アプリの市場データを提供する、調査・分析会社App Annie(アップ アニー)。創業以来、世界トップクラスのアプリ調査会社として君臨している。日々、420万のアプリランキングをトラッキング。上位100位のアプリパブリッシャーの90%が、同社サービスを利用中だ。CEOのバートランド・シュミット氏は、モバイルインターネット業界で多くの会社の重役を歴任してきた気鋭の人物。同氏に、起業の経緯や今後の展望などを聞いた。

Bertrand Schmit
App Annie
CEO
フランス、パリ生まれ。フランスのISEPでコンピューターサイエンスの修士号を取得、その後渡米しペンシルバニアのウォートンスクールでMBAを取得。モバイル、インターネット、アナリティクス分野の会社で14年間重役を務める。準備期間を経て、2010年に北京でApp Annie(アップ アニー)を創業。

世界的な成功の秘訣はアグレッシブな行動力

―会社を創業した経緯を教えてください。

 きっかけは4年ほど前。モバイルインターネットの世界がアプリに移行していくトレンドを強く感じたことでした。そこでビジネスを始めるにあたり、アプリの有効な情報を探し始めたのです。けれども、どのサイトやサービスを見ても、自分が求めるアプリの情報が見つからなかった。そこで、有益なアプリ情報を提供していこう、と思いついたのです。

―御社はグローバルアプリ分析のトップ企業に成長しました。その秘訣はなんでしょう。

 まずは、よいチームをつくれたこと。メンバーに関しては、当初からとてもグローバルでした。アメリカだけでなく、日本や北京、ヨーロッパ各国からも、優秀な人材を探し出してきたのです。経験や技術だけでなく、小さくも大きくもない当社のサイズにフィットする人材、という部分も重視しました。いまでも、採用を決める際には私が実際に会って話をしていますよ。

 もうひとつ忘れてはならないのは、とにかくアグレッシブに動き続けてきたという点。アプリのマーケティングを手がけていた会社は、当時はまだありませんでした。そのため、当社の認知度が一気に上がった。その勢いを失わずに、使うべきところにお金をつぎ込んで、成長スピードを加速させたのです。

 資金調達が順調にいけば、優秀な人材も集まってくる。すると質のいいプロダクトを送り出せる。結果、顧客からの信頼も得られるのです。

今後もWebサービスはアプリを中心に発展する

―グローバルアプリ分析の第一人者の立場から、現在注目のアプリ、そして今後伸びていきそうなアプリについて教えてください。

 「LINE」や「KakaoTalk」といった、メッセージ分野のアプリが優勢ですね。とくに日本や韓国、中国といった東アジアでの人気が高いです。アメリカやヨーロッパでももちろん人気ですが、音楽アプリといったエンターテイメントアプリと人気を二分しています。

 大きなトレンドとしては、これまでWebサービスで行われていたことが、どんどんアプリ化されているということ。この動きは、さらに加速すると思います。近い将来、ショッピングや旅行といったEコマースも、アプリに移行していくでしょう。キャッシングやショッピングに関する新しいアプリが増え、生活はより便利になっていくはず。またGoogleの自動運転のように、自動車関連のアプリも、どんどん進化していくと思います。

―世界で成功するアプリとは、どんなものでしょう。

 じつは、グローバルマーケットで大ヒットとなったアプリは、いまだにひとつもないんです。それがわかれば、大金持ちになれることは間違いないですね(笑)。というのも実際、アメリカとヨーロッパ、東アジアでは、それぞれヒットするアプリが全然違う。フランスでうまくいったから、日本でもヒットするかというと、そうでもないんです。世界的に人気の「ゲームアプリ」ですが、ヒットするアプリは、国によってじつに多彩です。

 アプリをグローバル展開していくには、まず翻訳をする必要がありますよね。それ以外にも、その地域にあったイメージのアイコンを提供するなど、さまざまな配慮が必要なのです。

技術とビジネス力の向上がグローバルに成功する必須条件

―日本発のアプリに対しては、どのように評価していますか。

 品質は非常によいです。マーケットも成熟しているし、技術も安定している。ガラケーともいわれる「フィーチャーフォン」のサービスが非常に強かった背景がありますから、日本企業がiOSやAndroidのアプリに移行するのは非常に大変だったことでしょう。

 日本のモバイルコンピュータ会社には、大きな強みが2つあります。ひとつは、これまで培ってきた高い技術力と経験。世界各国でオペレーションを経験してきたことが、大きな武器になっています。もうひとつは、GREEがアメリカのゲーム・デベロッパーに対して実践しているように、ローカル企業を買収していく手腕です。さらに中国や韓国の企業と提携して共闘していくことも、世界で優位に戦うための、ひとつの方向性だと思います。

―今後のビジョンを教えてください。

 これまでキープしてきたスピードをゆるめることなく、素早い成長を続けていきたいですね。そのためには、世界No.2の市場である日本の存在を忘れてはいけない。東京オフィスには、現在5人のスタッフが活躍しています。2014年の末までに増員して、倍にしようと考えているところです。

 日本のSEGAやADWAYSは、北京で起業したころからの古いつきあい。そういう意味でも、日本には非常に愛着を感じています。日本の若者にも、私よりもっとビッグになってもらいたい。そのためには、いまのうちから国際的な経験をすることをオススメします。また技術的な教育と同時に、ビジネスに関する教育もきちんと受けておくこと。そうした準備が、大きく飛躍する大切なベースとなっていくはずです。



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