2016に設立されたAtmosicは、新世代の長寿命バッテリーを開発するスタートアップ。今回はCo-founder&CEOのDavid Su氏にインタビューした。

David Su
Atmosic
Co-founder&CEO
テネシー大学で工学修士号、スタンフォード大学で哲学博士号を取得。Qualcommなど複数の企業でエンジニアやVPとして活躍した。2016年にAtmosicを共同設立し、CEOに就任。

低電力テクノロジーと環境発電を統合。ほとんど電池交換のいらない超長寿命になる

―まずは、御社の企業としてのミッションを教えてください。

 我々のミッションは、バッテリーの寿命に変革を起こすことです。今、アメリカ国内で一年間に廃棄されるバッテリーの数は、およそ30億個と言われています。これは、膨大な数ですから、何とか手を打たなければなりません。

 では、どうすればいいのか?現在、通信デバイスは開発が進み、比較的デューティ比が低くなっています。そこで、私たちはワイヤレス通信に使われるデバイスのバッテリーを見直し、その寿命を根底から変革したいと考えています。

―具体的にどのようなテクノロジーになるのでしょうか?

 当社では3つの要素に分けて取り組んでいます。1つは、一般に広く使われているワイヤレス技術対応デバイスでの消費電力を大幅に下げる、ということです。当社ではまず、Bluetoothから始めることにしました。最近、Bluetooth5が解禁になり、通信範囲がWi-Fi並みに拡大しました。すでに消費電力は従来よりもかなり小さくなりましたが、当社の製品ではさらに現状の1/5から1/10にまで下げることができます。

 次に、BluetoothとIoT関連アプリのあらゆるユースケースに目を向けました。我々は必要な時にだけ起動する、いわゆる「オンデマンドウェイクアップ機能」を採用しています。たとえば、ドアの開閉を感知するセンサーの場合、実際に開閉されるのは1日に10回から20回程度です。通常は0.2〜1秒に1回、情報を送信して開閉状態を確認しますが、オンデマンドウェイクアップなら、開閉時にのみ起動して情報送信するので、一日に通信数百回から数万回分の電力を節約することができるのです。

 そして最後に、当社ではエナジーハーベスト、つまり環境発電にも対応を開始しています。前の2つの機能だけでもはるかに省電力であるうえ、さらにエナジーハーベストを取り入れることで、バッテリーフリーのデバイス利用を実現できるようになります。

 Bluetooth対応のキーボードやゲーム機、リモコン、企業などのID、スマートロック、電気のスイッチといった身の回りにあるデバイスはもちろん、徐々に広まりつつあるスマートホーム、自動車や健康管理、業務関連にスマートシティなど、対象は無限に広がります。

―今、長寿命バッテリーは需要も多く、その分競合も多いかと思いますが、他社にはない強みは何でしょうか。

 省電力通信とエナジーハーベストを統合する、というのはこれまでにない画期的なことです。もともと長寿命だったバッテリーが、さらにほとんど電池交換のいらない超長寿命になるでしょう。

世界で大量に廃棄されるバッテリーの現状を変えたい

―現在の事業を立ち上げた経緯を教えてください。

 私は、起業とは創業者が好きなことを仕事にするものだと考えています。私は最近までQualcommに勤めていました。いい会社でした。一方、私は毎日の生活にかかわることで、何か変化を起こせないか、と考えていました。

 そんなとき、ポータブルデバイスは進歩しているのに、それに付随するバッテリーはイマイチだな、と感じました。すでに技術は成熟している。あとは、それをどう組み合わせるのかだと。これから先、長きにわたって有意義で役に立つことをしたいと情熱が湧いてきました。今、私たちはあまりに多くのバッテリーを廃棄しています。私自身が、その状況を変えたいと強く思っています。

―今後はグローバル展開も考えていますか?

 そうですね。バッテリーの問題は万国共通ですから。世界中のマーケットにアピールしていきたいですね。すでに、日本の大手メーカーとも取引しています。ゆくゆくは主要な企業や顧客を獲得していきたいですね。今は、とにかくアジアを含めた世界の舞台への拡大を目指します。アジアには日本や中国など、ビジネスの機会が多いですから。我々の技術が有益となるデバイスを求めています。

―最後に、今後のビジョンを教えてください。

 今後もあらゆる長寿命バッテリーに取り組んでいきたいと思っています。入口としてBluetoothを選びましたが、アプリケーションは他にもたくさんあります。幅広いネットワークに長寿命バッテリーを提供していきたいですね。環境発電も興味深い分野ですから、さらに深めていきたいです。

 我々がワイヤレス技術を扱い始めた2000年代初頭、ワイヤレス通信の範囲はとても狭いものでした。そこから技術を開発、改良していくことで現在のWi-Fi環境にまで育てていったのです。同様に、今我々が作り上げているテクノロジーが数年後、もっと多くのアプリケーションに対応していけるよう力を尽くしたいと思います。



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