image: GoodStudio / Shutterstock
欧米では「ノーロー(nolo)」や「ゼブラ・ストライピング(Zebra striping)」といったお酒にまつわる用語が、アルコール飲料市場の注目ワードとなっている。前者は、ノンアルコール飲料と低アルコール飲料の頭文字を取った造語で、後者は飲酒中に水やノンアルコール飲料を挟んで酔い方をコントロールする習慣。いずれも「飲みたいけど、酔いたくない」という近年のトレンドを反映したもので、背景には消費者のライフスタイルの変化や、企業やスタートアップの投資拡大に伴う味と品質の向上などがある。

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<目次>
海外でノンアルコール飲料が人気の理由
スタートアップが開発するノンアルコール飲料
日本のノンアルコール飲料市場は?
TECHBLITZが選ぶ、ノンアルコール関連スタートアップ5選

海外でノンアルコール飲料が人気の理由

 冒頭で紹介した造語のノーローは「Non-alcohol」「Low-alcohol」の頭文字をそれぞれ取ったもので、こうした飲料の市場規模は近年、拡大の一途を辿っている。

 業界団体IWSRが実施した調査によると、世界の市場シェア上位10カ国*におけるノンアルコール/低アルコール飲料の消費量は、2023年に前年比5%増の130億米ドル超を記録。2027年までの数量ベースの年平均成長率(CAGR)は6%で、内訳はノンアルコール飲料と低アルコール飲料がそれぞれ7%、3%になるとの見通しを示している。

 ブームの背景には、いくつかの要因が絡んでいる。例えば、あえてお酒を飲まない「ソバーキュリアス」というライフスタイルを選択する健康志向、Z世代やミレニアル世代を中心とした消費者の趣向の変化、ビールだけにとどまらずワインやスピリッツにも製品範囲が拡大したこと、大企業の投資拡大やスタートアップの参入に伴う味と品質の向上などが挙げられる。

 また、新型コロナウイルスの大流行時に飲食店の営業が制限されたことなどがアルコール消費の減少につながり、健康的なライフスタイルの選択肢へのトレンドを加速させたとも言われている。

*調査対象はオーストラリア、ブラジル、カナダ、フランス、ドイツ、日本、スペイン、南アフリカ、英国、米国の上位10カ国で、これらの国の消費量を合わせると世界のノンアルコール/低アルコール飲料の約70%を占める。

スタートアップが開発するノンアルコール飲料

 日本はキリンホールディングスが世界に先駆けてアルコール度数0.00%のノンアルコールビールを発売したように、長年このカテゴリーに親しんできた。ノンアルコールのカクテルやワインなどのバリエーションも増えてきているが、「ノンアルコール飲料といえばビール」という印象はまだまだ根強く、缶飲料での展開が多いのも特徴だ。

 海外のスタートアップに目を向けると、オーストラリアのスタートアップLyre's Spirit Coは、上質な原料で作られたノンアルコールのジン、ラム、ウイスキーといった蒸留酒を展開。本物のお酒のような味や香りを再現するだけでなく、世界各地から調達した天然エッセンスや抽出物を多く使用し、豊かな味わいに仕上げている。

 スイスのスタートアップ、REBELS 0.0%も同様にノンアルコールのジン、ラム、食前酒を開発しているが、健康志向に寄り添いオーガニック原料を使用している点が特徴。「オーガニック×アルコールフリー蒸留酒」というニッチな市場を攻めることで、スイス国内の飲食店やホテルなどからの需要を獲得し、カクテルに似せた「モクテル」の原料として使用されている。

image: REBELS 0.0%

日本のノンアルコール飲料市場は?

 もちろん、日本でもノンアルコール飲料市場は伸びている。サントリーホールディングスが2024年6月に公表したレポートによると、2023年のノンアルコール飲料市場は前年比1%増の4,133万ケースで過去最大の市場規模になった。これは、10年前と比較すると1.4倍の市場規模だという。
 
 この調査は2024年4月19~26日に男女3万人を対象に実施されたもので、それによると、月1回以上ノンアルコール飲料を飲んでる人の「ワインテイスト」「カクテルテイスト」の飲用経験率が上昇していたという。飲用シーンについては「夕食時」が最も多かったが、「休日の昼間」「友人や知人との集まりや飲み会の席」という回答も増加しており、若者を中心に多様なシーンでノンアルコール飲料を積極的に楽しむ傾向がみられたとしている。また、1年前と比べてノンアルコール飲料を飲む量が増えたと回答した人の理由としては「おいしさ」「種類の増加」「健康」が挙げられたという。
 
 なお、サントリーは2024年の市場規模は前年比1%増の4,191万ケースと、引き続き市場が拡大すると見込んでいる。

image: サントリーホールディングス提供

TECHBLITZ編集部が選ぶ、ノンアルコール飲料関連スタートアップ5選

 ノンアルコール/低アルコール飲料市場は、スタートアップの参入が盛んで味わいや原料などにこだわったユニークな商品が続々と投入されている。また、お酒を飲む量を減らすためのコーチングアプリなど自身の酒習慣自体を見直すためのサービスも登場している。TECHBLITZ編集部が選ぶ、ノンアルコール飲料関連のスタートアップ5社はこちら。

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1. Toast Ale 廃棄予定だったパンがクラフトビールに

Toast Ale
廃棄予定だったパンがクラフトビールに
設立年 2015年
所在地 イギリス ロンドン
 廃棄される余剰パンから造られるクラフトビール。パンにホップとイースト菌、水を加え生産されるビールは、パンの風味が全くせず、有名料理人やビールソムリエがお墨付きを与える味だという。日本では、長野県の醸造所Ajbとも提携。
image:Toast Ale

2. Lyre's Spirit Co 酔わない贅沢、プレミアムなノンアル蒸留酒

Lyre's Spirit Co
酔わない贅沢、プレミアムなノンアル蒸留酒
設立年 2019年
所在地 オーストラリア連邦 ライカート
 高品質なノンアルコール蒸留酒。本物のお酒のような味や香りを再現するだけでなく、世界各地から調達した天然エッセンスや抽出物を多く使用し、豊かで洗練された味わいに仕上げている。ミレニアル世代とZ世代を中心に、あえて飲酒をしない人々が増えており、ノンアルコール飲料の人気が高まっている。2023年8月に資金調達(金額非公開)を実施。
image:Lyre's Spirit Co

3. REBELS 0.0% オーガニック x アルコールフリー蒸留酒

REBELS 0.0%
オーガニック x アルコールフリー蒸留酒
設立年 2020年
所在地 スイス チューリッヒ
 アルコールを含まない蒸留酒の代替品。同社が開発したのは、ノンアルコールでオーガニック原料使用のジン / ラム酒 / 食前酒。伝統的な蒸留方法と最新の蒸留方法による独自の2回蒸留プロセスで、ノンアルコールながら、本物のお酒のような複雑で刺激的な味わいを実現している。
image:REBELS 0.0%

4. Liquid Death 見た目はお酒、中身はお水

Liquid Death
見た目はお酒、中身はお水
設立年 2017年
所在地 米国 カリフォルニア州 サンタモニカ
 スタイリッシュなデザインの缶に入った天然水。一見、度数が高いアルコールが入っていそうな缶デザインだが、中身はアルプスの天然水という斬新な製品。2024年3月に$67Mの資金を調達。既存の投資家に加え、俳優のJosh BrolinやNFLのオールプロで実業家のDeAndre Hopkinsほか個人投資家も参加。これにより、企業評価額は$14Bとなり、同資金は新製品開発と流通拡大に充てられる予定。
image:Liquid Death

5. Sunnyside 「もう飲まない!」のお助けアプリ

Sunnyside
「もう飲まない!」のお助けアプリ
設立年 2019年
所在地 米国カリフォルニア州サンフランシスコ
 コーチからのサポートなどによって効果的に減酒を進められる、飲酒量トラッキングアプリ。同社の科学的根拠に基づいてデザインされた同アプリでは、飲酒量の記録が容易にできるほか、必要に応じてコーチへの相談が可能。毎週ごとに目標の達成度合いが見れるため、無理なく減酒を進めることができる。2023年11月に$11.5M を調達。
image:Sunnyside

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