PostgreSQL、Kafka、M3などのオープンソースデータ技術は、革新性や利便性があるものの、インフラの構築・運用面に課題がある。これをクラウド上に展開して利用しやすくするサービスを展開するのがフィンランド発のAiven。2015年の設立以降、着実に成長し、2021年3月にはシリーズCで1億ドルを調達した。そのキャリアの多くをソフトウェア開発やオープンソースコミュニティに費やしてきた創業者でCEOのOskari Saarenmaa氏に話を聞いた。

オープンソースの配備・運用を、クラウド上で簡単にしたい

――まずAivenを起業するまでの経緯をお聞かせください。

 私はソフトウェア開発者で、ほぼすべてのキャリアにおいて、あらゆる種類のソフトウェア・インフラストラクチャのテーマに取り組んできました。私が仕事を始めたのは1990年代後半で、初期のWebやモバイル技術、インターネットのインフラに携わっていました。セキュリティベンダーであるF-Secureに勤務していたころは商用のSSH製品を扱っており、日本にも多くの顧客がいました。

 何年にもわたってさまざまな種類のソフトウェア・インフラに関わっていくなかで、多くのアプリケーションを強化するオープンソーステクノロジー、特にオープンソースデータベースに多くの時間を費やすようになりました。 そこでAivenの共同創業者となる人たちとも出会い、企業がオープンストアを導入したり、データベースをセットアップしたり、スケールアップしたりするサポートしました。しかし、その過程では多くの問題が発生し、顧客も開発者もその対応に時間を割いていることを見てきました。

 私たちは、そのような状況から脱却し、お客様や開発者が自分にとって重要なものを作り、新しいことをより早く試すことができるような環境を作りたいと考えていました。やがてクラウドプラットフォームが普及し、物理的なハードウェア調達が必要なくなると、ソフトウェアの観点から生産性を高められるようになりました。そこで、私たちが持つオープンソースデータベース・テクノロジーの専門知識とクラウドを組み合わせたサービスを提供したいと思い、Aivenを立ち上げたのです。

Aivenの創業メンバー。左から二番目がCEOのOskari Saarenmaa氏。

――プロダクトの特徴は何でしょうか。

 最高のオープンソースデータベース技術やデータストリーミング技術を駆使して、フルマネージドのクラウドサービスを提供しています。オープンソース技術は、誰でも入手でき、ダウンロードすることができます。しかし、それだけでは多くのエンタープライズ用途には耐えられません。

 なぜならば、それを実際に運用することは非常に困難だからです。私たちのプロダクトは、多くの人々が本来の業務に専念できるよう。オープンソース技術を透明性が高く、使いやすい方法で提供しています。試しに使っていただいて、少しずつ導入していったとしても、多くの時間やリソースの効率化ができるでしょう。

 私たちが提供するのは、単なるデータベース技術やデータストリーミング技術だけではなく、さまざまな種類のデータユースケースに対応する一連の技術です。複雑なインターネットアプリケーションを構築する際には、さまざまなデータをカバーする必要があります。数々のデータソースやデバイスから大量のデータを取り込んで処理することができるのです。しかも、AWS、Google Cloud Platform、Azureなど、異なるクラウドプラットフォームでも同じように動作するデータサービスを構築することができます。  

――オープンソースをベースに独自の機能を追加しているのでしょうか?

 オープンソース技術を扱う企業には、コアな部分にオープンソースを使い、その外側に多くの独自性を付加して提供する「オープンコアモデル」を採用するところもあります。しかし、その場合はいろいろな制約が生じる場合もあります。

 Aivenでは、お客様が管理するデータはすべてピュアなオープンソースシステムで実行されます。これは、すべてを管理するクラウドオペレーションプラットフォームという私たち独自のコアの上で成り立っているからです。オープンコアモデルを裏返しているとも言えますね。お客様が独自の機能に対峙することがない、透明性のある仕組みです。

多くの企業がデータプラットフォームの効率化を求めている

――新型コロナウイルスによるパンデミックは、御社にどのような影響を与えましたか?

 ここ数年で、収益面でもチームの規模でも、ほぼ2倍になり、世界中の何百ものお客様とお仕事をさせていただいています。もうすぐ1000社の顧客を持つことになります。私たちは、さまざまな地域、さまざまなサイズの顧客を抱えています。個人の開発者から地球上で最大級の企業まで、さまざまな人たちと仕事をしています。

 2020年にパンデミックが発生したとき、私たちは最も速いペースで成長していました。見込み客と直接会うイベントを18件用意し、そのうち17件が中止となってしまったものの、全体的に見て、私たちは市場でうまくやっていると思います。なぜなら、多くの企業がより効率的にならざるを得ない状況に追い込まれているからです。

 私たちは、顧客企業がデータプラットフォームをより効率的に利用できるよう 一緒に仕事をしています。自分たちが成長し成功を収めることができただけでなく、お客様に対しても改革を成功する手助けをすることができた企業だと思います。パンデミックが収束したら、チームのメンバーや顧客と直接会うことを楽しみにしています。

――シリーズCの資金調達おめでとうございます。資金はどのように活用しますか?

 当社のお客様はオープンソースデータベースを活用します。ですから、オープンソースへの投資を大幅に強化し、当社にとって重要なプロジェクトへ貢献していきたいです。新しいオープンソースプロジェクトも立ち上げたいと思っています。

 また、当社のプレゼンスがまだそれほど大きくない、新しい市場への拡大も考えています。たとえば、規制の厳しい業界、金融サービス、政府機関など、これまでコンプライアンス上の理由や重要な機能のために当社のサービスを利用しようとしていた業界への参入です。

 さらに地域も拡大していきたいです。現在の最大市場は西ヨーロッパと北米ですが、アジア太平洋地域でも大きな成長を期待しています。これらを推進するべく1年半の間に150名くらいの新規雇用を見込んでいます。

クラウドとオープンソースの波に乗って、日本市場にも進出

――日本への進出は予定していますか?

 日本市場は、間違いなく興味深く、魅力的です。まだ具体的にはお話しできませんが、来年か再来年には、日本にオフィスを立ち上げることになると思っています。

 日本の顧客を増やすためには、まだまだやるべきことがあると思っています。今回の出資者であるWiLは日本に素晴らしいネットワークを持っていて、多くの重要な企業とのつながりを持っています。私たちは、彼らと協力して、より多くの顧客を獲得するために、また、これらの企業にオープンソース技術を採用してもらい、より多くのクラウドサービスを導入してもらうために、何ができるかを考え始めたところです。

――日本市場への参入にあたり、どのようなパートナーや顧客を求めていますか?

 私たちが提供しているツールや技術を使って新しい製品を作ることに興味を持つ、アーリーアダプターに会いたいです。私たちが提供している技術はさまざまな場面で利用できるため、予想外の場所で成功を収めることもあります。

 Aivenを始めたとき、最初に獲得した顧客はメキシコのトラック運送会社でした。これは全く予想していませんでした。彼らは、トラックのスペアパーツや車両の動きを追跡する社内アプリケーションを構築していました。オープンソースデータベース技術を使いたいと考え、私たちを見つけたのです。このほかにも、私たちはさまざまな業界に協力しています。イベントに参加し、これまでの事例をいろいろと共有したいと思っています。

――今後の展望や、長期的なビジョンをお聞かせください。

 クラウドサービスやオープンソースの市場は、非常に速いペースで成長しており、当社もその市場の発展に貢献できています。私たちは、オープンソースに忠実でありたいと思っています。そして、お客様や私たちと一緒に仕事をするすべての人が、最高のオープンソース技術にアクセスし、自分たちにとって重要なものを作り、素晴らしいものを作り続けることができるようにしたいと思っています。

 だからこそ、次に求められる新しいプロジェクトを立ち上げ、より多くの貢献をしていきたいと考えています。オープンソースとクラウド市場において独立性を保ちながら急速な成長を続け、数年後に現在よりも大きく成長したときには、株式公開を視野に入れることができるでしょう。

Oskari Saarenmaa
Aiven
Co-Founder & CEO
1990年代からソフトウェア・インフラストラクチャの開発者として過ごす。2002年から2011年はセキュリティベンダーであるF-Secureでソフトウェアアーキテクトなどを務めた。その後はオープンソースデータベースに多くの時間を費し、そこで感じた課題を解消するべく2015年にAivenを創業する。



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