目次
・クローズドイノベーションとは
・クローズドイノベーションの歴史的背景と普及の理由
・オープンイノベーションの台頭と対比
・クローズドイノベーションのメリットとデメリット
・クローズドイノベーションの過去事例
・クローズドかオープンか、現代における使い分けのポイント
・新規事業開発に当たっての示唆
・まとめ
クローズドイノベーションとは
クローズドイノベーション(Closed Innovation)とは、研究開発から製品化、販売までをすべて自社内部で完結させる従来型のイノベーションモデルです。
外部パートナーとの協働を行わず、知識や技術、ノウハウを組織の内部に閉じ込めて進めることが特徴です。
20世紀の多くの大企業はこのモデルを採用しており、知的財産や技術を外部に出さないことで競争優位を保ってきました。
クローズドイノベーションの歴史的背景と普及の理由
クローズドイノベーションが主流だった理由には、以下のような環境要因があります。
- 研究開発の集中化:産業革命後から20世紀半ばまでは、資本と人材が大企業に集中し、外部連携の必要が小さかった
- 知的財産の秘匿性:技術や特許を囲い込み、他社との差別化を図ることが競争優位に直結していた
- 知的財産の秘匿性:技術サイクルが長く、外部のアイデアを取り込むスピードが求められていなかった
こうした背景から、クローズドイノベーションは長く「安全で王道」とされてきました。
オープンイノベーションの台頭と対比
2003年、UCバークレーのヘンリー・チェスブロー教授が提唱したオープンイノベーションは、クローズドモデルの限界を打破する概念として登場しました。
グローバル化とデジタル化が進む中で、次のような理由から外部との連携が重要になっています。
・技術の進化スピードが上がり、単独開発では追いつけない
・研究開発コストの増大
・スタートアップなど外部プレイヤーの役割拡大
・顧客ニーズの多様化と市場変化の速さ
クローズドイノベーションのメリットとデメリット
メリット
- 知財保護が容易:競合に技術が流出しにくい
- 一貫性のある戦略:製品開発から販売まで自社で統制できる
- 品質管理がしやすい:外部連携による調整コストがない
デメリット
- スピードの限界:外部の新技術を取り込めず市場変化に遅れやすい
- 研究開発コストの増大:自社負担が大きく効率が悪い
- 人材・発想の多様性不足:閉じた環境では革新が生まれにくい
クローズドイノベーションの過去事例
- ベル研究所(AT&T):20世紀半ば、トランジスタやUNIXなどを内部研究で創出。大規模な社内R&Dの象徴。
- ゼロックス・パロアルト研究所(Xerox PARC):GUIやマウスを開発したが、社外への技術移転が遅れ、他社(Apple, Microsoft)に先行される結果に。
- 日本の大手製造業(1980~90年代):トヨタ、ソニーなども自社開発を基本とした垂直統合モデルで成長。
こうした企業は、安定した市場と長期開発が前提の時代には強力なモデルでしたが、デジタル時代のスピードに適応するには柔軟性が課題となりました。
クローズドかオープンか、現代における使い分けのポイント
クローズドイノベーションは、完全に時代遅れではありません。以下のような領域では依然として有効です。
・基盤技術やコア特許の保持が競争優位に直結する分野
・高い安全性・品質管理が求められる医薬品・航空宇宙など
・国家安全保障や機密性が重視される領域
一方で、新規事業や顧客体験の革新を狙う場合は、オープンイノベーションを併用することでスピードと柔軟性を確保できます。
新規事業開発に当たっての示唆
・両者を対立軸ではなく補完関係として考える
コア技術はクローズドで守りつつ、顧客接点や周辺技術はオープンに展開する「ハイブリッド型」が有効。
・知財戦略を明確にする
どこまでを社内で囲い込み、どこからを連携に活用するかを最初に整理。
・外部ネットワークを持つ
大企業とスタートアップの協働は、双方の強みを活かした競争優位の源泉となる。
まとめ
クローズドイノベーションは、自社内完結型の従来モデルであり、知財保護や品質管理に強みがある一方、変化の速い市場では限界が見えてきました。オープンイノベーションとの違いを理解し、事業特性に応じて「守る領域はクローズド、攻める領域はオープン」という戦略的使い分けが求められます。