【インフォシス元CFOインタビュー】インド社会の繁栄のため、スタートアップエコシステムに投資する

【インフォシス元CFOインタビュー】インド社会の繁栄のため、スタートアップエコシステムに投資する

India / VC / Aarin Capital
2018-08-01 08:53
インドで成功を収め、短期間で巨大企業に成長したIT企業・インフォシス。Aarin CapitalのTV Mohandas Pai氏は、インフォシスの元CFOであり、現在はインド社会の発展のためにスタートアップエコシステムに投資し続けている。今回はインドスタートアップエコシステムの未来、日本企業の関わり方について聞いた。
TV Mohandas Pai
Aarin Capital
Co-Founder and Chairman
バンガロール大学を卒業。1994年にInfosysに入社し、CFOに就任。1999年の米Nasdaqへの上場をリードした。2006年までCFOを務め、その後は同社の研究、教育部門などの責任者を歴任し、2011年に退社。同年にAarin Capitalを設立し、Chairmanに就任。そのほかにも子供たちの昼食プログラムを提供するThe Akshaya Patra Foundationのボードメンバー、インド証券取引委員会のボードメンバーなども務める。

インフォシスの急成長を体験し、スタートアップの世界へ

―Mohandasさんはインドの大手IT企業のインフォシス出身だと聞きました。バックグラウンドを教えてもらえますか?

 2011年にインフォシスを退社するまで、同社でCFOを12年務めていました。証券市場のメディアが運営するベストCFOにも3回選ばれました。私が入社した1994年ごろは、会社も時価総額100億円、年商5億円、従業員数も500名規模でした。それが、退社する頃には、時価総額3兆5000億円、年商6,500億円、従業員は13万人になっていました。

―まさにインフォシスの急成長を体感してきたのですね。スタートアップ投資の世界に入ったきっかけは何だったのですか?

 インフォシスの仕事と並行して、政府から、ビジネスエコシステムをより良くするために、政策委員会に入ってほしいと要請がありました。また、政策の提言だけでなく、政府が運営する1,500億円ファンドのボードメンバーとしても活動することに。

 2011年にインフォシスを退社してからは本格的に投資の世界に足を踏み入れ、ヘルスケア、教育、ライフサイエンスに投資するファンドをパートナーと共同創業しました。その分野では、当時としては1番大きなファンドでした。そのファンドの投資先には、成功を手にしたスタートアップが多く誕生しています。

 その一例ですが、インドのオンライン学習アプリ「BYJUS」をご存知ですか? 900万ダウンロードされ、45万人以上の生徒が年間利用料として、1万ルピー(1万7,000円)を支払っているアプリです。Facebook創業者のマーク・ザッカーバーグが投資したことで一躍有名になりましたが、ほかにもセコイア・キャピタル、テンセントから投資を受けており、インドを代表するEdTechのユニコーンです。私たちは、ここの初期投資家でもあります。当時20億円の時価総額だった同社の株式のうち30%を持っていました。現在の時価総額は1,300億円です。

 ほかにもNasdaqに近々上場予定の創薬スタートアップもあります。35のスタートアップ投資のほかに14のファンド投資をしています。ファンド投資のエリアは、インド、東南アジア、アメリカをカバーし、出資するだけでなく、投資のボードメンバーとして関与しています。14のファンド投資を通じて、累計266投資を行いました。これは450億円の投資に相当します。2,500社の投資案件が毎年私たちのところにきています。

成功者こそ、「社会の役に立つ」ように

―お話を聞いていると、スタートアップだけでなく、エコシステム全体に投資しているような感じですね。

 私が投資をし始めた2011年は、まだまだスタートアップ投資をする人間が少なかったのです。起業家を投資して育てると同時に、投資家にも投資をして彼らのサポートをしてきました。そうすることがインドのスタートアップエコシステム全体のすそ野を広げることになり、繁栄につながると思っているからです。

 インドでは成功すると、「社会の役に立つ」「社会に還元する」という考えを持つ人が多いです。私も自分自身の知見を共有したり、時間が許す限り起業家の相談に乗っています。投資事業もリターンを出すことは第一ですが、同時に社会の繁栄のために自分が何をできるのかを考えて行動しています。

―インドのこれからの10年はどうなっていくでしょうか。

 2017年のインドのGDPは、約2兆6000億ドルです。13年後には、10兆ドルを超え、GDPにおいて世界1位になると言われています。また、2017年時点で、インドスタートアップの数は3万2000社で、9500億ドルの時価総額となり、40万人の雇用をつくっています。2025年には、スタートアップの数は10万社、5兆ドルの時価総額、3500万人の雇用を生むと言われています。昨年時点で、インドのスタートアップ界隈で3,750億ドルもの投資が行われました。私は7年後には、これが8,000億ドル規模になると思っています。

今後、スタートアップの世界は5つのエリアに分かれていく

―スタートアップの世界におけるインドのポジショニングはどうなると思います。

 インドは世界で最もITソフトウェア開発会社が密集している国です。8万社近くあり、1220億ドルの売上を上げています。従業員もアメリカ600万人に次ぐ450万人規模。ITアウトソーシング会社の時価総額においては、世界のトップ10社のうち、5社はインド企業です。

 今後、スタートアップエコシステムのハブ拠点として、世界では5エリアに分かれると思います。アメリカ(シリコンバレー)、ヨーロッパ(ロンドン、ベルリン)、イスラエル、中国、インドです。なかでも、中国、インド、アメリカがこのスタートアップにおけるハブとしての地位を確立するでしょう。中国は革新的なインターネットサービスを生み出しながらも、基本は国内市場に目が向いています。一方、インドは、国内のみならずグローバル市場にも目がむいています。

 インドは今後7年間で大きな躍進を遂げるに違いありません。毎年5000社のスタートアップが生まれてくると予想します。そのうち、1500社は資金調達を受けるでしょう。大きなスタートアップエコシステムが生まれるはずです。

日本は中国だけでなく、インドも見ていくべき

―成長していくインド市場に対して、日本企業はどのような関わり方をしていくべきですか?

 これまで日本は、インドをあまり見てこなかったと思います。地理的に中国の方が近いこともあり、中国に比べ、両国の民間企業同士の交流は少なかった。スタートアップ投資においても、VC・ファンドは来ていますが、大手からの投資はこれからのステージだと思っています。

 従来の日本の大手は工場や会社を現地に設立し、社員採用して、軌道に乗ってから、他社との提携や、イノベーション投資を行ってきた。ただこれでは遅い。私が現在手がけているように、大きなファンドをつくり、複数のファンドに投資をして、そのファンドが持ってくるトップのスタートアップに投資するべきです。例えば、25社に投資するファンドに10社投資したら、250社の情報が手に入ります。そのトップ10社に次のラウンドで直接投資すればいいのです。

 インド市場を外部の人間が理解するのは時間がかかります。ですから、ファンドに投資をしてから直接投資をするのが一番有効的だと思います。私自身がアメリカのファンドにも、中国のファンドにも投資しているので、説得力あるとは思いませんか。

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