全ての人がアクセスできる新しい金融システムを作りたい
―まずはCeloを始めた経緯を教えていただけますか。
私は東ドイツ出身で、幼少期から通貨の力に触れて育ちました。ベルリンの壁崩壊後に、突然お金で物が買えるようになった時は、なんだかおかしな感じでした。キャリアにおいては、様々な国の様々な市場で働いてきました。そして、ある時点で、世界中の大多数の人々が、金融サービスにアクセスできないことに気づき、驚きました。金融サービスにアクセスできない理由は、健全な通貨にアクセスできない地域に住んでいることだけでなく、クレジットスコア(信用格付)が存在しない地域が多くあることや、銀行口座の保有やモバイルマネーの利用だけでは、クレジットスコアを高められないことにあります。
私ともう一人の共同創設者は、約10年前に、セマンティックWeb技術によるリンクデータを応用し、機械学習とデータのキュレーションを行うことで、中小企業がオンラインプロファイルをより適切に管理できる、パブリッシングプラットフォームを提供していました。このプラットフォームは、MITからのスピンアウトで、セマンティックWeb技術によるリンクデータで、分散型データシステムを作るという概念に基づいていました。
数年前に、ビットコインやイーサリアムのスマート・コントラクトなどの台頭を見て、私たちも通貨やデジタル資産に関わることができるかもしれない。より包括的で、コミュニティのニーズに合わせた金融サービスを、最初から作り出せるかもしれない、という期待がモチベーションになり、Celoの開発を始めました。
スマートフォンによるオープンでグローバルな金融サービス
―競合他社との違いを教えてください。
私たちは、かなりの時間をかけ、世界中のモバイルマネーと決済システムを研究しました。例えば、ケニアのモバイル送金サービス「M-PESA」は、人口の90%が使っているサービスで、かなり参考になりました。
Celoは、分散型およびPermissionless(自由参加型)なブロックチェーンプラットフォームで、ベータテスト版からオープンソースで提供しています。Celoの特徴の1つは、電話番号を識別子として使い、電話番号だけで送金が完結する、デジタル決済サービスで、これをグローバルに展開する予定です。それと、ウォレットを持っている場合は、数秒でウォレットに表示され、持っていない場合は、電話番号を基に資金にアクセスすることが可能なことです。これは「M-PESA」ではできません。
また、金融商品やサービスを、スマートフォンだけで構築できるアプリを提供します。スマートフォンで使えるということが、他と差別化する大きな要因の1つになり、より多くの人がアクセスできる金融サービスになると考えています。
今後5年から10年で、多くの金融サービスがCeloのような分散型インフラストラクチャを使うようになると期待しています。それに合わせてエコシステムもその方向に進化し、デジタル決済は、よりよく、早く、安く、そしてアクセスしやすくなると思います。
当社は、Celoのコミュニティとエコシステムの育成を後押しするために、Celo Ecosystem Fundと、Fellowship制度を立ち上げました。Celoのエコシステムを育成するアイデアがある方は誰でも、どこからでも参加申込みが可能です。
日本はブロックチェーン技術に前向きな際立った市場
―今後の目標として日本での展開も視野に入っていますか。
昨年2回日本に行き、関係者と意見を交換する機会がありました。日本は、ブロックチェーン技術への理解レベルが高く、従来の金融セクターや大企業の関与も際立っています。そして、様々な分野におけるブロックチェーン技術の適用に、非常に前向きです。
日本企業とのコラボレーションには、非常に興味があります。当社は小さなチームなので、 帯域幅は広くないので、世界中の様々な企業など50組織にご参加いただいている、「Alliance for Prosperity」と言う同盟を設けています。これは、アイデアの交換や、ネットワークの紹介などフォーラム的なもので、「思考的」なパートナーシップです。日本企業の皆さんも、モバイル決済や分散型の金融で、素早くスケールできるインフラストラクチャにご興味があれば是非ご参加ください。
個人レベルでも、暗号通貨に関して、日本は最も活発で熱心なコミュニティの1つです。そうした方にCeloのコミュニティにも是非ご参加いただきたいです。