Image: Mammoth Biosciences
Mammoth Biosciencesは病気の原因となるDNAを検出するCRISPRベースプラットフォームを開発している。ゲノム編集技術CRISPR/Cas9の共同開発者として著名なDoudna教授と教授の研究チーム2名がCo-founderとして関わり、CRISPRの実用化を目指す。今回はCo-founder & CEOのTrevor Martin氏に話を聞いた。

Trevor Martin
Mammoth Biosciences
Co-founder & CEO
2011年、プリンストン大学分子生物学学士。2016年スタンフォード大学大学院にて生物学および統計学の博士号取得。2017年にMammoth Biosciencesを共同設立し、CEOに就任。

病気の原因となるDNAを検出、CRISPRを「診断」に使う

―まずMammoth Biosciences(以下Mammoth)設立の経緯を教えてください。

 私はスタンフォード大学の博士課程に在籍していた当時、世の中に大きなインパクトを与える何かを探すなかで、「これだ」と思ったのがCRISPRを利用した「Diagnostics (病気の原因分析 以下診断)」でした。CRISPRは専門外でしたが、CRISPRによる「診断」に可能性を感じ、同じ大学の院生と一緒に"Ophelia Diagnostics”という会社を始めました。

 偶然にも、この会社を設立したタイミングで、Jennifer Doudna博士と、博士の研究室に所属していた二人の院生が発表した革新的で独創的なCRISPR Diagnostics Systemに関する論文に出会いました。Doudna博士は、カリフォルニア大学バークレー校教授であり、ゲノム編集技術CRISPR/Cas9の共同開発者です。博士たちの論文は、私たちが「できるはずだ」と考えていたアイデアの実現性を裏付けるものでした。私は直ぐにDoudna博士に連絡を取りました。それから数ヶ月かけて、お互いの考えやビジョンを話し合い、そこにズレがないことを確認し、チームとして組むことを決めました。

 Doudna博士と、このシステムを発明した院生2人、そして私の4人がCo-founderになり、Mammothを設立したのが今から約2年前のことです。

「診断」をもっと身近に、簡単に

―CRISPRをどのように製品化しようとしているのか、教えてください。

 CRISPRと聞くと、DNAやRNAの切断など遺伝子編集やゲノム工学での活用が注目されていますが、CRISPRはプログラム制御が可能で、検索エンジンとして高精度に機能する点において興味深いと私たちは考えています。

 当社では、疾患の原因になっているDNAを特定して検出できるプラットフォームを構築し、簡単で即時に正確かつ高精度な結果が出る、使い捨てタイプの診断キットを製品化しようとしています。診断キットは、検査機関や医療機関で使えるものだけでなく、家庭で使えるものも想定しています。

 

 例えば、家庭で診断キットを使う場合は、血液を使うことは現実的ではありませんから、唾液や尿などを使うことが考えられます。診断は、専用容器に唾液または尿などを入れ、蓋をしてひっくり返すとすぐに結果が出るというイメージです。

 高精度なだけでなく、どの使用者にとっても手間にならないステップで簡単に行え、結果が出るまでの時間は30分以内と短時間に留めること、そして使い捨てタイプであることを重視しています。

 長期的には、診断キットの提供だけでなく、アプリまたはその他の方法で、結果を自動的にスマートフォン等にアップロードし、医師や医療機関などと共有でき、治療につなげる仕組みを作ることを目指しています。

―診断キットの価格はどのくらいになりますか。また、アプリついて教えてください。

 正確な価格設定はまだありませんが、特に家庭用製品においては、妊娠検査薬やHIV検査キットなど既存の市販商品と同様の価格で、購入しやすい価格帯に設定したいと考えています。

 アプリかもしれませんしアプリ以外の方法かもしれませんが、要は、診断で終わるのではなく、罹患していた場合、何をすべきかわかるようにし、治療等の次のステップにつなげたいということです。

「診断」からうまれるデータにも価値がある

―御社には競合他社がたくさんあると思います。他社との違いについて聞かせてください。

 診断技術は山ほどあります。CRISPRシステムは、精密な腫瘍学分野でも活用が進んでいますし、医療関係以外でも、信頼できる結果をより迅速に確認したい分野、例えば、農業、法医学、絶滅危惧種の検出、更には国境における違法品の検出など、幅広い分野での活用が可能です。

 当社は「高精度」「手頃な価格」「使いやすさ」「流通可能」な疾患の診断キットに特化しており、この分野で非常に特殊なポジションにいます。

―日本への進出は予定していますか。また、今後データ活用など考えられると思います。医療分野以外の企業とのパートナーシップはどのように考えていますか。

 現時点では日本への進出予定はありませんが、海外の企業や機関とのつながりはあります。

 私たちはソフトウェア関係のエキスパートではありませんから、例えば、診断結果などのデータをどのように活用していくのかという面で協力できるパートナーを見つけていきたいと考えています。



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