インターネットから隔離して秘密キーを管理
―仮想通貨が広まり、どのような問題が出てきたのでしょうか。
2008年にビットコインが誕生して以来、非常に多くのハッキングが発生してきました。情報をオンライン上で管理していると、ハッカーが盗むのが非常に簡単で狙われやすかったのです。そこで、仮想通貨を管理する際に必要な秘密キーをインターネットから隔離して保管することができるデバイスを作りました。「Ledger Nano S」という小さなハードウェアで、外部から独立した物理的なボタンとスクリーンを利用することで、ハッカーによる不正アクセスを防ぎます。これまでに165か国で100万ユニット以上を販売しています。
47種類の仮想通貨に対応、企業向けも
―強みはどこにありますか。
47種類の仮想通貨を管理できます。オープンソースを利用しているので、今後も対応通貨は増えていくでしょう。市場でかなり人気がでているのは、このカバレッジの広さが勝因だと思います。
企業向けの展開もはじめました。いまや、ヘッジファンドや銀行が、数百万ドルから億ドル単位で仮想通貨に投資をしています。1人の人が責任をもって管理するとなると、数億円を現金で持っているようなものです。当然、「ガバナンス」が必要になってきます。これをサポートするために複数のサインに対応し、時間でロックする仕組みなどを持つ「Ledger Vault」という製品を提供しています。これにより、セキュリティのことを心配せずに、売買などのトレーディングや契約そのものに集中してもらえるようになります。
Ledger Liveにも約50万人のユーザー
―どのようなビジネスモデルでしょうか。
基本的にはハードウェアを売っています。Eコマースのプラットフォームも自分で持っていますし、Amazonなどの別チャネルでも購入できます。OEMのホワイトレーベルもあります。それから、ソフトウェアウォレットと言っていますが、「Ledger Live」という枠組みの顧客向けサービスも提供しています。仮想通貨を売買したり、仮想通貨から別の仮想通貨に交換したい顧客に選択肢を提供して、マージンをもらうモデルです。Ledger Liveにも約50万人のユーザーがいます。
仮想通貨が第四次産業革命に
―どのような経緯でこの会社を起こすことになったのでしょうか。
22年前に最初の会社を作って以来、Ledgerは私にとって8個目の会社です。前の会社を売却したあとに、ビットコインやブロックチェーンの技術が第四次産業革命となって社会のあり方を変えていくだろうと確信し、この分野で何かしなくてはと思いました。とはいえ、何をするかが当時は定かではなかったので、まずはパリでビットコインを売買する場を作りました。そうこうするうちに、ハードウェアウォレットのプロトタイプを作っていたセキュリティの会社と、郵送によってビットコインを売っている会社に出会いました。彼らはプライベートキーを送るメディアを欲していたんです。それで、この2社と一緒に動き始め、3つの会社を統合してできたのがLedgerです。
東京に拠点も検討
―今後の展望と日本への関心を教えてください。
もっと国際的に展開を広げていきたいと考えています。フランスから米国に来て、サンフランシスコのあとニューヨークに、それから香港でも拠点を作りました。5年以内にこの分野のグローバルリーダーになれるよう、最も高い質の製品を提供し続けていきます。すでにアジアでの取引は韓国などでも発生しており、日本にも何社かクライアントがいます。日本は市場が成熟しており製品販売にも最適だと思いますので、アジア展開の拠点として東京にオフィスを開くことも考えています。