Bidgelyは、一般家庭向けの電力管理サービスを提供しているスタートアップ。世界10カ国、20もの公共機関と連携し、スマートメーターから電力データを収集。家の中にセンサー等を設置する必要は一切なく、ユーザーはどの種類の家電製品がどれくらい電力を使っているのかを簡単に把握できる。

Abhay Gupta
Bidgely
Founder&CEO
1996年にインド工科大学を卒業後、1997年に南カリフォルニア大学を修了。同年にサンマイクロシステムズに入社。2004年にサンタクララ大学でMBAを取得。Broadcom、Echelon corporation、Grid Netを経て、2010年にBidgelyを設立し、Founder & CEOに就任。

電力データの利用明細がわかる

―まず事業内容を教えてください。

 私たちは電力データの分析を専門とする会社です。もう少し具体的に言うと、電力の利用明細を作っています。通常、皆さんはクレジットカードや電話、銀行口座の利用明細を見ることができます。しかし、電力については自分が何にどれくらいの電気を使ったかという利用明細は見たことがないですよね。そこで、私たちが電力の利用明細を作ることによって、人々はどの種類の家電製品がどれくらい電力を使っているかを把握でき、電力利用を効率化できるようになるのです。

―主な顧客は誰ですか。

 私たちの主な顧客は電力会社です。私たちは電力会社に有償でサービスを提供し、電力会社はユーザーに無料で提供するというモデルです。電力会社はユーザーに電力消費を意識させて電力利用を効率化させること、ユーザーの満足度を高めることを期待しています。

 現在、このモデルで北米、ヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランドなど、世界10カ国で20の公共機関と連携しています。日本の電力会社とも話を始めており、2017年にはテストを始められればと思っています。

―BtoBtoCのモデルで、ユーザーは無料でサービスを使えるわけですね。収益モデルはどうなっていますか。

 SaaSのモデルです。年間で利用する世帯数に応じて、電力会社に料金を請求しています。

Image: Bidgely

スマートメーターからデータ収集

―どうやって御社はデータを収集しているのでしょうか。センサーを設置する必要がありますか。

 私たちはスマートメーターを使ってデータを収集しています。通常、データはスマートメーターからネットワークを通じて公共機関に直接送られます。そして公共機関は集めたデータを請求や様々な計画のために利用しています。私たちは公共機関から同じデータを受け取っていますので、我々が独自にセンサーを設置する必要はありません。ハードウェアは必要なく、ソフトウェアのみのサービスのため、非常に速いスピードで広めることができるのです。

 ちなみに、同業の企業の中には、センサーを家の中に設置しようとしているところもあります。これは非常にコストがかかるため、速く普及させるのが難しいと思います。

―集めたデータをどんな技術を使って分類しているのでしょうか。

 私たちが使っているのは、家電製品における“指紋認証”のような技術です。人々が電気や冷蔵庫、給湯器などを使うと、電力請求の明細に記録されます。これは音声認識や指紋認識と似ており、非常に難しい技術です。また私たちは特許も取得しており、スマートメーターのある国々ですでに申請してあります。これが私たちの強みであり、その他の企業に比べて、3年は先行していると思います。

Image: Bidgely

電力の規制緩和により、差別化が必要となる

―市場規模はどれくらいあると見立てていますか。

 世界には10億もの世帯数があり、すでに2億台のスマートメーターが市場に普及しています。そして2020年には世界で約4億台のスマートメーターが導入されるという調査があります。ですから、私たちのねらっている市場規模は、現在は2億世帯、2020年には4億世帯ということになりますね。

―この市場が伸びている要因は何ですか。

 マクロ経済の要因が大きいですね。たとえば、日本市場についてお話しします。日本は2つの異なる要因がありました。一つは、地震による原発事故。原子力発電が止まったことで、電力を効率的に使わざる得なくなりました。もう一つは、規制緩和。2016年4月に電力が規制緩和されて、多くの公共機関や企業が電力を販売できるようになりました。たとえば、電話のサービスと電力のサービスをひとつのパッケージにして販売した通信会社がありますね。

 これによって何が起きるかというと、市場内で競争が起こり、電力会社はサービスの差別化が必要となります。電力というのは、同じ電力をほぼ同じ価格で販売することになるので、なかなか差別化が難しい。そこで、われわれのサービスを導入することで、電力会社は差別化が図れるようになるのです。

日本展開においてはパートナーが必要

―日本展開についてはどのように考えていますか。

 日本市場は大きく、チャンスだと感じています。ただ、日本は言語の壁があります。これまで私たちは電力会社と直接取引をしてきましたが、日本ではシステムインテグレータなどのパートナー企業も必要になると考えています。

―最後に、御社の今後のビジョンをお聞かせください。

 クレジットカードであれば、人々は請求書の項目を見て、自分のお金を何に使ったかを知ることができます。ところが電力の場合はそれができません。私たちはそれを変えようとしています。世界中の電力の利用明細を作り、人々が何に電力を使っているかを把握できるようにします。誰しも電力を無駄にしたいとは思っていないでしょう。それは必ずしも節約が目的ではなく、電力を無駄にしないことは正しいと感じているからです。私たちは人々の電力消費を減らすことでコストを節約するだけでなく、地球上の電力消費量を減らすような、社会に大きなインパクトを持つ企業になりたいと思います。



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