金融業界は今、急速な変化のさなかにあります。個人の生活に関わる部分でいえば、欧米では若年層を中心に「モバイルバンク」を利用することが当たり前になりつつあります。また資産運用のアドバイスは、経験豊富な証券マンに聞くことが唯一の選択肢ではなくなりました。今では人工知能(AI)が顧客のニーズを汲み取った上で、個々人のリスク許容度に見合った資産配分(ポートフォリオ)を提案してくれます。伝統的な金融機関も時代の変化を読み取り、フィンテック分野のスタートアップと協業などを通して、現代の消費者のニーズに沿ったサービスの提供に積極的に取り組んでいます。今回は、フィンテックに関連するテーマを14に分けて、テーマごとに代表的なスタートアップを紹介します。

※本記事はTECHBLITZが配信した「FinTech Trend Report」をダイジェストで紹介したものです。レポートをご覧になりたい方はこちらまたは本記事末のフォームからお問い合わせください。

<目次>
保険業界の変化
フィンテック、14の注目カテゴリー
1. モバイルバンク
2. ロボアドバイザー・PFM
3. BNPL(Buy Now, Pay Later)
4. 学生ローン
5. AI投資・アルゴリズム取引
6. 事業会社向けファイナンスカード発行
7. 金融機関向けAPI
8. 仮想通貨・NFT
9. 健康スコア活用の保険
10. AIによる保険金算出・オペ迅速化
11. 安全運転・走行距離に応じた自動車保険
12. EC商品の保証延長サービス
13. スモールビジネス・フリーランス向け保険
14. 保険金詐欺検出

保険業界の変化

 金融業界もさることながら、保険業界の変化も見逃すことはできません。これまでは半ば一律的に決められていた保険料を、加入者一人ひとりの「健康スコア」を測定することで、より最適化された保険商品を開発することが可能になりました。また自動車保険も同様に、ドライバーの運転習慣が保険料に直結する時代がすぐそこまで来ています。 

フィンテック、14の注目カテゴリー

Image: FinTech Trend Report

1. モバイルバンク

 銀行の支店を訪問したり、書面にハンコを押したり、何十分もの行列に待ったり、窓口で担当者と直接やり取りしたり…一昔前までは「常識」であったこのような光景ですが、現代ではリモート取引を好む人が増えています。スマートフォンとインターネット環境さえあれば口座開設から送金まで完了できるモバイルバンクは、若年層を中心に着実に普及してきているようです。

Varo Money
最低入金額なしのモバイルバンク
所在地 San Francisco, California, US
創設年 2015年
資金調達額累計 $482.3 M / Series D
出資者 Westbrook Enterprises, PROOF, etc.
URL https://www.varomoney.com
手数料無料、高利息のデジタル専用バンキングサービスを提供。モバイルアプリ経由で、クレジットスコアの審査なしに口座開設ができ、最低入金額なし / 月間口座維持費用なし/ 当座貸越費用なし。同社が発行するデビットカードで、TargetやCVSといった米国大手小売チェーンに設置された5万ヶ所以上のATMを無料で利用できるのも特徴。また、普通預金に高利率を設定しており、毎月最低$1,000の入金などの条件を満たすと最大3.00%となる。
Image : Varo Money HP
Chime
「隠れた手数料」を撤廃した銀行
所在地 San Francisco, California, US
創設年 2013年
資金調達額累計 $1.5 B / Series F
出資者 Access Technology Ventures, Dragoneer Investment Group, Esalen Ventures, etc.
URL https://www.chime.com
ミレニアル世代などの若年層をターゲットとしたモバイル銀行。送金や海外決済の際に生じる手数料等を廃止しており、米セブンイレブンなど約6万ヶ所に設置されたATMの利用料も無料。Chime以外の銀行口座を保有するユーザーへも即時送金ができ、相手側はアプリダウンロードや追加料金も必要ない。実店舗を持たないものの、2020年2月時点でユーザーは800万人に及ぶ。
Image : Chime HP

2. ロボアドバイザー・PFM

 資産運用の助言をもらいたい場合は、経験と知識を持つファイナンシャル・アドバイザーに頼るのが普通でした。しかし人工知能(AI)技術が発展するにつれ、ロボアドバイザーが私たちの重要な意思決定をサポートすることが常識になりつつあります。様々なパターンを学習した AIが導き出す助言は、担当者ベースの分析では見逃されていた「気づき」が含まれているのかもしれません。

Bambu
金融機関向けB2Bロボアドバイザリー
所在地 Singapore
創設年 2016年
資金調達額累計 $14.0 M / Series B
出資者 PEAK6 Investments, Plug and Play Tech Center, etc.
URL https://bambu.co
資産運用のロボアドバイザープラットフォームを開発。同社のAPIは、金融機関がミレニアル世代向けにロボアドバイザーサービスを提供したり、エージェント(資産管理担当者)向けにツールを開発するのをサポートする。それぞれの顧客層に合わせてオリジナルのロボアドバイザリーを組み立て、資産運用のゴール設定に従ってリスクプロファイルやポートフォリオを作成可能。HSBCなどが利用。
Image : Bambu HP
Truebill
値下げ交渉もしてくれるファイナンスアプリ
(2021年にRocket Companiesが買収。2023年6月追記)
所在地 Silver Spring, Maryland, US
創設年 2015年
資金調達額累計 $84.7 M / Series D
出資者 Accel, Cota Capital, Bessemer Venture Partners, Eldridge, etc.
URL https://www.truebill.com
個人向けファイナンスマネジメントアプリを提供する。AIを活用し、個人の支出やサブスクリプションの管理を行い、ユーザーの効率的な貯蓄をサポート。不要なサブスクリプションの退会を提案したり、携帯電話やケーブルTV料金などを最安値価格になるように交渉を代行する点が特徴。ユーザーは交渉で得た割引金額の40%を手数料として同社に支払う。200万人以上が利用する。
Image : Truebill HP

3. BNPL(Buy Now, Pay Later)

 欧米で若年層を中心に急速に普及している BNPL(Buy Now Pay Later = 今買って後で支払う)は、クレジットカード払いとはどう異なるのでしょうか?クレジットカード払いは、毎月残高を全額支払わなければ利息が発生します。一方で、BNPL の場合は定められた期限内(数ヶ月など)に支払いさえすれば、利息や手数料はかからないという利点があります。今後、「新しい決済手段」の 1 つとして世界中で普及していきそうです。

Klarna
北欧発の後払い決済ソリューション
所在地 Stockholm, Sweden
創設年 2005年
資金調達額累計 $3.9 B / Series Unknown
出資者 SoftBank Investment Advisers, WestCap Group, etc.
URL https://www.klarna.com/us
Eコマースの後払い決済ソリューションを提供。Macy’sやNikeといった対応ECで買い物をする際、ユーザーはワンクリックで後払いの手続きが可能に。4回分割払いで2週間ごとに支払うが、遅延の場合は買物金額の最大25%が手数料として発生。小売店側は、買物完了後すぐに同社より支払いが行われるためキャッシュフローの改善が図れる。約25万店舗で利用でき毎日200万回以上の決済が行われる。
Image : Klarna HP
Sunbit
店内で申し込み可能な分割払いサービス
所在地 Los Angeles, California, US
創設年 2016年
資金調達額累計 $230.5 M / Series D
出資者 Group 11, MORE Investment House, The Harel Group, Zeev Ventures, etc.
URL https://sunbit.com
小売店、自動車ディーラー、自動車修理店、獣医、眼科、メガネ屋などが利用できる分割払いローンのプラットフォームを開発。消費者は$50〜最大$10,000のローンを実店舗やオンラインストアから30秒もかからず申し込むことができ、3、6、12ヶ月の支払い期間を選択できる。現在は、7,000ヶ所以上のローカルストアで利用されており、HONDAやBMWのディーラーも導入している。
Image : Sunbit HP

4. 学生ローン

 米国では学生ローンが総額で約 170 兆円にまで膨れ上がり、社会問題化しています。米国私立大学に通う費用は、授業料、学生寮代、食事代、教科書代を含めると、年間約 700 万円を超えるとも言われ、多くの学生は大学進学と同時に多額の借金を抱えます。このような問題を解決するために、欧米のスタートアップ企業がテクノロジーを活用しソリューションを提供しています。

ThriveCash
将来の推定収入に基づく学生用ローン
所在地 San Francisco, California, US
創設年 2017年
資金調達額累計 $22.4 M / Series Unknown
出資者 Craft Ventures, Harrison Metal Capital, SV Angel, etc.
URL https://thrivecash.com
正社員やインターンシップのオファーレター(内定通知書)に基づき提供される学生ローンを開発。主なターゲットは米国の高等教育機関に在籍する学生で、高いポテンシャルを持つものの、低所得層や移民家庭出身のため財政的な余裕がない学生や留学生など。専用アプリにオファーレターをアップロードすると内容に基いた審査が行われ、同社の独自アルゴリズムから融資額や返済期間、レート等を算出する。
Image : ThriveCash HP
StudentFinance
成功ベース型の学生ローン
所在地 Madrid, Spain
創設年 2019年
資金調達額累計 $6.5 M / Seed
出資者 Giant Ventures, Armilar Venture Partners, etc.
URL https://www.studentfinance.com
StudentFinanceは、成功ベース型の学生ローンを開発。同社は教育機関向けに、ISAs(所得分配契約)に基づく学生ローン開発のための技術的サポートを提供する。通常の学生ローンとは異なり、学生は卒業後に就職して一定水準以上の所得を得始めた後にローン返済を開始できるため、延滞リスクを軽減可能。現在は35の教育機関にサービスを提供しており、約$6Mに相当するISAsを取り扱う。
Image : StudentFinance HP

5. AI投資・アルゴリズム取引

 マーケットにあふれる膨大な量のデータを処理しながら最適解を導き出さなければならない「投資」という世界においては、AIは相性の良い存在といえるかもしれません。AIを活用した投資ポートフォリオの構築やアルゴリズム開発は、今後ますます主流になっていくことが予想されます。

Vise
AIを活用し投資ポートフォリオの 構築を自動化
所在地 New York, New York, US
創設年 2016年
資金調達額累計 $126.5 M / Series C
出資者 Ribbit Capital, Sequoia Capital, Northstar.VC, Bond Capital along, etc.
URL https://vise.com
ファイナンシャル・アドバイザー向けの、AIベースのポートフォリオ設計プラットフォームを開発。投資家の関心分野、価値観、目標、納税、リスク、ESGなど様々な要素を考慮し、パーソナライズされたポートフォリオを自動的に組み立てられる。米証券大手のCharles SchwabとTD Ameritrade Institutionalが提供するプラットフォーム上に、同社AIが組み込まれている。
Image : Vise HP
Algo Trader
仮想通貨対応の多機能な自動取引ツール
所在地 Zürich, Switzerland
創設年 2014年
資金調達額累計 $7.1 M / Series A
出資者 Credit Suisse Entrepreneur Capital, NeueCapital Partners, Blockchain Valley Ventures, etc.
URL https://www.algotrader.com
ヘッジファンドや証券会社向けのアルゴリズム取引ソフトウェアを提供。自動取引をはじめ、マーケットデータの定量リサーチ / 取引戦略の開発 / バックテストなどを実施でき、仮想通貨取引にも対応している。BloombergやQuantHouseなど20以上のマーケットソースと接続しデータを表示。日本に本社を置くフィリップ証券や、BNPパリバなどが利用する。
Image : Algo Trader HP

6. 事業会社向けファイナンスカード発行

 かつて事業会社が自社ブランドのクレジット(デビット)カードを発行しようとすると銀行に頼らざるを得ず、独自の決済システムを構築することは非常に困難でした。しかし今では、フィンテック企業が提供する API を通じて迅速にファイナンスカードを発行することが可能になっています。これにより、企業独自のインセンティブカードやポイントカードの作成も容易になりました。

Marqeta
ファイナンスカードを 簡単に発行できるAPI
所在地 Oakland, California, US
創設年 2010年
資金調達額累計 $528.0 M / 2021年6月にIPO
出資者 Manhattan West Asset Management, Mastercard, etc.
URL https://www.marqeta.com
企業向けにファイナンスカード発行、決済処理が簡単にできるオープンAPIプラットフォームを提供。企業ブランドを冠したファイナンスカードの発行は通常であれば膨大な事務手続きを要するが、同社のAPIを通じて、迅速にカード発行が可能。物理的なカード、バーチャルカード、トークン化されたファイナンスカードを発行できる。Uber、Square、DoorDashなどスタートアップが利用する。
Image : Marqeta HP
Extend
法人用バーチャルクレジットカード
所在地 New York, New York, US
創設年 2017年
資金調達額累計 $14.0 M / Series Unknown
出資者 FinTech Collective, Point72 Ventures, City National Bank, Reciprocal Ventures, etc.
URL https://www.paywithextend.com
発行や管理が容易な法人向けのバーチャルクレジットカードを提供。法人カードの管理者が、自社が発行しているカードに紐ついたバーチャルな法人カードを社員や契約社員に向けてウェブやアプリ上で発行することができる。これまでのように実際の法人カードを使い回す必要がなくなり、カードの紛失や悪用リスクが抑えられるほか、出張時の経費精算業務の削減が図られる。
Image : Extend HP

7. 金融機関向けAPI

 デジタル化の進展に伴い、スマートフォンを利用したサービスが一般的になりつつあります。金融業界でも、スマートフォン等でストレスフリーにサービスを受けられるモバイルバンクの利用が若年層を中心に浸透してきました。そんな中、これまで顧客との対面営業を重視してきた銀行が迅速にデジタルサービスを提供できるよう、API を提供するスタートアップが現れています。

Treasury Prime
レガシー金融機関とフィンテック企業を繋ぐAPI
所在地 San Francisco, California, US
創設年 2017年
資金調達額累計 $31.5 M/ Series B
出資者 Y Combinator, Nyca Partners, SaaStr, Deciens Capital, etc.
URL https://www.treasuryprime.com
金融機関の既存システムとフィンテック企業の金融ソリューションを結びつけるAPIを提供。同APIはモジュール式となっており、レガシーシステムの上に、必要な外部サービスをシームレスに構築できる。たとえば外部フィンテック企業の技術を活用することで、これまで3日かかっていた口座開設プロセスが3分で完了可能に。既存システムとの統合も6〜8週間で実施可能。
Image : Treasury Prime HP
Zeta
ネオバンクのような モバイル機能をもたらすAPI
所在地 San Francisco, California, US
創設年 2015年
資金調達額累計 $310.0 M / Series C
出資者 SoftBank Vision Fund 2, etc.
URL https://www.zeta.tech/us
デジタル化を図る銀行向けのモバイルバンクAPIを開発。顧客企業は自社のブランド名を冠したクレジットカード / プリペイドカード / ローン商品などを、スマホアプリと連携させられる。 アプリの機能は、ユーザーの資産管理 / 支払い履歴管理 / 指紋認証/ 後払い決済 / デジタルリワード (報酬) などが実装可能。※2021年5月、SoftBankVision Fund 2から$250Mの資金調達を実施した。
Image : Zeta HP

8. 仮想通貨・NFT

 2020 年は、仮想通貨が最も盛り上がった年の 1 つとも言えるかもしれません。2008 年にサトシ・ナカモトという謎の人物が書いた論文からスタートした仮想通貨は、今や機関投資家や事業法人までもが投資する対象となりました。最近ではブロックチェーン技術をベースにした「コピーできないデジタル資産」として NFT が脚光を浴び、業界の勢いはまだまだ止まる気配はありません。

Crypto.com
デビットカードも提供の仮想通貨アプリ
所在地 Sai Wan, Hong Kong
創設年 2016年
資金調達額累計 $26.7 M / Series Unknown
出資者 Unknown
URL https://crypto.com
仮想通貨の買付、売却、決済などができるモバイルアプリを提供。ビットコインやイーサリアムをはじめ、100種類以上の仮想通貨を取引でき、米ドルやユーロなど20種類以上の法定通貨を利用可能。 クレジット / デビットカード経由での買付 / 売却手数料が低い点が特徴。DeFi機能も実装されており、ユーザーは最大年利14%の受動的収入を得ることも可能。現在、全世界で1,000万人以上のユーザーが利用する。
Image : Crypto.com HP
Opensea
世界最大級のNFTマーケットプレイス
所在地 New York, New York, US
創設年 2017年
資金調達額累計 $27.2 M / Series A
出資者 Andreessen Horowitz, Founders Fund, StartX, etc.
URL https://opensea.io
世界最大級のピアツーピアNFTマーケットプレイスを提供。Openseaでは、ユーザーが所有するNFT(Non-Fungible Token:代替不可能なトークン)やデジタルグッズ(デジタルアート)を出品して売却したり、他のユーザーから買い付けたりすることができる。同取引所では2021年初頭から3月までに、合計$153Mを超えるNFT取引が行われたという。
Image : Opensea HP

9. 健康スコア活用の保険

 これまでの生命保険は、本人や家族の疾病歴などから保険料率が一面的に算出されるのが普通でした。しかしテクノロジーを最大限に活用することで、リアルタイムでの健康状態や健康に関する意識・運動習慣など、より加入者のリアルなステータスに基づいた商品と料率の提案が可能になっています。

Health IQ
「健康IQ」で保険のディスカウント
所在地 Mountain View, California, US
創設年 2014年
資金調達額累計 $156.3 M / Series E
出資者 Andreessen Horowitz, Greenspring Associates, CRV, First Round Capital, Foundation Capital, etc.
URL https://www.healthiq.com
健康的な生活習慣を持つ人の保険料率を下げる保険プラットフォームを提供。保険加入を検討する消費者の健康状態や健康に関するリテラシー、普段の運動習慣など、多様なデータポイントから独自の「ヘルス(健康)IQ」を算出する。ウェアラブルデバイスと連動してランニングなどの運動データをスコアに反映し、保険料金を最大4割引き。
Image : Health IQ HP
dacadoo
健康スコアを用いたデジタルヘルスケア
所在地 Zürich, Switzerland
創設年 2010年
資金調達額累計 $74.9 M / Series C
出資者 Rakuten Capital, Network Capital, Samsung Ventures Invesment, etc.
URL https://www.dacadoo.com
ユーザーの健康状態を独自指標「健康スコア」に基づき数値化する、デジタルヘルスエ ンゲージメントプラットフォームを開発。同スコアは3億人分の臨床データや2,500もの 論文をもとにマサチューセッツ工科大教授と共同開発したもので、特許も取得済。保険 会社などと提携し、ユーザーの死亡リスクや罹患リスクの予測、健康増進型の保険商品 やリワードの開発を支援する。
Image : dacadoo HP

10. AIによる保険金算出・オペ迅速化

 保険請求に関する情報検索や保険金の算出に対して、依然マンパワーに頼った手法をとる保険会社も多くあります。その状況に対し、AIと機械学習の活用により、これまで煩雑で時間のかかっていた作業を効率化するスタートアップが登場しています。スピーディな処理を実現することで、顧客側の満足度向上も期待できそうです。

AI Insurance
AIを活用した保険請求処理システム
所在地 San Francisco, California, US
創設年 2018年
資金調達額累計 $150 K / Seed
出資者 Y Combinator, MAGIC Fund, Authentic Ventures, etc.
URL https://www.aiinsurance.io
保険請求の処理や、保険金の算出を迅速化するAIベースのソフトウェアを提供。請求処理に必要なドキュメントや過去の履歴、メールのやり取りなどあらゆるデータをクラウドに統括し、1つの検索バーから瞬時に検索できる機能を搭載。部門間で情報共有できるため、他部門からの資料提供を求める手間が省かれる。
Image : AI Insurance HP
TrustLayer
AIが保険事務の複雑な確認作業を自動化
所在地 San Francisco, California, US
創設年 2018年
資金調達額累計 $6.6 M/ Seed
出資者 Abstract Ventures, BoxGroup, BrokerTech Ventures, NFP Ventures, Propel Venture Partners, etc.
URL https://trustlayer.io
都AIを活用した保険金請求の自動承認システムを開発。同ソフトウェアは、保険金請求者の保険証明書を自動で精査し、必要な条件を満たしているか等を確認 / 承認できる。具体的には、保険証明書 / 各種ライセンス / コンプライアンス文書を自動で精査。さらに、保険がカバーする内容 / 除外事項 / 保険の有効性に関する確認も可能。損害保険や退職金を扱う大手保険ブローカーNFPなどが利用する。
Image : TrustLayer HP

11. 安全運転・走行距離に応じた自動車保険

 これまで「安全運転をするドライバー」と「危険運転をするドライバー」を明確に見極めることは困難だったため、一律に保険料率を設定する必要があり、不公平感がある商品設計になりがちでした。一方で、自動車がインターネットと常時接続されることが当たり前になり、運転方法や走行距離の把握が容易になることで、よりパーソナライズされたプロダクト開発が可能になっています。

Metromile
低マイルドライバー向けの従量制自動車保険
所在地 San Francisco, California, US
創設年 2011年
資金調達額累計 $463.0 M / 2021年2月にIPO
出資者 Tokio Marine Holdings, Section 32, Index Ventures, Intact Financial Corporation, etc.
URL https://www.metromile.com
走行距離に応じた従量制 (Pay-per-Mile) 自動車保険を開発。無料で配布するGPS搭載の小型デバイスを自動車のダッシュボード下に取り付けると、走行距離が自動でクラウド上に記録され、それに応じた保険料が請求される仕組み。事故発生時にもAI、機械学習技術を用いて状況を分析し、自動で保険金支払いを承認するのが特徴。ワシントンやカリフォルニアなど米国8州で展開。
Image : Metromile HP
Noblr
安全運転で保険料を節約
所在地 San Francisco, California, US
創設年 2017年
資金調達額累計 $10.0 M / M&A *2021年6月にUSAAが買収
出資者 Hudson Structured Capital Management, SiriusPoint, etc.
URL https://www.noblr.com
ドライバーの運転スコアに応じた料金を支払う自動車保険サービスを提供。独自のスマホアプリにより、運転時に「走行距離・時間」「急ブレーキ・急発進」「ルート選択」「運転中のながらスマホ」等を検出し、運転スコアを算出。スコアに基づいた保険料を試算し、基本料金と合計した金額をユーザーに請求する。ドライバーは安全運転をすることで保険料を節約することができる。
Image : Noblr HP

12. EC商品の保証延長サービス

 コロナ禍によって一層加速したリモート生活に欠かせないのが、E コマースです。ボタン 1 つで何でも買えることは便利な一方で「商品にもし不具合があったら…」と不安になることもしばしば。そのニーズに応えるように台頭してきたのが、商品保証サービスに特化したスタートアップです。

Extend
あらゆる製品の「Apple Care」を目指す
所在地 San Francisco, California, US
創設年 2019年
資金調達額累計 $320.6 M / Series C
出資者 PayPal Ventures, etc.
URL https://www.extend.com
Eコマース商品の延長保証プログラムを提供。ECサイトはAPIを利用して決済画面に同社保証プログラムを表示する。ユーザーは1年、2年、5年などの商品保証を、追加料金を支払うことで付帯できる仕組み。同社CEOは「あらゆる製品に対応するApple Careのような存在を目指す」と話す。※2021年5月に$260Mを調達。同社評価額は$1.6B(約1,700億円) 。
Image : Extend HP
Clyde
Eコマースの商品保証で 顧客ロイヤルティ向上
所在地 New York, New York, US
創設年 2017年
資金調達額累計 $17.1 M / Series A
出資者 Techstars, Abstract Ventures,Correlation Ventures, etc.
URL https://www.joinclyde.com
Eコマース向けの商品保証プログラムを提供。小売業者と保険会社をつなぐ同社プラットフォームを利用することで、小売店は幅広い商品に延長保証などをつけることが可能に。APIとして提供されるため、顧客企業は既存ECサイトにプラグインで簡単に保証サービスを導入できる。保証金額はマージンを考慮した上で自動計算され管理も容易。エアコンメーカーSenvilleなど約250のブランドが利用。
Image : Clyde HP

13. スモールビジネス・フリーランス向け保険

 最近では Uber Eats の配達員や、Amazon のマーケットプレイス上で商品を販売する個人事業主が爆発的に増えています。こういった巨大テック企業のプラットフォームでフリーランスとして働く人々や、従来からのスモールビジネスオーナーに特化した保険を提供するスタートアップが台頭してきています。

Inshur
ライドシェアドライバー向け デジタル自動車保険
所在地 New York, New York, US
創設年 2016年
資金調達額累計 $35.0 M / Series B
出資者 Jerusalem Venture Partners, Munich Re Ventures, MTech Capital and Viola FinTech, etc.
URL https://inshur.com
Uberなどの配車サービスドライバー向け自動車保険を提供。ドライバーがライセンスをスマホカメラで撮影し、アプリ上にアップロードするだけで瞬時に車両情報を判別し、保険の見積もりを提示する。一般車とは異なる配車サービスドライバー向けに、最適な保険プランなどをチャットボットを通じてわかりやすくガイド。現在は、米国 / イギリス /オランダを拠点に展開する。
Image : Inshur HP
Next Insurance
スモールビジネス特化のオンライン保険
所在地 Palo Alto, California, US
創設年 2016年
資金調達額累計 $881.0 M / Series E
出資者 Redpoint, American Express Ventures, SGVC, TLV Partners, Global Founders Capital, etc.
URL https://www.nextinsurance.com
スモールビジネスのオーナー向け保険商品を提供。手続きは全てオンラインで完結し、AIと機械学習を用いた同社独自のアルゴリズムでユーザーの職種に最適な保険を推奨する。これまで大手の保険会社がカバーしきれなかった、カメラマン / フィットネストレーナー / 庭師 / マッサージ師 / DJ / EC業者などに特化してデザインされており、従来の保険と比較して保険料が最大30%安価に。
Image : Next Insurance HP

14. 保険金詐欺検出

 ますます巧妙化する保険金詐欺に対して、保険会社は積極的にテクノロジーを活用し対応していく必要に迫られています。これまで人の手を介して行ってきた保険請求の審査や引受業務のリスク査定を自動化することで、保険会社の作業効率化が見込めるほか、AIを用いた精緻な不正検出技術でヒューマンエラーをなくし、保険詐欺の被害を最小限に抑えることができます。

Shift Technology
AIを駆使した保険金詐欺の検出
(2020年にInsurance Acquisition Corp.が買収。2023年6月追記)
所在地 Paris, France
創設年 2013年
資金調達額累計 $320.0 M / Series D
出資者 Advent International, Avenir Growth Capital, Iris Capital, Accel, General Catalyst, etc.
URL https://www.shift-technology.com
AIによる保険金詐欺検出・査定プロセス自動化ソリューションを開発。保険会社が保有する過去3~5年分の保険金請求データや不正判断時の理由、詐欺師のブラックリストなどを分析し、詐欺請求の法則性や傾向を定義。不審な請求を検出した際は、詐欺の可能性を示すスコアとその理由を対応部署に通知する。日本のMS&ADなどを含む、世界25ヶ国の大手保険会社70社が利用。
Image : Shift Technology HP
FRISS
保険業務の総合的な リスク診断プラットフォーム
所在地 Utrecht, The Netherland
創設年 2006年
資金調達額累計 17.7 M / Series A
出資者 Aquiline Technology Growth, Blackfin Capital Partners, Plug and Play Insurtech
URL https://www.friss.com
保険請求の不正検知および保険引受のリスク査定プラットフォームを提供。損害保険会社の引受、請求、査定、コンプライアンスといった各業務プロセスにおけるリスク分析を行う。130を超える外部データソースと機械学習を連動させた独自のリスク算定方法で、リスク度合いをスコアリングするのが特徴。スウェーデン損保大手Folksamを含む、40カ国170社超が利用する。
Image : FRISS HP

※紹介している企業情報は、「FinTech Trend Report」制作当時のものです。
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