Image: Run The World
Run The Worldは、グローバルなオンラインイベントプラットフォームだ。コロナ禍、リアルなイベントが開催が難しくなる中、オンラインでの出会い・交流を実現する。2020年5月に米国大手VCのAndreessen HorowitzからのシリーズAの出資を受けており、30カ国から参加者が集うGitHubオープンソースコミュニティーのハッカソンなどで利用されている。今回はFounder & CEOのXiaoyin Qu氏に話を聞いた。

国際会議によって1つの命が救われた

――まずはRun The Worldを立ち上げた経緯を教えてもらえますか?

 私は中国出身で、18歳で米国の大学に進学しました。大学卒業後はFacebookとInstagramでシニアプロダクトマネージャーとして、動画関連のプロダクトを担当していました。

Xiaoyin Qu
Run The World
Founder & CEO
Pomona Collegeにてコンピューターサイエンスと経済学の学士号取得。2013年に教育カウンセリングを提供するスタートアップを共同で設立、Product Management and Marketingを担当。2015年から2018年までFacebookにてSenior Product Managerを務め、2016年には6ヶ月間InstagramにてProduct Managerを務めた。Stanford大学MBA在学中にRun The Worldを起業しCEOに就任。
 Run The Worldは、小児神経科医である私の母の体験がきっかけになっています。母は、医師として中国で35年のキャリアがあります。しかし、国際会議への参加は、昨年シカゴで開催された国際会議が初めてでした。この会議で、自分の患者と同じ珍しい症状の患者の治療にあたっているドバイの医師と意見交換する機会がありました。この意見交換が、母の患者の治療に非常に役立ち、命を救うことができました。アメリカへの渡航が難しいことなどもあり、母にとってはこれが最初で最後の国際会議への参加となりました。

 私は、母のような人が、グローバルで同じ専門知識や関心を持った人たちと有意義に交流し、つながりを持てるよう支援したいと考えRun The Worldを設立したのです。

イベントならではの「偶然の出会い」も実現

――御社のオンラインイベントプラットフォームでは、具体的にどういったサービスを提供しているのでしょうか?

 当社は、オンラインイベントのエンド・ツー・エンド・プラットフォームを提供しています。プラットフォームには、ファイヤーサイド・チャットから、パネル、プレゼンテーション、カクテルパーティーまで、様々なイベントフォーマットを用意しています。フォーマットを選び、テーマを選び、開催日時を設定するだけでイベントを開催できます。また、イベントへの参加も非常に簡単です。

 当社プラットフォームには、マッチング機能があり、5分ごとに参加者をマッチングします。参加者は、マッチングされた相手とチャットでき、例えば1時間のカクテルパーティーで、8〜10人と会話できます。こうした機能があるからこそ、内向的な方も、リアルで行われるパーティーより、多くの人と繋がりを築くことができています。

Image: Run The World
ランダムに参加者とマッチングができる機能も実装。

 参加者は、イベントの後も連絡を取りたい人をフォローすることや、別の人を選ぶこともできます。また、ソーシャル・ネットワーキング機能もあり、メッセージを送るなど、フォローアップもこのプラットフォームで行えます。

 私たちは、本当の意味で価値があり結果をもたらす「交流」を実現するプラットフォームの提供を使命としています。今まで、数多くのリアルイベントが様々な国で開催されてきました。しかし、会場の確保や宿泊や移動が伴うイベントの開催は年1回が一般的で、月に1回または、四半期に1回は意見交換の場が欲しいと考えている、私の母のような人たちの本当のニーズを満たしていません。本当に必要とされている頻度でイベントが開催できること、これも重視しています。

――どんなイベントでの利用実績がありますか。

 例えば、GitHubオープンソースコミュニティーの国際的なハッカソンで使われました。30カ国から参加者が集い、異なるタイムゾーンの人々が一緒にハッカソンをするという画期的なイベントとなりました。

 またある団体がインド、中国、カナダでグローバルカンファレンスを開催しました。これまで遠距離のため、海外からの講演者を集めるのが難しかったのですが、オンラインイベントになったことで、世界中から一流の講演者を集めることができました。その他にもコミュニティリーダーのイベント、スキル習得のためのワークショップなど、様々なイベントが開催されています。

オンラインイベントこそ「エンゲージメント」と「ソーシャル」に注力すべき

――リアルイベントと比較されることが多いと思います。どのような違いがあるのでしょう。

 当社のプラットフォームは、対面で行われる会議をそのままオンライン化するものではありません。参加者視点から見たオンラインイベントの「体験」は、物理的に会場に出向いて参加するイベントでの「体験」とは大きく異なります。

 リアルイベントでは、参加者は退屈しても会場内に留まりますが、オンラインは全く違います。オンライイベントでは、参加者が退屈に感じるとすぐに離れていきます。また、イベントの開催時間も変える必要があります。オンライイベントの場合、時差もありますし、リアルイベントと同じように朝の8時から17時まで参加を求めることは不可能です。

 最近は、オンラインイベントがかなり増え、参加者は今まで以上にイベントを選べるようになりました。これからは「参加したくなるイベント、途中で退室しないイベントとは何か」という、オンラインで開催する意味を考えなければなりません。参加者が集まらなければスピーカーもスポンサーも集まらないからです。

 私たちは、エンゲージメントにより時間をかけ、ソーシャルネットワーキングの構築にも時間をかけることが、参加者をひきつけることになると考え、そうした機能にフォーカスして提供しています。

Image: Run The World
参加者のエンゲージメントを高める機能を搭載

――ユーザーは無料イベント、有料イベントのどちらも開催できます。御社の収益モデルについて教えてください。

 有料イベントの場合、全体の収益に対して、17〜25%の手数料をいただきます。月額の課金プランによって、手数料率は異なります。

 無料イベントの場合、参加者の規模によって料金が異なります。60名までであれば、現在は無料で開催することができます。

――既にグローバルで利用されているサービスですが、今後日本でも展開する予定はありますか?

 当社は、Dreamers VC(サッカー選手の本田圭佑氏がWill Smith氏と共同で設立したVC)からも出資を受けています。本田氏がTwitterで当社のことを紹介してくださり、日本の方々からの関心も高く、すでに多くの方々と話す機会を得ています。

 日本は素晴らしい市場です。日本のテックコミュニティーや、エンターテインメント業界に興味がありますし、当社のサービスに多くのチャンスがある市場だと考えています。

 当社には、日本に理解があり、日本と同じタイムゾーンにいるアジアチームが既にいますし、日本企業とのパートナーシップにも興味があります。



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