2024年のスタートアップ投資市場は、レイターステージの大型調達が減少し、シード・アーリーステージへの投資が増加するといった動きがみられたが、こうした動向から投資のプロだちはどのような市場の背景を読み取っているのだろうか。2024年がどんな1年だったかを振り返り、来年以降の展望を先読みするべく、TECHBLITZ編集部は日系ベンチャーキャピタル(Global Brain、JAFCO、Animal Spirits)の投資担当者らにアンケート調査を実施した。
・グローバル・ブレインの視点:実績あるスタートアップに投資マネー集まった
・ジャフコの視点:成長軌道を描けるスタートアップに多額の資金
・アニマルスピリッツの視点:シードフェーズの資金調達で二極化進む
2024年の日本のスタートアップ投資動向は、欧米ほどは冷え込んでおらず、直近の投資金額は回復傾向が見られており、時価総額も徐々に上昇してきています。一方、投資件数は減少しており、実績あるスタートアップに資金が集まりやすい傾向にあります。投資マインドは欧米ほど冷え込んでおらず、ドライパウダーもあるため、優良なスタートアップは50億円から100億円規模の大型資金調達を実現できています。2025年もマクロ経済の回復とともに少しずつスタートアップ投資は回復していくと考えています。
現在、大企業やCVCにとっては絶好の機会となっており、国内外の純投資ファンドの投資が停滞している今こそ、投資を梃にスタートアップとの協業を推進し、新規事業創出や周辺事業の拡大を図るチャンスが広がっています。
さらに、グロースステージのスタートアップの時価総額調整が続いていることから、適正価格でのM&A環境が整いつつあります。IPO市場の低迷により、グロースステージのスタートアップはIPO時期を2、3年後ろ倒しにする傾向が顕著になっています。この期間の成長資金確保のため、大企業やCVC向けに資金調達ラウンドを開くケースが増加しています。
2024年、生成AIと企業向けソフトウェア市場は大きな転換期を迎えています。2023年に過熱した生成AI技術への期待は、2024年に入り技術的課題が明確になりつつあります。その結果、持続可能で実効性の高い基盤モデルや生成AIアプリケーションの開発に新たな事業機会が生まれています。特に注目されているのは、GPU等のインフラ投資に見合う価値を提供できる事業・サービスです。
同時に、グローバルではB2Bソフトウェア市場も劇的な変化を遂げつつあります。AIネイティブなソフトウェアの開発が進んできており、従来の「Software as a Service」から「Service as a Software」へと進化し、AIにより知識労働の自動化が急速に進んでいます。
これは業務効率化を前提にユーザー課金を基本としていたソフトウェアの市場が、労働市場の人件費にまで拡大することを意味します。AIネイティブなソフトウェア、いわば「AIワーカー」が従来のB2Bソフトウェアの勢力図を大きく変える可能性を秘めているのです。一方で、デスクワーク以外の領域、特にノンデスクワーカーの深い課題解決に挑むバーティカルなソフトウェアにも引き続き注目が集まっています。2025年は、AIテクノロジーの実践的な価値を追求する年となりそうです。一方、日本はグローバルからはややビハインドしており、これらの動きはもう少し遅れて進むと考えています。
ポートフォリオ企業のSakana AIは2024年にシリーズAラウンドを実施し、国内外から約1億ドル以上を調達。国内メガバンクやNEC、富士通等の大企業に加え、Khosla VenturesやNew Enterprise Associates等の米国TopVCも参加しています。また、NVIDIAも出資しており、研究、インフラ、日本におけるAIコミュニティ構築の3つの分野で協業を進めます。今回の資金調達により優秀な人材を採用し、持続可能でエネルギー効率の高いAI技術の開発を強力に推進していきます。
現在、大企業やCVCにとっては絶好の機会となっており、国内外の純投資ファンドの投資が停滞している今こそ、投資を梃にスタートアップとの協業を推進し、新規事業創出や周辺事業の拡大を図るチャンスが広がっています。
さらに、グロースステージのスタートアップの時価総額調整が続いていることから、適正価格でのM&A環境が整いつつあります。IPO市場の低迷により、グロースステージのスタートアップはIPO時期を2、3年後ろ倒しにする傾向が顕著になっています。この期間の成長資金確保のため、大企業やCVC向けに資金調達ラウンドを開くケースが増加しています。
生成AI技術は「実効性の高さ」に注目
2024年、生成AIと企業向けソフトウェア市場は大きな転換期を迎えています。2023年に過熱した生成AI技術への期待は、2024年に入り技術的課題が明確になりつつあります。その結果、持続可能で実効性の高い基盤モデルや生成AIアプリケーションの開発に新たな事業機会が生まれています。特に注目されているのは、GPU等のインフラ投資に見合う価値を提供できる事業・サービスです。
同時に、グローバルではB2Bソフトウェア市場も劇的な変化を遂げつつあります。AIネイティブなソフトウェアの開発が進んできており、従来の「Software as a Service」から「Service as a Software」へと進化し、AIにより知識労働の自動化が急速に進んでいます。
これは業務効率化を前提にユーザー課金を基本としていたソフトウェアの市場が、労働市場の人件費にまで拡大することを意味します。AIネイティブなソフトウェア、いわば「AIワーカー」が従来のB2Bソフトウェアの勢力図を大きく変える可能性を秘めているのです。一方で、デスクワーク以外の領域、特にノンデスクワーカーの深い課題解決に挑むバーティカルなソフトウェアにも引き続き注目が集まっています。2025年は、AIテクノロジーの実践的な価値を追求する年となりそうです。一方、日本はグローバルからはややビハインドしており、これらの動きはもう少し遅れて進むと考えています。
Sakana AIがシリーズAで約1億ドル調達
ポートフォリオ企業のSakana AIは2024年にシリーズAラウンドを実施し、国内外から約1億ドル以上を調達。国内メガバンクやNEC、富士通等の大企業に加え、Khosla VenturesやNew Enterprise Associates等の米国TopVCも参加しています。また、NVIDIAも出資しており、研究、インフラ、日本におけるAIコミュニティ構築の3つの分野で協業を進めます。今回の資金調達により優秀な人材を採用し、持続可能でエネルギー効率の高いAI技術の開発を強力に推進していきます。
シリアルアントレプレナー(連続起業家)がデジタル技術やAIを活用してより大きな価値創出に挑むスタートアップや、巨大市場を対象に業容を急拡大しながら業績を線形に伸ばせるスタートアップに多額の資金が集まっています。VCファンドの増加や規模の拡大を踏まえると、この傾向は急激な市場変動が無い限り変わることはないと考えています。また、これらの企業が一定の事業規模を確立したタイミングでは、ここ数年で環境が変化したアジアマネーやその他の資金をも取り込み、さらなる規模の拡大や複層的な事業展開を目指すことが可能になると考えています。
加えて、直近数年間においてはIPO時の時価総額が1,000億円を超えるスタートアップが安定して出てきており、今後も未上場段階で十分に事業を拡大した後に、大型上場を迎える企業が増えてくると見ています。
この1年におけるLLM領域の進化は目覚ましく、各々のスタートアップがその成長や進化を取り込むために様々な取り組みを進めています。これらの企業の中には基幹事業を大きく変化させたスタートアップもあります。業界全体としては、投資額が一番大きい米国の主力プレイヤーが引き続き多額の資金と先行優位性を活かして、コアとなる技術を開発し、業界を牽引して行くと考えられます。
B2Bの領域においては、特定の専門分野に特化したものや、各々の企業が自社で独自に用いることができるもの等、多種多様なLLMが誕生し、利用されています。またLLM単体の利用に限らず、さまざまなフローにLLMを掛け合わせる使い方も広がっていくと考えています。例えば業務プロセスにLLMを組み込むことで作業時間を短縮したり、外注業務にLLMを組み合わせることでコストを削減する、あるいはLLMによって従業員の能力強化 / 能力拡張を図るといった使い方です。また画像認識技術や音声認識 / 合成技術等も日々進化しており、これらの技術とLLMを組み合わせることで生まれる事業にも関心を持っています。
ジャフコは、1973年の設立以来、常に時代をリードする起業家とともに歩んできました。国内外における運用ファンドの出資約束金額は累計で1兆円を超え、累計上場社数も1,000社以上にのぼります。ベンチャー投資に加えてバイアウト投資も展開しており、パーパスとして「挑戦への投資で、成長への循環をつくりだす」を掲げ、世界中で革新的な技術・サービスの創造にコミットしています。起業家のいちばん近くにあって、その「志」を実現したいという想いのもと、HR、マーケティング・セールス、バックオフィスなども支援しています。
加えて、直近数年間においてはIPO時の時価総額が1,000億円を超えるスタートアップが安定して出てきており、今後も未上場段階で十分に事業を拡大した後に、大型上場を迎える企業が増えてくると見ています。
LLM領域の進化目覚ましい1年
この1年におけるLLM領域の進化は目覚ましく、各々のスタートアップがその成長や進化を取り込むために様々な取り組みを進めています。これらの企業の中には基幹事業を大きく変化させたスタートアップもあります。業界全体としては、投資額が一番大きい米国の主力プレイヤーが引き続き多額の資金と先行優位性を活かして、コアとなる技術を開発し、業界を牽引して行くと考えられます。
B2Bの領域においては、特定の専門分野に特化したものや、各々の企業が自社で独自に用いることができるもの等、多種多様なLLMが誕生し、利用されています。またLLM単体の利用に限らず、さまざまなフローにLLMを掛け合わせる使い方も広がっていくと考えています。例えば業務プロセスにLLMを組み込むことで作業時間を短縮したり、外注業務にLLMを組み合わせることでコストを削減する、あるいはLLMによって従業員の能力強化 / 能力拡張を図るといった使い方です。また画像認識技術や音声認識 / 合成技術等も日々進化しており、これらの技術とLLMを組み合わせることで生まれる事業にも関心を持っています。
時代をリードする起業家と共に歩む
ジャフコは、1973年の設立以来、常に時代をリードする起業家とともに歩んできました。国内外における運用ファンドの出資約束金額は累計で1兆円を超え、累計上場社数も1,000社以上にのぼります。ベンチャー投資に加えてバイアウト投資も展開しており、パーパスとして「挑戦への投資で、成長への循環をつくりだす」を掲げ、世界中で革新的な技術・サービスの創造にコミットしています。起業家のいちばん近くにあって、その「志」を実現したいという想いのもと、HR、マーケティング・セールス、バックオフィスなども支援しています。
シードフェーズの資金調達においては二極化が進んでいる印象です。
実績のある起業家が最初から大型の資金調達を行い、その資本を元に早い段階でM&Aを活用した事業拡大を行う等、これまでとは違う戦い方をするスタートアップが見られるようになりました。また、PEやVCなどが未上場段階でマジョリティを持ち、第2創業のようなスタートを切る案件も目立った印象です。
VCの新規ファンドの立上げは2023年と比較すると増加した印象で、特にシード・アーリーのVCファンドの層が厚くなってきているように感じます。
ファンド数が多くなる中、差別化の一環としてPodcastなど独自メディアを立ち上げるケースも増えてきました。海外では20VCのように、メディア活用を差別化要素としてレイズするファンドも出てきています。私も「Startup Now」という、様々な起業家にインタビューするPodcastを配信しておりますので、よろしければ覗いていただけると嬉しいです。
テーマとしては、AI / Climate Tech領域が引き続き盛り上がっていた印象です。アニマルスピリッツでも、AI領域では「生成AIを活用した採用プロセスの効率化および採用支援を行う」Qlay社、Climate Tech領域では「大気から水を生成する装置を開発する」サステナウォーター社、「蓄熱式ボイラーと高温原子炉の開発を行う」Blossom Energy社、「アフリカでの農業DXおよびカーボンクレジットを創出するリジェネラティブ農業を展開」するDegas社に投資しております。
ただし、トランプ氏の復権により、米国におけるClimate Tech関連領域は大きな逆風となる影響を受ける可能性があり、日本発スタートアップへの影響も今後注視する必要があります。
・1/23(木)開催:ランチ会
・1/29(水)開催:RemitAid主催オフラインイベント
実績のある起業家が最初から大型の資金調達を行い、その資本を元に早い段階でM&Aを活用した事業拡大を行う等、これまでとは違う戦い方をするスタートアップが見られるようになりました。また、PEやVCなどが未上場段階でマジョリティを持ち、第2創業のようなスタートを切る案件も目立った印象です。
VCの新規ファンドの立上げは2023年と比較すると増加した印象で、特にシード・アーリーのVCファンドの層が厚くなってきているように感じます。
ファンド数が多くなる中、差別化の一環としてPodcastなど独自メディアを立ち上げるケースも増えてきました。海外では20VCのように、メディア活用を差別化要素としてレイズするファンドも出てきています。私も「Startup Now」という、様々な起業家にインタビューするPodcastを配信しておりますので、よろしければ覗いていただけると嬉しいです。
トランプ復権で気候テックに「逆風」も
テーマとしては、AI / Climate Tech領域が引き続き盛り上がっていた印象です。アニマルスピリッツでも、AI領域では「生成AIを活用した採用プロセスの効率化および採用支援を行う」Qlay社、Climate Tech領域では「大気から水を生成する装置を開発する」サステナウォーター社、「蓄熱式ボイラーと高温原子炉の開発を行う」Blossom Energy社、「アフリカでの農業DXおよびカーボンクレジットを創出するリジェネラティブ農業を展開」するDegas社に投資しております。
ただし、トランプ氏の復権により、米国におけるClimate Tech関連領域は大きな逆風となる影響を受ける可能性があり、日本発スタートアップへの影響も今後注視する必要があります。
ポートフォリオ企業Remit Aidのイベント情報
・1/23(木)開催:ランチ会
・1/29(水)開催:RemitAid主催オフラインイベント