緊急時に自分の名前や状況説明なしで助けを得られるシステム
――まずはCarbyne設立までの経緯を教えてもらえますか。
イスラエルでは兵役が義務付けられており、私は国防軍に所属していた時に、2年間ニューヨークに赴任することになりました。赴任中に最初の会社となるスタートアップをニューヨークで設立し、イスラエルに帰国してからも会社を経営しながら大学で法律とビジネスを学びました。この会社は起業家の資金調達を支援する事業で、非常に成功しています。そして、2014年末にCarbyneの基になる事業アイデアを生み出しました。
――Carbyneはどんなサービスを提供していますか。
当社はGoogle、CiscoやAmazonなどの企業と提携し、モバイルデバイス、センサーとIoTデバイスのリッチデータを緊急サービスに提供する、コラボレーションエコシステムを構築しています。
例えば日本では、緊急時は指定された電話番号に電話をかけ、自分の所在地と何が起きているのかを伝えて助けを求めなければなりません。Carbyneでは、緊急番号に電話をすると、ビジュアルシステム(Face Time)が始まります。そして、所在地と現場で起きていることをリアルタイムで共有する機能があり、電話をしている人が誰で、どこにいて何が起きているのか、何が必要なのかという情報を、全てビジュアルで伝達できるのです。
世界中どこでも既存の通話システムを使って通報できる
――御社のサービスの特徴は何でしょうか。
Carbyneは、世界中の全てのシステム上で数分以内に展開できる、スマートプラグのようなツールです。
また、通報する人はデバイスにアプリを入れている必要はありません。既存の通話システムを使って、動画、位置情報、医療情報、自然言語処理による情報の検出など、必要な情報をリアルタイムで得て通報の受理機関に提供できます。
そして、ミッションクリティカルなソリューションの全アーキテクチャーをクラウド上に構築したことや、多くを自動化していることも特徴です。他にも様々な機能があります。
Image: Carbyne リアルタイムで動画、位置情報、医療情報などを把握できる緊急通報プラットフォーム
――緊急通報の受理機関と直接契約しているのでしょうか?
そうですね。米国では州政府や地方自治体の多くの機関と協力していますし、メキシコ、ブラジル、インド、イスラエル、フィリピンなど世界中で使われています。
当社のプラットフォームは、難しい技術を使っているわけではありません。しかし全てを一箇所にまとめていることや、何年もかけて、関係を構築するために必要なプロセスを経て、非常に強力なエコシステムを構築していることで、他の追随を許さない存在になっています。
――どんな導入事例がありますか。
当社のプラットフォームでは、1日に約100万件の通話を処理していますので、様々な事例が数多くあります。例えば、メキシコで誘拐された家族を助けたこともあります。米国では、川でカヤックに乗っていた時に、怪我をして身動きがとれなくなった方の居場所を特定できたことで命を救いました。
昨年、インドでは25人の赤ちゃんの出産を助けました。なぜこれが可能になったかと言うと、近隣に病院がない人から通報を受けた時、救急車が現場に到着するまでの間、ビデオ電話を使って現場の人に指示を出して出産を進めることができたからです。
現在は米国のいくつかの州と協力して、新型コロナウイルスの予防接種プログラムと予防接種後の症状収集なども行っています。
2020年は360%の成長を達成
――どんなビジネスモデルを取っているのでしょう。
ビジネスモデルは非常にシンプルです。私たちは政府向けにソリューションを提供しています。利用人数で価格は決まっており、月額でサービス提供しています。
――今後の目標として日本での展開も視野に入っていますか?また、海外展開する際にはどういった企業とパートナーになっていますか?
海外展開する時は、通常は大手通信事業者やシステムインテグレーター、セキュリティー企業などと提携しています。日本での展開はまだ具体的な計画はありませんが、求めるパートナーは同じです。
Image: Carbyne CEOのAmir Elichai氏
――今後の目標は何でしょう?
2020年は経常収益で360%成長しました。2021年は人員を2倍に増やし、300%の成長を期待しています。