Image: Lightricks
これまでクリエイティブ活動というとプロのアーティストというイメージが強かった。しかし、日本では「インスタ映え」という言葉も流行り、InstagramやTikTok、YouTubeなどで誰もがコンテンツを制作しシェアできる時代になった。Lightricksはそんなクリエイティブな活動に欠かせない写真加工や動画編集ツールをモバイルアプリとして提供している。今回はCo-founder & CEOのZeev Farbman氏に話を聞いた。

クリエイティブの「民主化」を促進する

―まず、Lightricks設立の経緯を教えていただけますか。

 Lightricksを立ち上げる前はヘブライ大学でコンピュータグラフィックス、画像解析、そしてコンピュータビジョンなどのコンピューテーショナルフォトグラフィーを研究し、PhDを取得しました。PhDの研究中にMicrosoftやAdobeなどとコラボレーションをする機会にも恵まれました。

 その中で、Co-founderと私はコンピューテーショナルフォトグラフィーが一般消費者向けの製品に応用できると気づいたのです。当時、コンピューテーショナルフォトグラフィーの技術はプロのデザイナー向けでした。同時にAdobeの顧客対象は一般消費者ではなく、プロのデザイナーであることにも気づきました。しかし、私たちは長い目で見たときには、より一般の人々がSNSなどでコンテンツを発信するようになると考えたのです。そこで私たちはモバイルでコンテンツ制作する人々にむけ、必要とするツールをスマートフォンアプリとして提供する会社を作ろうと思いました。

Zeev Farbman
Lightricks
Co-founder & CEO
博士課程在学にMicrosoft、Adobeの研究インターンとしても活動。2013年にヘブライ大学でコンピュータサイエンスのPhDを取得。同年、Lightricksを立ち上げ、現在にいたる。
 

―では御社のビジネス内容を教えていただけますか。

 われわれのビジョンは「コンテンツ制作とクリエイティビティの民主化」です。そこで私たちはターゲットユーザーごとに3つの製品部門を作りました。

 一つ目はコンシューマー部門です。「Facetune」という写真加工アプリを筆頭に、一般ユーザーに魅力的なアプリを開発し、インスタグラムなどで活発に発信を行っています。

 二つ目はアーティスト部門で、モバイルで制作活動をするアーティスト向けのアプリを扱っています。

 そして、最後がブースト部門で、中小企業がソーシャルネットワークで使用するポスターやストーリ、ビデオなどのプロモーション素材の制作を可能にするアプリを開発しています。

―御社の強みを教えてください。

 イスラエルの国立美術学校であるBezalel Academy of Arts and Designと、イスラエルでトップのヘブライ大学の研究を融合することで製品開発をしています。リサーチとデザインの両方のトップクラス人材を確保するため、私たちはオフィスをヘブライ大学内に置いています。もちろん、個々のアプリを見れば、たくさんの競合相手がいるのは確かですが、弊社のようにコンテンツ制作をスマホだけで完結させようとしているところは見当たりません。さらに付け加えれば、一つの研究成果が様々なアプリに応用可能なので、コストパフォーマンスが、他社に比べて非常に高いです。

アメリカから中国へ。世界各国でシェア拡大を図る

―イスラエル以外の国でもビジネスを展開してらっしゃいますか。

 我々のアプリはApp StoreやGoogle Playでダウンロードできます。売り上げは地域によって違ってきますが、以前はアメリカが最大の市場でした。しかし、2019年は2つのアプリで、中国での売り上げが全体の売り上げの割合の多くを占めました。TikTokが出てきてから、顕著に中国市場の存在感が増しています。これまでにない市場でのプロモーションの機会を得ています。中国での成功を機に、アジアへの参入も始めています。オフライン、オンラインの両方で宣伝活動を仕掛けていきたいですね。例えば、各国のインフルエンサーとキャンペーンを行ったり、ローカルなブランドとタイアップをすることなどを考えています。

―なるほど。もう少し具体的に進出戦略について教えていただけますか。

 そうですね。アメリカではFacebookやInstagramで活発に発信しました。最近ではApple Searchへの広告発信にも力を入れています。中国ではMobvistaなどのパートナーを介してTikTokへ広告を出しました。日本ではYahoo! Japanでの広告を試みていますが、日本での展開は始めたばかりです。

―日本進出の際にどのような手助けがほしいですか。

 我々の宣伝活動を代行してくれるようなパートナー企業が見つかるれば思っています。インフルエンサーやブランドへのアプローチなど、郷に入っては郷に従えで、日本のやり方を熟知している会社がいいですね。

―最後に御社の中期的な目標を教えてください。

 消費者がコンテンツ消費するだけではなく、コンテンツを作る時代になりました。我々は、そのような人々が、画像や映像編集、描画、楽曲制作、デザインなどのコンテンツを創造する際に必要なツールを供給していきたいと思っています。



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