「P2Pレンディング」と呼ばれる、お金を借りたい人と貸せる人を結ぶオンライン上のプラットフォームを運営している Funding Circle。当社は、2010年の設立以来、15000人以上のビジネスオーナーと、43000人の資金の貸し手を繋ぎ、すでに海外5カ国へのサービス展開を果たしている。今回は、Co-FounderのHodges氏にサービス概要や今後の計画、そして起業家へのアドバイスを聞いた。

(2018年にIPO。2023年6月追記)

Sam Hodges
Funding Circle
Co-Founder
スタンフォード大学でMBAを取得後、ベンチャーキャピタリストやスモールビジネス向けローンのLending Network社のCo-Founderを歴任、その後同社がFunding Circleに買収され、Co-Founder兼Managing Directorとして就任。

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世界5カ国で、これまでに20億ドルを融資

―まず御社の概要を教えてもらえますか。

 私たちは、中小企業向けのグローバルマーケットプレイス「Funding Circle」を運営しています。現在、米国、イギリス、ドイツ、スペイン、オランダの5カ国で活動しています。 2010年の設立以来、私たちは世界中の中小企業に約20億ドル融資してきました。

 融資の方法はとても簡単です。借り手はさまざまなチャネルから、私たちのサイトに訪れます。非常にシンプルな申し込みプロセスののち、私たちは借り手の基本的な情報に基づき、融資対象として適格かどうかを判断します。そして中小企業は早く、自分たちの都合に合わせて資金を調達することができます。一方、貸し手としても、さまざまな投資家、公的機関、個人が高品質な投資商品を探しています。彼らはFunding Circleを新たな投資対象として活用しているのです。

中小企業向けの融資に特化

―御社は金融業界のどんな問題を解決しているのでしょうか。

 私たちが取り組んでいるのは、中小企業の経営者が融資を利用できるようにすることです。世界のどこでも中小企業の経営者は融資を得ることにかなりの時間を費やしています。ほとんどの銀行は大企業の融資と、個人への融資に力を入れています。クレジットカード、モーゲージ、スーパーローンについてはイノベーションの余地がないわけではありませんが、すでに銀行においてかなり確立されたものとなっています。米国では信用貸しのニーズを持つ中小企業はたくさんあります。彼らは人材を採用し事業を拡大したいと考えていますが、どこにも信用貸しをしてくれるところがありません。私たちはその問題を解決したいと考えているのです。

―借り手の金利はどれくらいですか。

 最低の金利が5.5%。これは銀行が貸す場合とほぼ同等の水準です。金利はリスクによって変動し、幅としては5.5%から22.8%までになります。

―借り手の信用度をどう評価していますか?

 信用リスク評価には、3つのステップがあります。1段階目は、まずその中小企業のいくつもの要素を見て、融資対象として適格かどうか決定します。その要素とは、事業、所在地、資産、営業履歴、経営者の個人の側面です。そのステップを通じて、その企業から多くの情報を収集します。2段階目では、リスクスコアリングを実施します。債務不履行となる可能性を算出し、融資の利率を決定するのです。3段階目は、とてもユニークなステップで、すべての承認した融資を経験豊富なスタッフがレビューします。私たちの融資規模は1件あたり約14万ドルと大きいため、人を介したチェック作業ができるのです。

貸し手としても高利回りがメリット

―貸し手としてはどのようなメリットを得られるのでしょうか。

 貸し手にとっては高利回りの機会があります。通常、米国の借り手は、成長ビジネスによって8年間で1-2億円の収入があります。それはリスク調整後の利益が魅力的であることを意味します。どの程度リスクをとるかにもよりますが、投資家は1桁後半から十数パーセントの利回りを得ていますね。

―御社はどのように収益を稼ぐのでしょうか。ビジネスモデルを教えてください。

 2つの方法があります。ひとつは、融資が成立した場合、借り手から手数料をいただきます。その手数料は、融資額の1〜5%です。もうひとつは、貸し手から年に元本の1-2%のサービスフィーをいただきます。

―他のP2Pレンディングプラットフォームと比べた強みは何でしょうか?

 ここ10年、世界の金融サービスにおいてP2Pレンディングプラットフォームは、非常に大きな事象となっています。その中でも私たちのプラットフォームは3つの点で特徴的です。1つ目は、中小企業の融資に焦点を当てていること。多くの同業他社は個人への融資に力を入れています。2つ目は、グローバル展開していること。現在、私たちは5カ国で展開をしており、これは他のサービスにない特徴です。3つ目は、マーケットプレイスを構築してきた方法です。私たちは多様なルートからの資金調達に力を入れ、さまざまな公的機関や3万5000もの個人投資家が貸し手となっています。そのため、資金源が安定していると言えます。

パートナーを得て、日本にも進出したい

―中小企業向けのP2P融資の市場規模はどれくらいだと推定していますか。

 中小企業向けの融資の市場は非常に大規模です。米国だけでも2500億ドルと推定しています。もちろん他の国も合わせれば、さらに大きくなるでしょう。

―アジア、日本進出についてはどのようなプランを持っていますか。

 アジア市場には大変興味を持っています。また私たちのサービスを必要としている中小企業も多く存在していると思います。私たちは5カ国に進出し、さらなるグローバル展開の機会をうかがっており、アジアにもぜひ進出したいと考えています。

 中でも、日本は世界的に見ても大規模で、ダイナミックで、洗練された市場です。銀行のシステムが確立されていると同時に、私たちのサービスを必要とする多くの中小企業の経営者がいると確信しています。ですから日本に進出することは大変興味深く、あとは進出のタイミングですね。日本では中小企業の経営者にアクセスできる、テクノロジーカンパニーや金融機関などのパートナーを求めています。同時に貸し手となる投資家のチャネルも探しています。つまりマーケットの貸し手と借り手の両サイドです。将来的にどのようにパートナーと日本で成功させていくか、考えていかなければいけません。

事業フェーズごとに分解して、企業をスケールさせよ

―少しトピックが変わるのですが、あなたはスタートアップを立ち上げ、ユニコーンにまで成長させました。スタートアップを成長させるためのアドバイスを起業家に伝えてもらえますか。

 私から言えることは、スタートアップはステージごとに分解してスケールさせていくということです。まず最初の段階では、リソースを多く集めたり、計画を立てたり、あまりに多くのことをする必要はありません。リソースをビジネスに投入し、根本的な事業の検証を行い、あなたが何をしようとしているのか、周囲に理解してもらうことが大事です。次の段階では、商品の市場の適合性を改善します。その中で、事業は実際にある程度スケールしているはずです。その過程で、可能な限り事業の仕組みを最適化し、安定させます。第3段階では、新しいスキルを事業に取り込まなければいけません。複雑な組織を運営してきた人や、異なる分野で活躍してきた人を取り入れることです。私たちの場合、借入、融資、テクノロジーなどの分野で世界トップレベルのリーダーを採用することに成功し、事業規模を大きく拡大させることができました。

 もうひとつ言えるのは、これは私たちの価値観でもあるのですが、冒険の権利を活かすということです。会社にはたくさんの仕事があり、良い日があり、また悪い日もあります。そんな中でも、いつでも笑顔で、自分の仕事に情熱を持ち続けること。これはとても重要だと思います。

―最後に今後のビジョンを聞かせてください。

 中小企業の融資ビジネスにおいて、世界のリーディングカンパニーとなることです。中小企業向けの融資は、世界のどの地域にでもあり、そしてうまくいっていません。中小企業の経営者は事業拡大するための資金集めに苦労しています。私たちのビジョンは、世界中の中小企業の最初のコンタクトポイントとなり、成長を目指すための信頼できるパートナーになることです。

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