Image: Wingcopter
ドイツのドローンメーカー、Wingcopterは、交通インフラが整っていない地域への医療物資や生活用品の輸送をはじめ、ECなどの商品配送の課題を解決するべく、垂直離着陸と長距離巡航が可能な機体と運航システムを開発している。2022年3月には伊藤忠商事と戦略的パートナーシップを締結した。既に、Wingcopter社が開発する固定翼型VTOLドローンを使い、アフリカなどで医療物資輸送も行われている。同社のChief Sales OfficerのArmando Koerig Gessinger氏に、プロダクトの特徴や業況、将来展望を聞いた。

医療体制の不備で子どもが亡くなる状況をドローンで解決したい

 Wingcopterは、CEOのTom Plümmer氏、CTOのJonathan Hesselbarth氏、CSO(Chief Services Officer)のAnsgar Kadura氏の3人が共同で2017年に創業した企業だ。Gessinger氏は、Plümmer氏を「コミュニケーションとマーケティングの天才」、Hesselbarth氏を「技術的な天才で発明家」、そしてKadura氏を「サービスやビジネスそのものを構築する天才」と説明する。

「共同創業者の1人がアフリカのある国に住む時期があり、医療体制の不備から子どもが亡くなる状況を見て、ドローンによって解決するビジョンを思いついたのです」(Gessinger氏)

Armando Koerig Gessinger
Wingcopter
Chief Sales Officer
大学で電気工学を専攻。1994年、研究開発(R&D)エンジニアとしてキャリアをスタートし、産業用オートメーション市場でソフトウェアの開発に携わる。2004年にワイヤレスネットワークと統合通信システム・オートメーション関連の企業を創業。事業を売却後、航空宇宙市場でのセールス&マーケティングディレクターを務め、2020年からWingcopterに参画。

 現在提供中のドローン「Wingcopter 198」は、ペイロード(最大積載量)は合計で最大6 kg、航続距離は最大110 km、デフォルトの巡航速度は100 km/hとなっている。風の抵抗についても、平均で風速15 m/s 、突風など最大で20 m/sにおいても飛行が可能だ。

 フランクフルト近郊の本社に生産設備があり、年間3000台の製造が可能な状態にある。機体だけでなく、運航をコントロールするソフトウェアである地上管制ステーションも統合したプラットフォームを提供している。

「地上管制ステーションは、ソフトウェアとクラウドコンポーネントがセットになっており、パイロットがリアルタイムでドローンのミッションをフォローできるように、制御できます。パイロットがミッションを作成してパラメータをアップロードしボタンを押せば、ドローンは自律的に飛行します」(Gessinger氏)

垂直離着陸と長距離巡航を両立する機体、管制ステーションによるプラットフォーム

 競合についてGessinger氏に聞くと、Wingcopterでは、垂直離着陸をし、飛行に優れた固定翼の両方の特性を持っていることや、複数の荷物を異なる地点に正確に落とす技術において優れていると説明した。エネルギー供給や、フライト制御のためのセンサー・通信システムに冗長性を持たせ、より信頼性を高められるよう設計されており、地上管制ステーションから1人のパイロットが複数の機体を制御することも可能であるなど、この分野における先進的な技術を持っていることを明かした。

 現在の主なターゲット市場は、物流インフラが整備されていない地域の医療分野だ。Gessinger氏は事例として、東アフリカのマラウイでの医療物資輸送について説明した。複数の団体、政府機関、銀行、開発銀行の協力を得たプロジェクトで、マラウイ国内にハブと呼ばれるドローンの拠点を置き、そこからワクチンなどの医薬品や生活必需品を輸送している。

 日本でも2021年4月、ANAホールディングスと、Wingcopterのドローンを用いた医薬品および日用品等のドローン配送事業化に向けた業務提携を締結。第一弾として長崎県五島市福江島~久賀島間で医薬品配送実証を行った。

 Wingcopterのビジネスモデルは、機体と地上管制ステーションから成るプラットフォームを販売するほか、初期投資なしでこれらをサービスとして利用できるプランも用意している。Gessinger氏は「たとえば、ヘルスケア企業が、アフリカのある国で自社製品の配達を行いたいと考えているとします。そこで必要な配達量への対価をいただく契約を結ぶこともできます。この場合、プラットフォーム購入の費用は一切必要ありません」と説明した。同じように、航空会社や物流事業者、ドローン運用の専業オペレーター向けにもサービスを提供しているという。

Image:Wingcopter

各国規制に対応しながら、グローバル展開 日本ではレベル4に向け伊藤忠商事と協働

 2022年3月に、伊藤忠商事はITOCHU Europe PLCを通じてWingcopterへ出資し、資本業務提携並びに販売代理店契約を締結した。Wingcopter198の専属販売代理とレンタル代理店業務における戦略的パートナーシップとなっている。同年6月には伊藤忠商事や投資会社などから4200万ユーロを調達しており、グローバル展開を進めていく予定だ。

 ドローンの飛行は、国や地域の規制があり、それに対応しなければならない。Wingcopterでは、グローバルにビジネスを展開するために、アメリカ連邦航空局(FAA:Federal Aviation Agency)から航空機のための型式証明書の取得を目指している。

「FAAを意識した機体を作ることで、他の国や地域の規制の枠組みに対応するのに役立ちます。各国の規制を深く理解していくことが重要です。日本においては、非常に有力なパートナーである伊藤忠商事と協力しながら、規制への対処をしています。現在、レベル3(離島・山間部などの無人地帯での補助者なし目視外飛行)の要件を満たしており、レベル4(都市や住宅街などでの目視外飛行)に向けて協働しています」(Gessinger氏)

 調達した資金の使途は主に2つある。1つはFAA認証のためのプロダクトの改良だ。各種規制への対応に加え、現行バージョンの顧客からのフィードバックも取り入れた改良を行う。もう1つは生産規模の拡大だ。

 Gessinger氏は「最初のプロダクトが商業的な牽引力を持ち始め、世界中のパートナーによって増幅される見込みがあります。しかし現状においては、生産規模を拡大するのは難しいです。より多くの人を雇う必要がありますし、現在世界が直面しているサプライチェーンの制約といった問題もあるからです。そのためまず人材を採用します。現在の従業員数は120名ほどですが、12カ月以内に2倍にする計画です」と説明した。

 日本市場については、伊藤忠商事と強力なパートナーシップを築いて推進中だ。Gessinger氏は「彼らは航空機のリースで非常に経験豊富です。大型民間航空機のリースや商業化に非常に慣れていますし、ドローン業界にも参入しています。現在、航空会社、健康、ヘルスケア、病院、研究所など、複数の潜在的な顧客に対応可能です。1年後、別のインタビューで成功事例をお話したいです」とコメントした。

 Wingcopterの機体は現在、最大積載量6kg、最大航続距離110kmだが、今後は、より多くの荷物をより広い範囲で運べる機体を作り、物流市場での存在感を高めていくことを見据えている。最大積載量についても、50kg、200kgと、さらに重い中間重量版の開発計画がある。将来的には、輸送手段としての利用も計画している。

「この市場のリーダーによって物流は強力なものになり、非常に大きな産業に成長することを確信しています。医薬品といったヘルスケアだけでなく、食料品、消耗品など、必要なものはなんでも扱うようになるでしょう。最終的に、都市部の航空輸送環境の一部として、人々を運ぶという構想もあります。それが、Wingcopterが考える未来のビジョンです。潜在的なお客様やパートナーにお伝えしたいのは、私たちはオープンであることです。皆様のニーズについて議論し、一緒に仕事をすることを熱望しています」



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