Syntiantは、バッテリー駆動機器に人工知能を持たせることをミッションとし、デバイス上で音声インターフェースを実現するAIプロセッサーを提供している。インテルキャピタルやマイクロソフトベンチャーズなど大手CVCからの資金調達に成功し、創業から2年にして、アメリカ、ヨーロッパそしてアジアに進出、日本市場での展開も秒読み段階にある。今回はCo-founder & CEOのKurt Busch氏に話を聞いた。

Kurt Busch
Syntiant
Co-founder&CEO
1998年、サンタクララ大学にてMBA取得。IoT、ネットワーキング、SaaSおよび半導体産業における幅広い専門知識を有し、25年以上のキャリアにおいて、様々なスタートアップで技術的リーダーシップ、CEO、取締役を務めてきた。2017年にSyntiantを設立し、CEOに就任。

タッチスクリーンの次は「音声」インターフェース

―最初に御社の事業について教えてください。

 音声認識とバッテリー駆動機器に特化したAIチップの開発、つまり全く新しいプロセッサーの開発と製品化を事業としています。

 現在流通しているプロセッサーはAI向けに設計されていないため、三つの点で機械学習に適していません。

 一つ目は機械学習用のプロセッサーは、メモリ容量は大きく、計算はごく狭い幅で行われます。

 二つ目は現在のスマートフォンやパソコンに搭載されているプロセッサーは計算範囲が広く、メモリ容量は小さいです。CPUのコア数は、3、4、8コアも実装できますが、デバイスの処理速度を速くするわけではありません。これは大規模な並列処理において役立つもので、機械学習なら何百万もの処理を並列して走らせることができます。

 三つ目は機械学習では演算精度は8ビットまたは4ビットでもパフォーマンスを維持できる点です。



 これらを踏まえ、200μW以下の消費電力で、既存製品より10から100倍電力効率が高く、AI処理を実現するプロセッサーを開発しました。そして、「Syntiant™ NDP100™」および「Syntiant NDP101™」(以下「NDP100/101」)を発表しました。「NDP100/101」は本年中に電話、ラップトップやスマートコンピュータなどの製品に搭載される予定です。

―御社のプロセッサーはどのようにつかわれるのでしょうか。

 私たちは音声が次なるインターフェースになると考えています。「NDP100/101」は補聴器のように小さいものから、ラップトップまでほぼ全てのバッテリ駆動機器に音声操作機能を追加し、使うことができるよう設計しています。

 「NDP100/101」は、ごく僅かな電力で動くため、基本的にはキーワードインターフェースを動かします。キーワードインターフェースは、「Alexa」や「OK Google」などのウェイクワードとして使われていますが、例えば「ライトをつけて」「911(緊急通報用番号)に電話して」「電源を入れて」「音量を上げて」などと応用できるので様々な活用が考えられます。

AI × 低消費電力

―そうそうたる顔ぶれが御社に投資していますね。彼らはなぜ御社に投資したとお考えですか。

 そうですね。バッテリー駆動機器のエッジAIに特化したプロセッサー製品を開発しているのは当社だけですし、機械学習チップの中でも当社の製品は最も低電力です。

 また、現在の低電力プロセッサーの市場規模は800億ドルですが、ニューラルエンジンなどAIチップはこの市場には含まれていません。機械学習の浸透が進んでいることから、AIプロセッサー市場の規模も大きくなることが見込まれ、この新興市場で優位に立ち、シェアを取るチャンスが当社にはあると考えています。

 投資家からは顧客へのアプローチは協力を得ています。例えば、リードインベスターであるインテルを通じてすでに多くの日本企業と会っています。

―設立から2年でかなり早い展開ですね。

 ええ、私自身はチップ業界で約29年の経験がありますし、製品開発だけでなく事業展開も海外進出も何度も経験しています。また、この業界に長いエキスパートが当社には集まっているので、動きは早いです。



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