PortalOne(本社:ノルウェー・オスロ)は、ゲームをテーマにした新しいエンターテインメントのプラットフォームを構築しているスタートアップだ。ユーザーがオンラインでゲーム対戦して賞金を得るだけでなく、ゲーム実況やバラエティートークショーを組み合わせ、普段はゲームで遊ばない層も楽しめるような新たな仕掛けを用意している。デバイスもスマートフォンのほか、コンソール、VRヘッドセットまで、マルチな環境に対応する。本プラットフォームは現在ベータテスト中で、2022年中にも北米やヨーロッパのユーザー向けにローンチ予定だ。サービスのコンセプトや将来展望について、創業者のひとりでCEOのBård Anders Kasin氏に聞いた。

クラウドゲームプラットフォームのパイオニア・ユビタスのCEOに問う、メタバースを見据えた未来とは?
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高校時代からインターネットと3Dグラフィックにのめり込み、ハリウッドへ

――まず、ご自身の職業的なバックグラウンドについて教えてください。

 私はとても若いころからプロとして仕事をしていました。15歳か16歳の時からテクノロジーに魅了され、高校生の頃に地元のインターネットサービスプロバイダーで仕事を得ました。放課後にその会社に通ううちに、3Dのプログラムに出合い、3Dのモデリングを始めます。ちょうど映画「ジュラシック・パーク」が公開された直後で、まだ周りに誰も3Dグラフィックを作っている人はいませんでした。

 インターネットプロバイダーの隣には大きな製造業の会社があったのですが、ある日、その会社の役員が、私が作っていた3Dのヘリコプターを見て「うちの工場もビジュアル化してほしい」と私に依頼しました。私はその会社で、非常にパワフルなコンピューターを使って仕事をするようになり、その後3Dモデリングとテクノロジー、アニメーション制作の世界に入っていったのです。

Bård Anders Kasin
PortalOne
Co-Founder & CEO
起業家であり、ゲーム、映画、テレビなどでの3Dグラフィック活用のエキスパート。ワーナー・ブラザースのテクニカルディレクターとして、映画「マトリックス」トリロジーなど、大規模な映画制作に関わる。2013年には、世界初のインタラクティブリアリティゲームショーを提供したThe Future Groupを設立。2018年に兄弟のStig Olav Kasin氏(CXO)とともにPortalOneを設立。

――なぜPortalOneを作ろうと思ったのですか。

 私は3Dグラフィックスとアニメーションの仕事に就き、最終的にはワーナー・ブラザーズで、映画「マトリックス」シリーズの制作に携わりました。テクニカルディレクターとして、ハリウッドの大作映画で視覚効果などを担当し、とてもエキサイティングな日々を過ごしました。そこで、ゲームエンジンの技術やゲームの技術を映画制作に活用することを始めたのですが、おそらく世界で初めてだったと思います。

 そして、ゲームのインタラクティブ性と映画やテレビのストーリーテリングの能力を組み合わせることができたらすばらしいと想像したのです。子供の頃から一緒に仕事をしてきた兄弟といっしょに、自分の想いを形にできるようなコンポーネントを作り始めたのです。

ゲームとテレビ・映画の強みを融合 シームレスな体験を幅広い層に

――PortalOneは非常に新しいコンセプトのサービスです。どんなものなのか紹介ください。

 はい、まさに新しいカテゴリーのエンターテインメントを立ち上げました。一言でいうと、「ハイブリッド・ゲーム」です。つまり、ゲーム業界の強みとテレビ・映画業界の強みを組み合わせ、1つのシームレスな体験に融合しました。プレイヤーは、オンラインのトーナメントでゲームをプレイし、友達と一緒にリーダーボードでの競争を楽しみます。すべてのトーナメントの最後には、決勝戦としてのショーが行われ、そのショーはプラットフォームの中で試聴できます。

 決勝戦では本人が登場してゲームをプレイし、優勝者には賞金が支払われます。ソーシャルな要素も盛り込んでいるのです。ビジネスモデルはFree-to-play(フリー・トゥ・プレイ)モデルを採用していて、アイテムやトークンに課金します。「ポケモンGO」や「Fortnite」などと同じですね。加えて、サブスクリプションモデルとして、シーズンパスのような限定コンテンツへアクセスできるようなものも用意します。

 既存のゲームの世界と競合せず、拡張する新しいカテゴリです。ハードコアなゲーマーというよりは、ライトな層に幅広く利用いただきたいと思っています。現在ベータテスト中で、ゲーム自体はカジュアルなものが多く、男女の比率は半々で、例えば14歳の子供が75歳の祖父母と一緒に遊んだりしています。Netflixなど、幅広いエンターテインメントプラットフォームのユーザー層と同じように、多くの年代の人たちが楽しめるようなサービスです。

――資金調達では、2022年1月のシリーズAラウンドでTiger Global Managementをリードインベスターに、Temasek Holdingsなどから6000万ドル(約81億円)を調達しています。シードラウンドからは累計7500万ドル(約101億円)に上ります。斬新なコンセプトについて、投資家たちはどのような評価をしていますか。

 私たちは、素晴らしい投資家に恵まれていました。最初の投資家はFounders Fundです。彼らは、私たちが何をしようとしているのかを理解してくれました。シードの時期に自分たちのビジョンを示し、マイルストーンを実現し、信頼を得ました。ゲームライブのデモンストレーションなども行った結果、次々と新たな出資者が現れました。私たちは投資家に「私たちがやっていることが、エンターテインメント業界に影響を与えるとお考えですか?」と質問しました。そして、この新たなプラットフォームの可能性を信じる投資家が集まったのです。

――現在ベータテスト中だと言いますが、進捗はいかがですか。

 2021年には、制作スタジオをオスロからロサンゼルスに移しました。現在は、すべての番組をロサンゼルスで制作し、プラットフォーム開発はオスロのメインスタジオで行う体制を整えました。そして、アメリカ市場への進出が決まったのです。ベータテストでは、3つのゲームを遊べますが、アメリカのユーザーにも良い評価をもらっています。今は待機しているベータテスターがたくさんいる状態ですが、今年中にはサービスをローンチし、自由にアクセスしていただく段階になると思います。

 これまで私たちは、ひとつひとつレンガを積み上げていくようなアプローチを取ってきました。長期的な成功のためには、非常に心を砕いていく必要があると考えています。私たちは、何十年も存続するプラットフォームを構築しているのです。

 現時点でゲームのタイトルは3つですが、来年には遊べるタイトルをどんどん増やしていきたいです。ゲームが増えればトーナメントも番組も増えていきます。ですから、ゲームタイトルとしてのIPを提供するようなブランドなどとのパートナーシップを考えています。

ゲームに限らず、幅広いブランドとコラボレーションしていきたい

――日本のゲーム企業や、その他ブランドの企業とはコンタクトありますか。

 日本企業とはまだですが、非常に興味深い企業がいくつもあり、いずれは話をしたいです。私自身、任天堂のゲームに親しんで育ってきましたし、日本のゲーム業界自体を伝説的な存在と考えています……つまり、大ファンなのです。

 私たちは常に、パートナーシップを検討する際に、2つの企業間に強力なシナジー効果が得られるような、Win-Winの状況にすることを心がけています。例えば、日本の会社と提携する場合、そのブランドと競合するのではなく、拡張するものと考えています。例えば、あるゲームのコンソール版やモバイル版があったとして、これをPortalOneにてハイブリッドゲーム化することによって、元のゲームユーザーは体験を拡大できます。既存のブランドと競合するのではなく、新たな収益源を提供できるのです。

 私たちがプラットフォームを作りますので、同じようなハイブリッドなコンテンツを自前で作るよりも、早く、安く提供することもできるでしょう。

――メタバースについてどのようにお考えですか。また、長期的なビジョンもお聞かせください。

 PortalOneは、メタバースに適合していると言えますが、それが私たちの未来のビジョンではありません。PortalOneはメタバース上でなくてもすでに完全機能するプラットフォームでもあります。Netflixが映画やビデオの楽しみ方を変えたように、PortalOneはハイブリッドゲームの時代を切り拓いていくものと考えているのです。PortalOneという名前には、すべてのハイブリッドゲームのための1つのポータルであるという意味を込めています。

 エンターテインメントのさまざまなカテゴリー、多くの異なるタイプのコンテンツやゲーム、そして非常に強力なソーシャルプロファイルを持ち、友人と一緒に遊んだり、夢中になったり、素晴らしい時間を過ごしたりすることができるプラットフォームを目指しています。

――協業を考える日本企業の担当者にメッセージをお願いします。

 Nianticは位置情報のプラットフォームにブランドとしてのポケモンを活用して、「ポケモンGO」という新しい体験を作りました。私たちも、強いブランド力を持つ企業との提携を模索しています。ブランドは、ゲームだけが対象ではありません。幅広いブランドの皆さんと新しい体験を提供していきたいです。まずは北米やヨーロッパでの提供となりますが、遅かれ早かれ、アジアにも進出してまいります。

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