Image: nrqemi / Shutterstock
非正規雇用者と正規雇用者の待遇の違いなど、一向になくならない差別を解決しようとしている企業がある。NYに拠点を置き、主にラテンアメリカのギグワーカー(ネット経由で単発の仕事を請け負う労働者)を助けているBankuishがその1つだ。アプリをダウンロードし、職歴や経歴といった情報を入力し徐々にクレジットスコアをあげることで、非正規雇用でも銀行のサービスを受けられるようにしている。数万人ものユーザーが利用待ちとなっている急成長中のBankuishの創業者でCEOであるJose Fernandez氏に話を聞いた。

ラテンアメリカで非正規雇用者のローンを支援

――まず御社のサービスについて教えてください。

 私たちは、ギグワーカーでもローンを組めるよう、非正規雇用者のデータをクレジットスコアに転換するプラットフォームを提供しています。

 クレジットスコアのない非正規雇用者は、多くの場合、闇金業者からお金を借りて、法外な金利を支払う必要に迫られます。私たちは、そのような現実を変えるべく、社会的に信用性が低くても、正規の銀行でローンが組めるように個々人のクレジットスコアを換算する技術を開発しました。私たちは、このデータを銀行に持ち込み、ユーザーに金融商品をオファーしています。

Jose Fernandez
Bankuish
Co-Founder & CEO
マドリード自治大学でビジネス分野での修士号を取得。シリアルアントレプレナー、及び管理職を兼任しながらNY市内のスペイン大使館で外交官職を担う。パンデミック中の2020年にBankuishを立ち上げた。

――どうしてこのようなサービスを提供しようと思い立ったのですか。

 私はもともと経済専門家、銀行家としてのキャリアを築いたのですが、途中でスペイン政府の外交官として働くチャンスに恵まれました。11年前にNYに引っ越したのですが、しっかりとした職歴があるにも関わらず半年分の家賃を先払いしないと賃貸契約ができなかったり、銀行口座が開設できないなどの問題に見舞われました。私は大使からの手紙を持っていたのでラッキーでしたが、みんなが恵まれているわけではありません。

 その後、私は共同創業者と出会い、ブロックチェーン技術について教わって、スタートアップを立ち上げました。当時立ち上げた企業は、ブロックチェーン技術に下支えされたバンキングプラットフォームで、主に西アフリカで展開していました。その後、残念ながら、私たちのビジネスモデルは時代と共に淘汰されてしまい、スマホが主流となりました。

 現在、私たちの主なユーザーはラテンアメリカのギグワーカーで、人口の7割がスマホを持っているにも関わらず、信用性が十分にあるのはそのうち3割にも満たないのです。保険も、投資も、ローンといった商品一切のサービスを受けられません。

 そこで、私たちは時代の流れに合うよう方向転換をし、スマホが最も普及しているインドやラテンアメリカにターゲット市場を変えたのです。

独自のクレジットスコアを算出

――どんなビジネスモデルをとっているのですか。

 ユーザーはまず無料のアプリをダウンロードします。追加費用の必要はなく、全てのサービスを無料で使用できます。ユーザーは、自身の職歴についての詳細等をアプリにアップロードします。また、収入や支出の情報も管理できるよう、銀行口座とのひも付けもサポートしています。

Image: Bankuish

 私たちはその後、集約したデータをもち、提携先の銀行に個人情報を提供し、利用可能な金融商品を模索します。なるべく公正な利率の商品を提供できるよう、詳しく個人のバックグラウンドについて銀行と照会し、最も適切な商品をユーザーが選択できるようにします。ユーザー側での料金は発生しません。銀行と合意に至り商品の契約がされた際に、手数料を銀行から徴収しています。

 ユーザーは、提供した情報をもとに、アプリ上で自身のクレジットスコアを確認することができ、利用可能な金融商品を選択できます。

――どのようにしてクレジットスコアを算出しているのですか。

 プラットフォームには、数名がお金を出し合ってローンプールを構成する機能があります。ある種銀行のように機能しており、グループを構成するメンバーがお金を貸し借りし合いながら、スコアを上げていきます。支払いを自動化する手段はないので、責任を持って自分でお金を返済しなくてはいけません。

 このような行為の積み重ねが、しっかりしたクレジットスコアを作り上げるのですが、私たちはこの過程をデジタル化し、無料で提供しているのです。クレジットスコアが高ければ高いほど、より多様な金融商品のラインナップにアクセスでき、貸付額も大きくなります。

――このようなプラットフォームを開発する上で、どのような点が課題でしたか。

 既に市場にあるデータや、クレジットスコアリングシステムを参考に、アルゴリズムに修正を加えました。マシンラーニングに関しては、提携しているGoogle社に大変お世話になりました。マシンラーニングは、アルゴリズムの分析だけでなく、ユーザーデーターのパターンを見つけ出し学習する能力を備えています。

 また、ギグワーカーが運転手として働いている場合、ユーザーが入力しない天候や渋滞状況といった要素も考慮してくれるのです。今はしっかりとした基盤の固まった製品となりました。

――今後の目標は何でしょうか。

 今年の目標は、待機中のユーザー全てをアプリにオンボーディングすることです。来年は、資金調達をし、メキシコ、ブラジル、コロンビア市場での展開を図ることです。ラテンアメリカ中で広げることが目標です。

 米国も日本もそうですが、ユーザー1人あたりのデータ量は膨大です。私たちがより拡大していく中で、そのデータに対して価値を提供できるようになることが理想です。ラテンアメリカをいわばテストとして利用し、世界中でクレジットスコアの新しいスタンダードを作りたいと思っています。



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