnyを自分の携帯電話にインストールすれば、余分な支払額を取り戻してもらえるので、世界中どこでも必要なものを購入できるということを消費者に知ってもらいたいのです。アメリカの買物客、日本の買物客、日本のクレジットカード所有者、それらの誰に対しても、我々はベストの価格を約束します。




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