Image: CNote
CNoteは、米国内の「コミュニティ開発金融機関(CDFIs)」を通じて投資を行うサービスを提供している。同社の特徴は社会的な事業を支援するだけでなく、2.75%という高い金利を実現している点。拡大する社会的責任投資(SRI)市場で特に注目を集め、資産の開放、富の分配、さらには経済成長にも影響する可能性を秘めている。今回はCo-founder & COOのYuliya Tarasava氏に話を聞いた。

Yuliya Tarasava
CNote
COO
2004年、ベラルーシ共和国ベラルーシ国立大学で学士号(理学、経済学)取得。2007年に米国コネチカット州フェアフィールド大学で修士号(理学、ファイナンス)取得。その後、世界的資産運用会社のAMG Fundsにて商品開発とリスク管理分野で専門性を深める。ウォール街で約10年の金融関係の経験を積んだ後、2014年に非営利グローバルベンチャーファンドAcumenのGlobal Fellowとしてケニアに赴任。2015年にCatherine Berman氏と共同でCNoteを設立しCOOに就任。

公平性が利益につながる。現代そしてこれからの金融商品

―まずCNoteについて教えてください。

 CNoteは金融商品の未来を築くために、私ともうひとりの女性二人が共同で設立した会社です。既存の金融商品を見直すことで資産を開放し、従来ではアクセスできなかった投資先にアクセスできるサービスを提供しています。

 米国の金融業界でも、女性・少数民族・移民などの「カテゴリー」分けが行われており、伝統的な金融機関の多くはこれらの「カテゴリー」を対象としていません。しかし、こうした「カテゴリー」に含められている人々のビジネスも投資を必要としており、それに応えているのが「コミュニティ開発金融機関(以下CDFIs)」です。

 米国内には1,000を超えるCDFIsがあり、総資産規模は1,000億ドル以上と推定されています。それぞれのCDFIsが地理的な制限を設け、特定のコミュニティを対象にした大変ローカルな金融サービスの提供や財政支援および技術援助を行っています。地域経済を担う小規模ビジネスに出資・融資しているCDFIsが国全体の経済成長において重要な役割を果たしています。

 当社は、財務実績やインパクトとデューデリジェンスの結果に基づき「信頼できる」と認めたCDFIsの商品を当社のポートフォリオに加えています。現時点で、37の州にあるCDFIsと取引実績があります。

Image: CNote

―投資家が御社を選ぶ理由はどこにあるとお考えですか

 そうですね。社会的責任投資(以下SRI)市場規模は12兆ドルといわれ、二桁規模で成長を続けています。こうした動きからもわかるように、近年の投資家は利益だけを追求するのではなく、気候変動、男女平等や貧困問題など、世界や社会に貢献する取組に投資したいと考えるようになっています。彼らは、自分が得る利益がどのようにして生まれたか、その過程を重要視しているのです。

 そして、こうした投資家は公平性が保たれた商品を好みます。また、公平性が保たれている投資であれば受けたいという上記「カテゴリー」に分類されている有望な起業家も実際います。この両者をつなぐ商品を提供していることが当社サービスの特徴です。当社調べではありますが、公平性が保たれた投資が、イノベーションに繋がりサービスの有益性を高めたケースが多くあり、結果的に高金利還元にも繋がっている側面があります。

 当社はリテール金融商品と機関投資家向けの商品を提供しており、比率はちょうど半々です。リテール金融商品には、かなり多様な投資家の方々が投資しています。その男女比は半々ですが、6割以上がミレニアル世代で、SRIを意識している若い世代が当社を選んでいることがわかります。

技術とデータで「ポートフォリオ」に根拠を持たせる

―「独自技術」がどういった面で活用されているのか聞かせてください

 CNoteのサービスも銀行等と同じく、顧客から預かったお金を投資先に分配するわけですが、その際行うデューデリジェンスにおいて、また、デューデリジェンスに基づきポートフォリオを組む際にも当社の独自技術を活用しています。デューデリジェンスは、産業やCDFIsから提供された情報を元に当社が構築したデータベースを使って分析が行われます。

 また、このデータベースには、投資後のデータも含まれ、モニタープロセスにおいても活用しています。モニタープロセスまで一連のデータを取得し精査することで、よりスマートなデータベースを構築しています。

―技術でリスクも回避しているのでしょうか。

 技術の活用により、多様化したポートフォリオを組むことが可能です。これによってリスクの最小化につながっていると考えています。



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