南カリフォルニア大学在学中の2005年に起業。いくつかの事業での試行錯誤を経て、企業向けクラウドストレージサービスのBoxを急成長させた。2015年にはニューヨーク証券取引所(NYSE)で上場し、グローバル進出に突き進む。同社共同創業者でCEOのLevie氏に単独インタビューし、Boxの成長理由、日本市場などグローバル進出の展望、起業の心得などを聞いた。

Aaron Levie
Box
CEO, Co-founder & Chairman
2005年、南カリフォルニア大学在学中に起業し、BOXのCEOに就任。2015年にニューヨーク証券取引所に上場。

“新しい働き方”を可能に

―事業内容を教えてください。

 おもに企業向けのデータストレージサービスを運営しています。きわめて安全性が高いセキュアな環境のもと、ユーザーはどこからでもクラウド上の情報にアクセスすることができます。

 クライアント企業•組織数は5万社。GE、P&G、Ast raZeneca、Toyotaなど名だたる企業がBoxを利用しています。使いやすさはもちろん、デザイン性などもユーザーから評価されています。Boxのコンセプトはシンプルかつエレガント。過去に複雑な機能を提供したことがありましたが、ユーザーから支持されませんでした。いまや企業向けのソフトウェアも、個人向けと同じくらい簡単で、デザイン性が高いものでなければ評価されません。2015年第2四半期の売上は7350万ドルで、前年同期比43%以上の成長率を記録しました。

―ユーザビリティを重視したことが成長要因だと?

 それも要因ではありますが、Boxが急拡大しているのには、別の大きな理由があります。それは、新しい、効率的な働き方を可能にする、という点です。

―Boxを使うと、どのような働き方ができるんですか。

 世界のどこにいても、最新の情報を共有しながらチームで効率的に協業するワークスタイルが可能になります。Boxを使えば情報をリアルタイムで共有できるので、チームで効率的に仕事を進めることができるんです。

 ワークスタイルは、この10~20年の間で大きく変化しています。これまでの仕事の進め方はクローズドで、他部門や社外と情報を共有せずに個人で働くような感じで仕事をしたり、役所のように縦割りで業務を遂行するやり方が一般的でした。社内外との連携が十分にできていなかったため、とても非効率だったのです。それよりも、他部門や取引先、顧客とリアルタイムで情報を共有し、連携して仕事をするほうが効率的ですよね。それを可能にするのが、新しいテクノロジーツールであるBoxなのです。

日本市場での展開に手応え

―たびたび来日されていますね。日本企業の働き方について、どのような印象をもっていますか。

 日本の企業でも、ワークスタイルの変革の必要性を感じている人たちが増加している、との印象をもっています。

 たとえば、楽天の三木谷さん。彼は「日本企業は変化しなければならない。それも非常に速いスピードで」と訴えていますが、私もそれに共感しますし、同様の考えをもっている日本企業の経営者は多いのではないでしょうか。21世紀の企業のあり方や新しいワークスタイルについて、日本の企業は世界のロールモデルをつくりあげられるポテンシャルがあると私は思っています。

―日本市場での本格展開を開始しましたが、手応えはどうですか。

 Boxは日本市場でとてもうまくいくと信じています。経営スタイルの進化をもたらす新しいテクノロジーの活用にチャレンジしている日本の企業は少なくないからです。世界各国の取引先と情報を共有し、迅速な経営判断を行う。Boxは、もっと効率よく、生産的に、協力的に仕事ができる環境を日本の企業に提供できます。

起業に成功する3つのポイント

―起業の原点についてお聞きします。もともと起業家になりたかったのですか。

 10歳の頃には自分で会社をつくりたいと思い、そのための行動もしていました。共同創業者のメンバーたちは、シアトルで一緒に育った仲間たち。彼らとは中学、高校時代にたくさん事業のアイデアを出しあい、検索エンジン、オンライン不動産、店舗情報サイト、イベント情報サイトなどの会社を実際につくってもみました。Boxは、10番目くらいのアイデアだったんです。

―Boxのビジネスアイデアは、いつ生まれたんですか。

 2004年、まだ大学生だった頃です。複数のコンピュータを利用したり、人とファイルを共有する際、そのプロセスがとても面倒だと感じ、もっと簡単な方法がないかと考えた末に、Boxの原型が生まれました。

 時代も後押ししてくれました。ストレージのコストが下がり、インターネットが高速化。ブラウザも進化しました。そのため、クラウドでのデータ共有が実現可能なサービスとなったのです。

―最後に、起業志向がある日本の若者へのアドバイスを聞かせてください。

 3つあります。まず、テクノロジーの大きな波に乗ること。いまだったらクラウド、モバイル、バーチャルリアリティなど。ビジネスをつくる場合、テクノロジーの流れに沿うべきで、波に逆らってはいけません。

 次に、自分が情熱を感じる事業を選ぶこと。10年は没頭できる事業を選んでください。

 最後に、毎日一緒に働く仲間は、自分が心から一緒に働きたいと思える人を選ぶこと。最高の仲間がいるからこそ、大きなことを成し遂げられるのです。



RELATED ARTICLES
勉強を「学び」から「遊び」に ゲーム感覚の学習プラットフォームが子供に人気 SplashLearn
勉強を「学び」から「遊び」に ゲーム感覚の学習プラットフォームが子供に人気 SplashLearn
勉強を「学び」から「遊び」に ゲーム感覚の学習プラットフォームが子供に人気 SplashLearnの詳細を見る
ソフトバンクも出資する韓国の人気旅行アプリの強さとは ヤノルジャ
ソフトバンクも出資する韓国の人気旅行アプリの強さとは ヤノルジャ
ソフトバンクも出資する韓国の人気旅行アプリの強さとは ヤノルジャの詳細を見る
ライドシェアとは一線画す、相乗りビジネスの成功モデル BlaBlaCar
ライドシェアとは一線画す、相乗りビジネスの成功モデル BlaBlaCar
ライドシェアとは一線画す、相乗りビジネスの成功モデル BlaBlaCarの詳細を見る
AI向け性能は最大10倍?チップレット相互接続の独自技術を開発 Eliyan
AI向け性能は最大10倍?チップレット相互接続の独自技術を開発 Eliyan
AI向け性能は最大10倍?チップレット相互接続の独自技術を開発 Eliyanの詳細を見る
スマホ時代のカスタマーサポートの形、会話型AIの進化で次のステップへ UJET
スマホ時代のカスタマーサポートの形、会話型AIの進化で次のステップへ UJET
スマホ時代のカスタマーサポートの形、会話型AIの進化で次のステップへ UJETの詳細を見る
自重の50倍の水を吸える、作物残滓で作る超吸水性ポリマー EFポリマー
自重の50倍の水を吸える、作物残滓で作る超吸水性ポリマー EFポリマー
自重の50倍の水を吸える、作物残滓で作る超吸水性ポリマー EFポリマーの詳細を見る

NEWSLETTER

世界のイノベーション、イベント、
お役立ち情報をお届け
「オープンイノベーション事例集 vol.5」
もプレゼント

Follow

探すのは、
日本のスタートアップだけじゃない
成長産業に特化した調査プラットフォーム
BLITZ Portal

Copyright © 2024 Ishin Co., Ltd. All Rights Reserved.