ビルや商業施設のオーナー・投資家は、自身が保有・管理する建築物などが自然災害や事故などの被害を受けた場合に適切な補償を受けたい。一方で保険会社は、施設の資産価値を正しく評価し、保険料や補償内容を提案したい。ArchipelagoはAIを活用し、この両者のニーズに応えるデータプラットフォームを提供している。30年以上のキャリアを通じて特にリスク・保険業界に注力してきた共同創業者・CEOのHemant Shah氏に事業の特徴と将来展望について聞いた。

リスク・保険業界の長年の経験から、商業施設管理の課題に気づく

 地震や台風、洪水、津波など、我が国のみならず世界には多くの自然災害の脅威がある。ビルや大型商業施設のオーナーは、災害や事故に備えて保険に加入するのが一般的だ。保険料は施設の価値や諸条件によって金額が決まり、災害・事故によって資産にダメージが生じた場合、保険会社は保険料を支払う。オーナーにとっても、保険会社にとっても施設の価値の適正さを判断する情報は重要だ。

 Archipelagoは、AIを用いて、商業施設のリスクをデジタル化し、耐災害性を高めながら、保険の成果を向上させるなど、リスクの総コストを削減するサービスを提供する企業。主な顧客は大規模商業施設のオーナー(管理会社や機関投資家含む)と、物件を扱うブローカー、そして保険会社で、施設・物件に関するデータを相互に提供する。

Image: Archipelago Analytics

 共同創業者でCEOのHemant Shah氏は1989年に、スタンフォード大学院で土木工学とリスク分析を研究中に、リスク評価・管理ソリューションを提供するRMS(Risk Management Solutions)を起業。ゼロから10億ドル以上の価値を持つSaaS分析ビジネスに成長させた。2018年、およそ30年経営したRMSを退任したのち、Archipelagoを創業した。

 Shah氏は、「RMS時代の経験によって、より効率的で透明性の高いデータを活用すれば、リスク業界で大きな影響力を持つことを知りました。建築資産を説明するデータの透明性を高めることができれば、保険業界は世界中の不動産所有者に、より手頃でより多くの保険を提供することができ、さらに世界経済の回復力を高めることができるのです」と創業の理由を語った。

Hemant Shah
Archipelago Analytics
CEO & Co-Founder
スタンフォード大学でエンジニアリングとデータサイエンス、アナリティクスを学び、在学中の1989年に、災害リスクの専門会社Risk Management Solutions(RMS)を共同設立し、2018年までCEOを務めたのちにArchipelagoを創業。30年以上のキャリアを通じ、リスクと保険業界に注力してきた。

 日本でも毎年のように大きな自然災害が発生しているが、Shah氏によると、気候変動や地球上での開発の増加に伴い、リスクにさらされる施設が増えており、保険業界はこれまで以上に効率的に補償を提供する必要に迫られているという。データ分析によって適切な資産価値を評価できれば、オーナーと保険会社双方のコスト負担などのリスクを軽減できるのだ。

データの透明性や信頼性を担保し、物件の価値や保険料を最適化

 Archipelagoは、2018年に設立後しばらくはプラットフォーム構築の研究開発に注力し、サービスをローンチしたのは2020年の8月。2021年6月現在、Archipelagoには3.5兆ドルを超える資産・施設データが登録されている。このプラットフォームは、施設オーナーが設計書や画像など物件のさまざまなデータとその裏付けとなる資料をアップロードすると、機械学習によって物件の査定に必要な情報を自動的に整理して登録される仕組みだ。メンテナンス履歴などの更新も施設管理者が容易に登録できるようにし、ブローカーや保険会社も含め、物件の総合的な情報をリアルタイムに確認できる。

Image: Archipelago Analytics

 Archipelagoは、「信頼」「真実」「透明性」を重視しており、プラットフォームへの登録データにはすべて裏付けを示す。Shah氏は、「データは一貫して高品質のものでなければなりません。商業施設や不動産も、高級ワインや芸術品のように、その出所を示すことは必要です。その物件は誰が作って、どのように管理されているのかなど、私たちはすべてのデータソースを接続し出所を知ることができるのです。また、基本情報だけでなく、時系列での変化、改修などの変化も知ることができます。物件のオーナーや保険会社が変わる場合も医療記録が医者から医者へ渡されるように、データは引き継がれます」と付け加えた。

 これまで各所に保管され、分断していた物件データを集約・更新していくことで、情報の信頼性や透明性を担保し、資産管理や保険の査定を最適化するのが狙いだ。

プラットフォームのレベルを高め、数年後にはグローバルに展開

 2021年は北米市場に注力するが、2022年には国際展開をし、3年以内には日本を含む主要マーケーットへの進出を目指している。日本は台風や地震などが頻発することから資産リスク管理が強く求められる市場でもあるが、そもそも同社の顧客である大規模商業施設のオーナーや保険会社はグローバルに展開しているため、Archipelagoのグローバル展開は必然的だ。

 市場規模についてShah氏は「昨年のローンチ当初、登録された施設の価値は3000億ドルでした。現在は3兆ドルに成長しています。2022年は10兆ドルを見込んでいますが、ハイエンド領域の商業用不動産は40兆から50兆ドルほどカバーできると思っています。数年後にはこれらのデータの大部分を私たちのプラットフォームに乗せ、世界で最も効率的な場所を作りたいのです」と語った。

 2021年4月、シリーズBで調達した3400万ドルは、市場参入と研究開発に投資する。プラットフォームの源泉であるデータ収集に注力するために顧客対応を加速させるとともに、エンジニアリングチームを拡大し、プラットフォームのレベルアップを図っていく予定だ。日本でのビジネスは数年先としたが、その可能性と今後の展望についてShah氏は次のようにコメントした。

「日本は世界最大の経済大国のひとつです。またカリフォルニアのように自然災害のリスクを多く抱えています。私はRMS時代には日本で多くのビジネスを行いました。チームは地震や台風を理解していましたし、日本の大規模な保険会社も知っています。日本の不動産を開発・所有・販売する大企業との関係もあります。また、私の共同創業者(兼CTOのRoger Bodamer氏)は、東京に不動産を持っています。彼は創業前に日本中を自転車で走りながら、Archipelagoで採用している技術を考案したのです。

 私たちのビジョンは、保険の最適化だけでなく、資産の回復力を高める方法を判断するなど、資産のリスクを減らせるプラットフォームを作ることです。長い旅になると思いますが、この業界で世界的なインパクトを与えたいと考えています」。




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