スマートな資産運用をエネルギー企業にも
――まずOrigamiの製品について教えてください。
Origamiは、グリーンエネルギーへの転換を支援するパワフルなソフトウェアを開発しています。私たちのソフトウェアは、エネルギー取引の場面で扱われる大量のデータを処理し、電力の売買をシンプル化しようとしています。
今やリアルタイムでそのプロセスはどんどん複雑になっていますが、私たちはなるべくエネルギー会社が使いやすく、取引ポジションを管理しやすいソフトウェアを設計しています。
――どうしてそのような製品を設計しようと思ったのですか?
例えば10年前であれば、私たちのような会社は必要がありませんでした。エネルギー業界は比較的シンプルな業界だったからです。3〜4年前から再生可能エネルギーが話題に上り始め、急速に成長していったことで状況は変わり始めました。
エネルギー会社はそこで、2つの問題に迫られます。1つ目は、リアルタイムでエネルギーの需要と供給を管理する難しさ、そして2つ目は、送電網に供給される再生可能エネルギーの量が多ければ多いほど、天候に左右され価格が非常に不安定となることです。
価格の不安定さと、電力の需要・供給を共に管理し、バランスを取るにはそれ相応のハイテク技術が必要となってきます。過去にはエクセルで済んだことが、今では膨大な量のデータを処理できるAIベースのリアルタイムソリューションが必要です。
私たちのソリューションは、顧客が現在ある取引ポジションやアセットを「見て」、市場の上下から「決断をし」、その決断をもとに売買の「行動をする」という3つの面で手伝いをしています。それを リアルタイムで行うというのが特徴です。
Image: Origami
エネルギーを新しいテックの形へと「折り込む」
――起業のきっかけは何ですか?
私はもともと、エネルギー関連の上場企業のCEOでした。その後、一時は投資会社でも働いていたのですが、その企業はテック関連のスタートアップに何百万ドルもの金額を投資していました。 ロンドンでベンチャーキャピタル系の活動をしていたのです。
色々なテック企業に投資は行うのですが、エネルギー関連企業への投資はゼロ。ソーラー施設等、インフラ投資は行うのにテックソリューションには投資を行わないのです。Origamiのビジョンはそこから始まりました。パワフルなデジタルソリューションがないと、エネルギー会社は成功しない時代です。
そこで私は、その2つのギャップを埋めようと思い、エネルギー資産とテックを融合させた企業を作り、資金調達を行うまでにこぎつけることができました。
――どうしてオリガミと名付けたんですか。社名の由来を教えてください。
日本古来の、手を使ったアートである折り紙の技法は、私たちの行っていることに通ずるものがあります。折り紙を使って様々な形を作り上げるのと同様に、エネルギーをソフトウェアに折り込んでいる、という意味です。
幅広い事業者を対象に取引し、日本企業とも提携中
――どのような企業と取引していますか。
多種多様なエネルギー関連企業と協働しています。例えば、グローバルな大手のエネルギー会社は、非常にアクティブな取引デスクを保有している上、クライアントもたくさん抱えていて、数十億ドル相当の物的資産も所有しています。
また、物的資産を所有していなくても、電力の卸・売買のみを行う企業もあります。そして、中には、ソーラーパネルや、風力発電所等で設置されるような非常に大規模な蓄電池を製造している企業もあります。私たちは、これら3タイプの企業を含め、電力事業に携わる様々な企業と仕事をしています。
Image: Origami
――今年6月には、シリーズCの2000万ポンドの資金調達を行いました。調達した資金の使い道は何でしょうか?
使い道は3通りを考えていて、1つ目はソフトウェア開発への投資です。クライアントのニーズを満たせるような拡張性のあるソフトウェアとなるよう、製品開発に投資を行っています。
2つ目は、ブルーチップのBtoB企業と築いた関係を、今後も維持し、さらに広げていくことです。そして2つ目に関連しますが、3つ目の使い道はその関係を広げる意味での世界展開を考えています。今までは主に英国をターゲットにしていましたが、グローバル展開している大企業にも使ってもらえるよう、英国外にも進出していきたいと考えています。
――日本企業とは連携していますか。また今後の目標は何でしょうか?
私たちは、日本の大手商社である丸紅の子会社と提携していて、さらに、三菱商事が一部所有するヨーロッパのエネルギー企業とも提携しています。私たちの設計した英国発のソフトウェアは、日本を含む世界各国の市場で応用可能です。
長期的な目標は、Origamiがエネルギー取引の業界を先導するテクノロジー企業となることです。他の企業同様、進出するマーケットではやはり一番でいたいと思いますし、上場も目指したいと考えています。短期的には、今のクライアントとの関係を維持しながら、より拡大していくことでしょう。