image: Shutterstock / Vector_Bird
AI半導体や次世代パワー半導体といった成長分野に、米国や欧州、中国、韓国、そして日本などが国を挙げて巨額投資をしている。まさに、「次世代の半導体戦争」の真っただ中だ。AI・パワー半導体の主要トレンドを知るとともに、NVIDIAの牙城を崩そうと試みるAI半導体スタートアップや、次世代パワー半導体における新素材開発を進めるスタートアップなど、独自技術やユニークなアイデアを武器に戦うスタートアップに注目してみよう。

※TECHBLITZでは、次世代半導体関連の国内外のスタートアップを独自に調査。記事後半では、中でも注目の5社を紹介します。

<目次>
AI・パワー半導体の主要トレンド
韓国のRebellions.aiがユニコーンに
光I/O技術のAyar Labsもユニコーンに
TECHBLITZが選ぶ、次世代半導体関連スタートアップ5選

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AI・パワー半導体の主要トレンド

 GPUなどAIチップを搭載したAIサーバーの市場は、2037年まで年平均成長率(CAGR)18.7%で拡大し、4,216億ドルに達すると予測されている。主流になりつつあるのは、機能ごとの複数のチップに分割し、最適な組み合わせでパッケージ化するチップレット設計だ。韓国のスタートアップ、RebellionsはHBM3eを統合し、NVIDIAはBlackwellアーキテクチャを推進している。
 
 パワー半導体では、SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)に加え、酸化ガリウム(Ga₂O₃)が有望視されている。EV充電器や再生可能エネルギーシステムの需要増加が技術革新を加速しており、各国政府も支援を強化。韓国は2030年までに国内AIチップ市場の80%を自国企業で占めることを目指し、米国エネルギー省(DOE)は光I/O技術への投資を進めている。

韓国のRebellions.aiがユニコーンに

 韓国のAIチップスタートアップであるRebellionsは、2024年1月にシリーズBで1億2400万ドルを調達。累計資金調達額は2億ドルを超え、企業評価額は6億5800万ドルに達した。同社はサムスン電子と戦略的パートナーシップを結び、大規模言語モデル向けの「Rebel」AIチップを共同開発しており、2025年に生産予定だ。現在、データセンター向けの推論チップ「Atom」は、サムスンの5nmプロセスで製造されている。

 2024年8月にはSKテレコムの子会社であるSapeon Koreaと合併し、韓国初のAIチップユニコーン企業となった。また、日本市場への展開を図るため、日本法人も設立している。

光I/O技術のAyar Labsもユニコーンに

 米国のスタートアップ、Ayar Labsは2024年12月にシリーズDで1億5500万ドルを調達し、企業評価額は10億ドルを超えた。これにより、累計資金調達額は3億7000万ドルに達している。

 同社は光インターコネクト技術を開発しており、従来の電気信号の限界を超えるソリューションを提供。データ転送速度を5~10倍向上させ、エネルギー効率を4~8倍改善することが期待されている。業界大手との協業も進めており、富士通と共同で16Tbpsの光伝送モジュールを開発し、HPEと次世代AIサーバー技術の提供で提携している。

関連レポート
【半導体スタートアップ50選】NVIDIA(エヌビディア)など大手企業との協業事例も紹介

TECHBLITZが選ぶ、次世代半導体関連スタートアップ5選

 半導体分野では、このほかにも革新的技術を持つスタートアップが台頭している。

 Falcommは、理論的限界を超えるシリコンベースのパワーアンプチップを開発。CrayoNanoは深紫外LED技術を活用し、水浄化市場への参入を進め、環境問題への対応を図っている。

 一方、Kubos Semiconductorsは低コストのGaN-on-Si技術を開発し、従来の照明市場の変革を狙っている。これらの進展は、AIやデータセンターにとどまらず、通信、環境技術、省エネルギー照明といった幅広い分野に次世代半導体技術が活用される可能性を示している。TECHBLITZ編集部が選ぶ、次世代半導体関連のスタートアップ5社の一覧はこちら。

1. Rebellions.ai

Rebellions.ai
AIモデルの計算処理を高速化するAIチップ
設立年 2020年
所在地 大韓民国 (韓国) ソウル
 Rebellions.aiは、AIモデルの計算処理を高速化するAIチップを開発。同社はAI向けの高性能チップとして、エッジコンピューティングに適した「ION」およびデータセンターをターゲットにした「ATOM」を展開。2024年1月、シリーズBで$124.0Mを調達。「ATOM」の生産増強 / チップの開発 / 雇用拡大に活用予定。
image: Rebellions.ai

2. Ayar Labs

Ayar Labs
次世代コンピューターに適した光チップ
設立年 2015年
所在地 米国 カリフォルニア州 エメリービル
 Ayar Labsは、次世代コンピューターに必須と言われる、高速でエネルギー効率にも優れた光ベースのチップを開発。シリコン処理技術により従来の銅を光I/O「チップレット」に置き換えると、データの移動のボトルネックが取り除かれ、チップのアイドル状態がなくなり、コンピューティングの処理速度とエネルギー効率が飛躍的に向上する。
image: Ayar Labs

3. Falcomm

Falcomm
高効率なパワーアンプ半導体チップ
設立年 2021年
所在地 米国 ジョージア州 アトランタ
 Falcommは、無線通信アプリケーション向けの高効率なシリコンベースのパワーアンプを開発。同社独自のパワーアンプ「Dual-Drive」は、パワーアンプの最大理論効率78.5%超を実現。28GHzでの実際の送信効率は、他の製品が30%前後であるのに対し、同製品は50%以上の効率を達成するという。
image: Falcomm

4. CrayoNano

CrayoNano
UV-C LEDテクノロジーによる殺菌ソリューション
設立年 2012年
所在地 ノルウェー ​​トロンヘイム
 CrayoNanoは、ナノ材料とフォトニックデバイス技術を活用した、エネルギー効率の高い深紫外線LED (UV-C LED) 半導体パッケージ部品を開発。同社のCrayoLEDは、設置面積を抑えつつも (3.5 mm x 3.5 mm) 、100mW (350mA) でピーク波長275nmを発することができるUV-C LED半導体部品である。
image: CrayoNano

5. Kubos Semiconductors

Kubos Semiconductors
緑色を克服したLED発色技術
設立年 2017年
所在地 イギリス ケンブリッジ
 Kubos Semiconductorsは、緑色に対応したLED発光技術を開発。同社のキュービックInGaN / GaN LEDは、量子井戸を横断する電界が無く、量子閉じ込めシュタルク効果 (QCSE) の影響を受けない。そのため青色より長波である緑色以降も効率を保ったまま発光する。
image: Kubos Semiconductors

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