image: mentalmind / Shutterstock
蒸し暑い日本の夏が、ジトジトと足音を立てて近づいている。暑さ対策といえば、エアコンで室温を下げたり、扇風機に当たったり、カーテンで日光を遮ったり。しかし、近年のスタートアップの技術によってこれまでなかったアイデアも生まれている。例えば、体に接触した部分を冷やしてくれる電子デバイス、屋根に塗って日光を放射させる特殊塗料などがそれだ。本記事では、テクノロジーで新たな夏の快適性を提供してくれるスタートアップを見ていこう。

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<目次>
ペルチェ素子搭載で「触れると冷たい」
放射冷却現象を応用した「木陰の涼しさ」
TECHBLITZが選ぶ、クールテック関連スタートアップ3選

ペルチェ素子搭載で「触れると冷たい」

 例えば、スタートアップ創出などを支援するSonyのアクセラレーションプログラムから生まれた社員発案のウェアラブルデバイス「REON POCKET(レオンポケット)」はデバイス自体が冷たくなる製品。あくまでもデバイスが冷たくなる仕組みで、冷風が出るわけではないのが新しいところだ。

 この製品に搭載されているのは、ペルチェ素子といわれるサーモモジュール。ペルチェ素子は通電することにより、片側が冷えて、反対側が温まる半導体モジュールで、デバイスが接触している部分の体温を下げることができる。インナーウェア装着型なので、夏でもスーツを着用する機会のあるビジネスパーソンにも嬉しい製品だ。ちなみに、冷温対応で冬でも使用できる。

 ポーランドのスタートアップ、DAC(Dynamic Air Cooling)は、冷蔵庫やエアコンの媒体に使用されている「代替フロン」ではなく、空気を媒体として使う冷気発生技術を開発した。これまでの冷却装置は、ガスの断熱圧縮・膨張プロセスの原理に基づいていたが、DACが開発したのは空気の熱エネルギーを運動エネルギーへ変換することで空気を直接冷却するという新しい技術。温室効果のある代替フロンを使用しないだけでなく、空気から取り出したエネルギーを電力に変換するためエネルギー効率が高く、環境に優しい技術となっている。

image: Sony Thermo Technology

放射冷却現象を応用した「木陰の涼しさ」

 地球上の熱が宇宙に放出されて地表が冷える「放射冷却」という現象を応用した技術で、「電力を使わずに冷却」することを可能にした日本発のスタートアップもいる。大阪ガスがベンチャーキャピタルのWiLと合弁で設立したSPACECOOLで、「世界に木陰の涼しさを」という聞くだけで涼しくなりそうなスローガンを掲げている。

 独自の多層構造によって、太陽光をブロックし熱吸収を抑える遮熱機能(反射率95%以上)と、「大気の窓*」の波長域の赤外線を増大し、宇宙に放射を行うことで熱を捨てる放射冷却機能(放射率95%以上)を両立している。

大気の窓とは
大気には光の透過率が高い波長と、透過率が低い波長が存在する。光エネルギーの形で熱を宇宙空間に輸送するには大気の透過率が高い波長が優れており、特に透明性が高い波長8-13μmの波長範囲を「大気の窓」と呼ぶ。

 同じ放射冷却現象の応用で、屋根に当たる太陽光を放射して建物の温度上昇を抑える「放射冷却塗料」を展開しているのは米国のスタートアップ、Ceracoolだ。同社が開発した「放射冷却塗料」は、屋根に塗ると太陽光を95%以上跳ね返し、周囲の空気や建物を温める効果を大幅にカットできるという優れモノだ。なお建物の屋根だけじゃなく、道路にも塗ることができる。

image: Ceracool

TECHBLITZ編集部が選ぶ、クールテック関連スタートアップ3選

TECHBLITZ編集部が選ぶ、クールテック関連のスタートアップ3社はこちら。

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1. SPACECOOL株式会社 ゼロエネルギーで外気より低温にする

SPACECOOL株式会社
ゼロエネルギーで外気より低温にする
設立年 2021年
所在地 日本 東京
 SPACECOOLは、大阪ガスとWiLのジョイントベンチャー (JV) として設立されたスタートアップで、独自の光学設計と自然の放射冷却現象を活用したゼロエネルギーの冷却ソリューションを開発。倉庫や工場などの建造物、トラックやバスなどに適用することで、エネルギーを追加投入せず、冷却効果を得ることが可能。ビーチパラソルや日傘などのグッズで、熱中症対策などでの活用もできる。
image:SPACECOOL株式会社

2. Ceracool ガラスコーティング剤で温度を約3.5℃下げる

Ceracool
ガラスコーティング剤で温度を約3.5℃下げる
設立年 -
所在地 米国 メリーランド州 カレッジパーク
 Ceracoolは、主に建物の屋根に用いられ、建物の温度を下げる効果を持つ微多孔性ガラスコーティング剤を提供。同コーティング剤を建物の屋根などに塗布すると、太陽光や赤外線を95%以上反射 / 放射し、建物が熱を取り込むのを防ぐ。建物の屋根のほかにも、道路や熱交換器、冷蔵輸送コンテナなど、幅広い用途に適用可能。
image:Ceracool

3. Dynamic Air Cooling 熱放射しない、環境に優しい空調&冷却

Dynamic Air Cooling
熱放射しない、環境に優しい空調&冷却
設立年 2019年
所在地 ポーランド エルブロンク
 Dynamic Air Coolingは、地球温暖化の原因となる代替フロンを使わず熱放出のない、環境に優しい空調 / 冷凍技術を開発。特許取得済みの同技術は、従来のガスの断熱圧縮 / 膨張プロセスとは異なり、空気の熱エネルギーを運動エネルギーへ変換することで空気を直接冷却する。
image:Dynamic Air Cooling

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