2015年に設立されたDeepScaleは、自動運転車向け認識技術(パーセプション)システムを開発するスタートアップ。全レベルの自動運転車と多様なデバイスに対応可能な、汎用性の高いシステム提供を目指す。今回はCEOのForrest Iandola氏にインタビューした。

Forrest Iandola
DeepScale
Co-Founder & CEO
2016年カリフォルニア大学バークレー校卒。在学中からディープラーニングに関する研究論文を多数執筆。2015年にDeepScaleを共同創業し、CEOに就任。

自動運転車の認識知覚技術にフォーカスしたシステムを開発

―DeepScaleのビジネスモデルを教えてください。

 DeepScaleは自動車メーカー向けにソフトウェア開発、ライセンス供与している、いわばOEMや一次部品メーカーです。特徴は自動運転車の認識技術(パーセプション)に特化している点です。LiDARセンサーやレーダー、カメラなどの車載デバイスから取得した情報から、ディープニューラルネットワークを用い、道路や周辺状況をリアルタイムに認識できる車の知覚技術を構築するソフトウェアを開発しています。これまで自動車の認識・ビジョンの分野では、カメラのデータしか扱っていませんでした。我々はディープニューラルネットワークとマシンラーニングを使って、レーダーやLiDARにも対応できるようにしました。

―他の自動運転車向けシステムとの違いは何ですか。

 自動運転車に必要な要素には、車の状況を把握して安全を確保するためのセンサー、マッピング、認識技術があります。それから、モーションプランニングとコントロール。こういった多様な要素のうち、DeepScaleはリアルタイムで作動する認識技術を重点的に扱っています。

―DeepScaleならではの強みはありますか?

 DeepScaleなら、ドライバーアシスト機能を搭載したレベル2の車でも、自動化レベル4や5という自動運転車でも対応可能です。我々が扱っているのは、あくまで認識技術なので、レベルが上がっても共通する要素が多いのです。当社のシステムは多様なセンサーにも柔軟に対応しているので、複数のレーダーやカメラが搭載された車でも、データを取り込み、質の高い結果を出すことが可能です。DeepScaleのように、カメラだけでなく、レーダーやLiDARにも対応するディープニューラルネットワークは少ないでしょう。

―なぜ自動運転車にシステムが必要なのですか。

 歩行者や道路上の障害物を把握するには、高度な正確性が欠かせないからです。移動する物体の位置や動きを予測しなければなりませんから。これに対し、スタンドアロン型のソリューションを持つ企業を、私は知りません。1つの要素、それもパーセプションにフォーカスすることで、あらゆるレベルの自動運転車にソリューションを提供できると考えました。

独自のディープニューラルネットワーク

―AIやマシンラーニングもこのシステムに利用しているのですね。

 ディープニューラルネットワークは、マシンラーニングやAIの一種です。我々はそれが最先端だった数年前から活用してきました。できるだけコンピューターに負担をかけずにLiDARから情報を取り込めるニューラルネットワークの構築、カスタマイズに尽力し、そして何よりも、ニューラルネットワークのすべてのパラメータが正確になることを重視してきました。

―処理スピードも重要ですか。

 もちろんです。自動運転アプリケーションはリアルタイムでなければ、意味がありません。赤信号を通り過ぎてから、赤だと認識しても遅すぎます。だからこそ、我々は運転手アシスト機能のある車に多く見られる、小型のプロセッサーに注力しています。今市場に出ている車に搭載されるプロセッサーは携帯電話並みです。それでも、大量の情報をリアルタイムで処理できるように、当社独自のディープニューラルネットワーク・ライブラリを一から作り上げました。

―LiDAR以外のセンサーにも対応しているのですか?

 もちろんです。今、自動車業界では、どんなセンサーセットを使うかが議論の焦点になっています。私自身は、センサーの種類が多いほど、安全性が高まると考えています。カメラがうまく作動しない暗闇でも、LiDARやレーダーなら認識できます。ただ、LiDARはまだ非常に高価ですし、まだ搭載車も多くはありません。ですから、今は低価格センサーセットにも数多く対応しています。自動運転のレベルを問わず、そしてどんなLiDARを使っていても、我々のシステムなら最大限の正確性を引き出すことができます。

今後のカギは、完全自動運転化のタイミング

―今後の自動運転車市場はどうなると考えていますか。

 最も重要なポイントは、完全自動化のタイミングがいつ市場に到来するのか、ということです。レベル1から3の自動運転車は継続して自家用車として利用されると思います。レベル4や5の自動運転車はおそらく、無人運転車やタクシーとして運用されることになるでしょう。多くのレベル4や5の自動運転車が道路を走行するタイミングはまだ先だと考えます。ですからすでに私たちは販売され、今後も進化していくレベル2および3の車へも利用できるテクノロジーを見つけられたことを幸運だと思っています。

―日本市場にも参入していく予定ですか?

 もちろんです。現在も日本の部品製造企業との取引がありますが、彼らはDeepScaleを高く評価してくれています。今、日本企業とともに、新しい知覚認識技術の開発に取り組んでいます。日本の企業は、歴史的にも信頼性が高いですし、販売サイクルが速いのも魅力的です。

―最後に、今後のビジョンをお聞かせください。

 2、3年以内に、街中で目にする自動車すべてにDeepScaleのソフトウェアが搭載され、安全に走行している光景を見ることです。



RELATED ARTICLES
【自動運転トレンドレポート】高度な自動運転の社会実装を牽引する有望スタートアップをご紹介
【自動運転トレンドレポート】高度な自動運転の社会実装を牽引する有望スタートアップをご紹介
【自動運転トレンドレポート】高度な自動運転の社会実装を牽引する有望スタートアップをご紹介の詳細を見る
介護業界の課題をデジタルの力で解決へ 介護DXに取り組むウェルモ
介護業界の課題をデジタルの力で解決へ 介護DXに取り組むウェルモ
介護業界の課題をデジタルの力で解決へ 介護DXに取り組むウェルモの詳細を見る
移動のビッグデータを収集・解析 スマートドライブが見据える未来の形
移動のビッグデータを収集・解析 スマートドライブが見据える未来の形
移動のビッグデータを収集・解析 スマートドライブが見据える未来の形の詳細を見る
「京都発、AI活用スタートアップ」 トヨタ導入の製造業向けAIから仏教対話AIまで
「京都発、AI活用スタートアップ」 トヨタ導入の製造業向けAIから仏教対話AIまで
「京都発、AI活用スタートアップ」 トヨタ導入の製造業向けAIから仏教対話AIまでの詳細を見る
モーションプランニングで衝突回避 Realtime Roboticsの産業用ロボット向け自動経路生成技術
モーションプランニングで衝突回避 Realtime Roboticsの産業用ロボット向け自動経路生成技術
モーションプランニングで衝突回避 Realtime Roboticsの産業用ロボット向け自動経路生成技術の詳細を見る
ロボットが働き、人が統治する 物流倉庫向けソリューションのPlus One Robotics
ロボットが働き、人が統治する 物流倉庫向けソリューションのPlus One Robotics
ロボットが働き、人が統治する 物流倉庫向けソリューションのPlus One Roboticsの詳細を見る

NEWS LETTER

世界のイノベーション、イベント、
お役立ち情報をお届け
「グローバルオープンイノベーションインサイト」
もプレゼント


新規事業の
調査業務を効率化
成長産業に特化した調査プラットフォーム
BLITZ Portal
収集したスタートアップ情報の効率的な活用を支援する
スタートアップ協業案件管理ツール
Q-scout
社員の声でイノベーションを効率化する
アイデア管理プラットフォーム
Q-ideate

Copyright © 2023 Ishin Co., Ltd. All Rights Reserved.