Image: Embroker
Embrokerは、法人向けデジタル保険(Digital Business Insurance)市場において、プラットフォームと、関わる全ての業務をデジタル化したスタートアップだ。法人向け保険のブローカーとして、デジタル化で成長を牽引する。今回はFounder & CEOのMatt Miller氏に話を聞いた。

Matt Miller
Embroker
Founder & CEO
デューク大学卒業後、ベイン・アンド・カンパニーにてAssociate Consultantを務める。2007年から、ベインキャピタルにてVice Presidentを務め、在職中にスタンフォード大学経営大学院にてMBA取得。2013年から保険ブローカーHUB InternationalのBoard of Directors、プライベート・エクイティ・ファンドHellman & FriedmanにてPrincipalを務め、2015年にEmbrokerを設立、CEOに就任。

保険業界は19世紀から変化がなかった

―まずEmbroker設立の経緯を教えてください。

 Embroker設立以前にPrincipalをやっていた会社の子会社にApplied Systemsという、保険ブローカー(仲立人)向けのソフトウェアを作っている会社がありました。その会社の取締役も兼任していたので、そこで保険業務用ソフトウェアに関わりました。私は保険ブローカーとして保険業務のオペレーションは知っていましたが、この会社でソフトウェアに関わったことで、両方の側面を知ることになり、保険業界の全体像が見えました。デジタル化している時代の流れを保険業界は全く認識していないことに気づいたのです。

 法人向け保険は、それぞれの企業にカスタマイズされた商品を提供します。そして、個々の独立したブローカーが直接販売する仕組みができあがっていました。彼らには、プラットフォームは必要ありませんでしたし、業務のデジタル化を迫られることはありませんでした。また、やろうと思っても技術がありませんから、法人向け保険業界のデジタル化は進まなかったのです。

 保険業界におけるイノベーションは19世紀が最後です。それ以降は革新的な変化がないままきています。私は、デジタル化が進む現代において、既存のバリューチェーンやエコシステムはもはや意味を持たないと考えています。

―Embrokerの事業について教えてください。

 当社は、保険ブローカーですので、まずその役割を担っています。顧客は当社のプラットフォームを通じて、保険商品のカスタマイズやアドバイスを受け、購入段階においては、顧客自身が当社のツールを使い必要な手続きを行います。プラットフォームは、法人向け保険市場にある全ての商品を網羅し、契約査定結果の提供や、企業が保険商品を買う際に発生する可能性がある見積・申請・請求などの全ての業務をデジタル化しました。これにより、拡張性が高まり、作業が簡単・迅速・効率的になり、低コストでのサービス提供を実現しています。

 また、最近、当社独自の法人向けデジタル保険商品の販売を始めました。

他のブローカーが手を出さなかった領域をターゲットに顧客を獲得

―どのような企業がEmbrokerを利用しているのでしょうか。

 当初は、比較的小規模な企業を対象にサービスを始め、現在3,000社ほどいる顧客は、全て中小企業になります。

 なぜ小規模企業をターゲットにしたかというと、多くの場合、彼らはアーリーアダプターであるからです。そして、社員数が10人の会社でも、大企業とあまり変わらない手間がかかりますが、収益率は低いため従来のブローカーは小規模企業を避ける傾向があり、小規模企業は十分なサービスを受けていなかったからです。そうした境遇にある企業は、革新的なサービスに挑戦する可能性が高いと考えました。
 

―競合はいますか。

 当社は、法人向けデジタル保険商品やサービスのプラットフォームを提供し、業務をデジタル化したパイオニアです。過去20年から30年の間に、デジタル商品を提供し始めた会社もありますが、それらは個人向けで法人向けの商品はありませんし、普及しているとはいえません。

次はアルゴリズムの構築。さらなる効率化を図る

―今後の展望についてお聞かせください。

 現在までに築いたプラットフォームや業務の自動化を継続的に推進しながら、業界全体にデジタル革命を起こしていきたいです。契約査定をアルゴリズムを使って自動化するなど、より効率的な新しいモデルを構築したいと考えています。そして、法人向けデジタル保険市場の拡大を目指し、新規顧客を獲得しながら、サービスを拡張していきたいと考えています。

 現在はアメリカ国内での展開に限定しています。アジアや日本を含め、海外進出は予定していません。ただ、日本の業界関係者と意見交換したことはあります。日本でも中小企業をターゲットにしたプラットフォームとして展望があるようでしたが、当社としては、まず次は大企業をターゲットにサービス拡張を目指します。大企業の多くはグローバル企業なので、国際的な取引も発生する可能性があると思います。その時には現地のパートナーが必要になると考えています。



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