※TECHBLITZでは、生成AI分野の国内外のスタートアップを独自に調査。記事後半では、中でも注目の5社を紹介します。
<目次>
・業界への影響力は随一:① OpenAI
・OpenAI出身者たちが設立:② Anthropic
・アノ論文の共著者が設立:③ Cohere
・フランス拠点の急成長株:④ Mistral AI
・TECHBLITZが選ぶ、生成AI関連スタートアップ5選
1. Inflection AI(米国)
2. Milo(米国)
3. Intento(米国)
4. rabbit(米国)
5. Ema(米国)
① OpenAI
OpenAIは現CEOのSam Altman(サム・アルトマン)が中心となり、2015年に非営利組織として設立された。言わずと知れた「ChatGPT」を皮切りに、画像生成AI「DALL-E」、動画生成AI「sora」といったアプリケーションを立て続けにリリース。2024年5月にはテキスト、視覚、音声機能を統合した「GPT-4o」のデモ版を公開し、大規模言語モデル(LLM)をベースとしたマルチモーダル化というロールモデルを打ち出した。
出資元の著名VCは、初期投資家のKhosla Venturesを筆頭に、Andreessen Horowitz、Sequoia Capital、Tiger Global Manegement、Founders FundなどVC業界を牽引するビッグネームが並ぶ。
Microsoftも2019年からの初期投資家で、現在は筆頭株主。クラウドサービス「Azure」との統合を進めており、2023年1月には「Azure OpenAI Service」の一般提供が開始された。OpenAIの立ち上げには、あのElon Mask(イーロン・マスク)も携わっているが、営利組織への移行やオープンソース化などを巡る運営方針の違いが原因で袂を分かった。マスク氏は2023年7月、新会社「xAI」を設立し、リアルタイム情報を用いた「Grok」を開発している。
image: T.Schneider / Shutterstock
② Anthropic
OpenAIのライバルとして最初に名前が挙がるのはAnthropic(アンソロピック)だ。OpenAIの研究部門幹部だったDario Amodei(ダリオ・アモデイ)、妹のDaniela Amodei(ダニエラ・アモデイ)を含むOpenAI出身者複数名が2021年に共同創業した。兄のダリオがCEO、妹のダニエラが社長を務め、OpenAIへのアンチテーゼとして「無害なAI」を掲げる。
2023年3月に公開されたLLM「Claude(クロード)」は、AIの行動を規定する"憲法"を定めているのが大きな特徴。これは「Constitutional AI」(通称:憲法AI)という独自のAIトレーニングメソッドで、国連の世界人権宣言のガイドラインなどを判断の原則としているため有害なアウトプットが出にくい。性能面でも、2024年3月に公開された最新モデル「Claude 3」は、基礎数学の解やコードの生成など複数の指標テストで「GPT-4」やGoogleの「Gemini Ultra」を上回ったと発表されている。
出資陣営の中で注目すべきは、GoogleとAmazonの存在。OpenAIのライバルであるAnthropicへの巨額出資は、Microsoftへの対抗策であることは明らかで、AI戦略を巡るテック大手間の攻防と立ち位置が見て取れる。
2024年5月、OpenAIの元安全責任者でありながら、同社の安全性に取り組む姿勢を真っ向から批判していたJan Leike(ヤン・ライク)が、Anthropicに加わったことを明らかにした。OpenAIからの離脱が続く状況は、AI開発の中心にいる研究者たちからの警鐘と受け止めることもでき、「AIの安全性」は今後ますます重要なキーワードになりそうだ。
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③ Cohere
カナダに本拠地を置く2019年創業のCohere(コーヒア)も、OpenAIのライバルとして名前が挙がる。共同創業者でCEOのAidan Gomez(エイダン・ゴメス)は、大学在籍中からMicrosoftやGoogle BrainでAI研究に従事。Googleの研究グループが2017年に発表し、生成AIの基礎を築いた論文「Attention Is All You Need」の8人の共著者の1人として知られる。
LLMの弱点であるハルシネーション(幻覚)の有効な対策として期待されるRAG(Retrieval-Augmented Generation、検索拡張生成)に強みを持ち、法人向けに特化したAIプラットフォームを提供しているのが特徴。例えば、Oracleが法人顧客向けに提供する生成AIサービスはCohereとの提携によるものだ。
2023年6月に発表されたシリーズCラウンドではNVIDIA、Oracle、Salesforce Venturesなどが出資。それ以前の資金調達では、Index VenturesやTiger Global Managementが各ラウンドをリードした。
「Attention機構」に基づいた深層学習アーキテクチャ「Transformer」という仕組みを提案した論文。AIの歴史を変えたと評価される論文で、GPTの「T」はTransformerの頭文字を取ったもの。8人の共著者のうち、Niki Parmar(ニキ・パーマー)とAshish Vaswani(アシシュ・バスワニ)は、OpenAI出身のDavid Luan(デビット・ルアン)がCEOを務めるAdept AIの共同創業メンバーとなり、2人は同社を去った後、Essential AIを共同創業した。別の共著者のNoam Shazeer(ノーム・シャジール)はCharacter.aiを創業しており、各々がAI分野を中心に活躍している。
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④ Mistral AI
フランスに本拠地を置くMistral AIは、本記事で紹介する4社の中で唯一の欧州勢。学生時代から知り合いの間柄で、LLM・最適化の専門知識を有するAI分野の研究者3人が2023年に共同創業した。CEOはGoogle DeepMind出身のArthur Mensch(アーサー・メンシュ)が務め、Meta出身のTimothée Lacroix(ティモシー・ラクロワ)がCTO、Guillaume Lample(ギヨーム・ランプル)がCSO(Chief Science Officer)を務める。
創業メンバーの専門性に対する前評判は高く、シードラウンドはLightspeed Venture PartnersやIndex Ventures、Redpointなどの出資によって、創業1カ月後のまだプロダクトがない状態だったにも関わらず1億1300万米ドルを調達。さらに、同年末に実施されたシリーズAラウンドはAndreessen HorowitzやGeneral Catalyst、NVIDIAなども名を連ね、4億1500万ドルを調達し、評価額は20億ドルに達した。
Mistral AIはオープンソースでのLLMの基盤モデル展開を戦略に掲げ、OpenAIへの明確な対抗軸を打ち出している。コストパフォーマンスの高さや推論速度の速さにも定評があり、英語だけでなくフランス語、イタリア語、ドイツ語、スペイン語を得意とする点も特徴だ。Microsoftと戦略的提携をしたことも、同社の多角化戦略の一環として注目されている。
image: T.Schneider / Shutterstock
TECHBLITZ編集部が選ぶ、生成AI関連スタートアップ5選
こうした基盤モデルなどを活用し、バラエティに富んだ分野で生成AIを活用したアプリケーションが登場している。TECHBLITZ編集部が選ぶ、生成AI関連のスタートアップ5社はこちら。
1. Inflection AI
設立年 | 2022年 |
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所在地 | 米国 カリフォルニア州 パロアルト |
2. Milo
設立年 | 2019年 |
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所在地 | 米国 カリフォルニア州 サンフランシスコ |
3. Intento
設立年 | 2016年 |
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所在地 | 米国 カリフォルニア州 サンフランシスコ |
4. rabbit
設立年 | 2021年 |
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所在地 | 米国 カリフォルニア州 ロサンゼルス |
5. Ema
設立年 | 2023年 |
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所在地 | 米国 カリフォルニア州 マウンテンビュー |