Image: Aspinity
Aspinityは、アナログ機械学習AIチップを独自開発するメーカーだ。RAMP(Reconfigurable Analogue Modular Processor)と呼ばれるテクノロジーにより、分析に重要なデータと無関係なデータを識別することで、センサーの消費電力・データ処理コストの最小化を実現するユニークなソリューションを提供する。Amazon Alexa Fundからも出資を受けており、音声認識デバイスによる雑音と人間の声のデータ識別や、危険・異常事態を検知するためのシステムにも活用できる。今回は、Co-Founder & CEOのThomas Doyle氏に話を聞いた。

バッテリー寿命を最大10倍、データ処理量を100分の1に

―まずはAspinityの製品について簡単に教えてもらえますか。

 AspinityのRAMPTMチップは、アナログ機械学習プロセッサであり、効率的なデータ処理と消費電力の削減を実現します。デジタル化の時代においてありがちな“Digitalize First”ではなく、“Analyze First”のエッジアーキテクチャにより、不必要なデータのデジタル処理を排除し、バッテリー寿命を最大10倍、データ処理量を100分の1にすることができます。

 環境変化・異常検知を目的としているセンサーは、トラブルの兆候があればすぐに警告を発し、すぐに問題に対処できることが求められます。これらのイベントは毎日発生していても、ほとんど発生していなくても、イベント検出システムは常に稼働している必要があるため、センサーのバッテリー切れがボトルネックになる場合が散見されます。

 当社のチップが初期段階でデジタル処理の要否を判定することで、必要な時にだけ後続のシステムを稼働させたり、人力による確認・対応作業を要請することができます。

Thomas Doyle
Aspinity
Co-Founder & CEO
West Virginia大学で電気工学の学士号を取得し、California State UniversityのLong Beach校でMBAを取得。アナログおよびミックスドシグナル半導体技術における30年以上のオペレーショナルエクセレンスとエグゼクティブリーダーシップを蓄積。Aspinity入社以前は、Cadence Design Systemsのアナログ/ミックスドシグナルICビジネスユニットのグループディレクターとして、世界有数の半導体企業への同社技術の展開を管理。それ以前は、アナログ/ミックスドシグナル・ソフトウェア会社であるParagon IC solutionsのFounder & President。外現在はAspinityのCo-Founder & CEO。

Amazon Alexaでの音声認識をはじめ、幅広いユースケースを想定

―既存の導入顧客と想定されるユースケースについて教えてもらえますか。

 Amazon Alexaは、Aspinityに興味を持った最初の主要な顧客であり、Amazon Alexa Fundから当社に投資もしてもらっています。Alexaのようなデバイスが、常にユーザーの声に反応できるように、しかも効率的に準備しておくために、人間が発声する意味のある言葉とその他の雑音をアナログに識別する当社のテクノロジーが活用できます。

 次に、窓ガラス等の破損、火災報知機等のアラーム、バルブの漏れ、水漏れ・赤ちゃんの泣き声など何かしらの危険・異常事態を検知するためのシステムにも活用できます。

 さらには、音声だけではなく振動の検知・識別も有望なユースケースになり得ます。スマートファクトリー・IoT化のトレンドが加速する中で、工場・発電所などに大量の振動センサーを設置して、ボールベアリング、モーター、ポンプ、コンプレッサ、バルブなどの予知保全をする上で、当社のソリューションは安定稼働・コスト削減に貢献できます。

パンデミックによる需要拡大に対応し、国内外問わず更なる事業展開を予定

―コロナ禍での資金調達となりましたが、足元の事業の状況と今後の展望を教えてください。

 今回調達した資金は、ビジネスの米国展開と海外展開に活用します。当社はもともとエンジニア中心で10人程度の少数精鋭のチームでしたが、今年の終わりには15〜20名規模に拡大する予定です。

 当社は幸運にもコロナ禍の影響は比較的軽微に収まりました。核となるソリューションは既に出来上がっていましたし、従業員が少人数であったことも幸いし、リモートでの事業運営も効率的に実現できています。さらには、非接触ソリューションのニーズの増加、人力からロボット・機械によるオペレーションへの移行のトレンドが加速する中で、当社のテクノロジーへの引き合いが高まっていることを実感しています。

―日本市場についてはどのように捉えているのでしょうか。

 足元で日本市場に注力しているわけではありませんが、既に幾つかの日本企業からはコンタクトを受けて会話を続けています。国際展開への本格的な着手は来年以降になると思いますが、いつでも日本企業からご連絡を頂くことは大歓迎です。

 日本市場での事業拡大をするとすれば、日本市場で強いブランドを誇り、ネットワーク・販売網を有しており、当社のテクノロジーへの理解も深いであろう、ハイテク企業とパートナーシップを組むことが最適だと考えています。



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