トヨタも出資するMay Mobilityは、自動運転シャトルバスを米国の大都市で運行する。目指すのは交通渋滞の解決。ミシガン大学準教授でもあるFounder & CEOのEdwin Olson氏に話を聞いた。

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マンハッタンのタクシーは時速4.7マイル

―まず、設立の経緯を教えてください。

 私はマサチューセッツ工科大学在学中に米国防総省高等研究計画局(DAPRA)主催の複雑な経路でも走ることが可能な自動運転車開発「Urban Challenge」に参加しました。そこから自動運転との関わりが始まりました。その後、ミシガン大学に移り、自動ロボットの研究を経て、フォードやトヨタの研究機関で再び自動運転の研究に携わりました。

 やがて、ロボタクシーのスタートアップを立ち上げることでインパクトを与えたいと思い、創業に至りました。

Edwin Olson
May Mobility
Founder & CEO
2008年にMIT(マサチューセッツ工科大学)で哲学、電気工学、コンピュータサイエンスの博士号。在学中の2007年に米国防総省高等研究計画局(DAPRA)主催による、完全自動制御の無人ロボット車レース「Urban Challenge」を経験。その後ミシガン大学准教授(コンピュータサイエンス)を務めながら、2016年にトヨタ・リサーチ・インスティテュートで自動運転プログラムに携わる。2017年に創業。
 

―どのようなサービスでしょうか。

 数分待つだけで乗れ、かつ数人を乗せられる自動運転シャトルバスです。法定最高速度は時速25マイル(約40km)です。渋滞を減らす効果があります。客は目的地へほぼ直行できます。

 自動運転は当社の技術において確かに本質的な部分ですが、重要なのはそこではなく、交通の問題の解決を目指していることです。

 都市では渋滞のために非常に短い距離を走るだけでもとても時間がかかります。興味深い統計では、ニューヨーク・マンハッタンのタクシーは時速4.7マイル(約7.5km)が平均です。人々が車を買うのを止めてウーバーやリフトのようなシェアリングサービスを利用すれば、渋滞が改善する、と考えられたこともありました。しかし実際は逆で、渋滞は悪化しています。

 長時間の通勤は家族と過ごす時間を奪いますし、経済的に生むものがありません。障害者や貧困者はタクシーを利用する金銭的余裕がありません。都市には建物が多いため、実に多くの土地が交通のために充てられています。

 当社のビジョンは、経済的格差に関係なく誰もが簡単にシンプルに安全に目的地へ行けるようになることです。良い交通手段ができれば、交通の便は良くなり、道路はより歩行者と自転車にフレンドリーになると考えています。駐車場に取られている土地を、緑地、公園、手頃な住宅、商店、レストランにできそうでしょう。そうなればより魅力ある都市になりそうです。

―どの都市で利用可能ですか。

 ミシガン州のデトロイトおよびグランドラピッド、ロードアイランド州プロビデンスで利用可能です。これまでに乗客数は25万回以上運行しています。

―ビジネスモデルを教えてください。

 基本的に企業や自治体との長期契約です。車両の必要台数に応じて売上が増えます。

高齢化する日本には大きなチャンス

―今後のビジョンを教えてください。

 1~2年で乗客数を着実に増やし、自動運転シャトルバスの可能性を示していくことです。

―御社はトヨタと深い関係にありますね。

 トヨタAIベンチャーズはMay Mobilityのアーリーインベスターで、トヨタ自動車はシリーズBでリードインベスターです。

―日本への進出を考えていますか。

 日本は高齢化社会であり、高齢者の生活の質を保つことが課題です。同時に高齢化社会とは、タクシーやバスの運転手が減ることも意味します。日本への進出はまだ発表できる段階にはありませんが、日本には大きなチャンスがあると見ています。

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